第六話
小汚い小さな小屋のような酒場で、二人のフードを被った怪しげな男が、酒の入ったグラスを片手に、ぶつぶつと何やら話している。
「しかし、やつは一体どこへ姿を隠したというのだろか・・・。」
長身で薄汚れて埃だらけの手は、何日も風呂に入っていないことを示していた。
「あの時、確かにオレ達は奴を追い詰めた。お前も見ただろう?あの怪我だ、身を隠す力もな
かったはずだ。」
長身の男の半分程しかないと思われる小柄な男が、手にしているグラスをグググッと握り締めた。
その瞬間、グラスは見事木端微塵に砕け散り、入っていた薄茶色の酒が手の平とささくれたテーブルの上に滴った。
不思議と手に怪我を負った様子はない。
「・・・くそっ、アズライルさえ邪魔に入らなければ・・・!」
『ガシャン!!!』
小柄な男が、机に散乱しているグラスの破片を思い切り床面に払い落とした。
「おい、ジップ。あまり目立つことするんじゃない。もしかすると、まだ近くに居るかもしれ ないんだぞ。」
長身の男が、小柄の男、ジップに吐き捨てるように言うと、すっかり人の目を惹いてしまったこの場所から一刻も早く立ち去ろうと、素早く立ち上がった。
「す、すまなかった・・・。」
ジップはフードを深く被り直すと、長身の男がスタスタと店を出て行くのを慌てて追いかける。
しかし、長身の男の歩幅があまりに違いすぎる為、ジップは彼に負いつく為には、かなりピッチを上げて歩く必要があった。
「とにかく、今はどんなに小さな情報でもいい。やつに関する情報を探すのだ。
なるべく目立たないようにして、今度こそアズライルに邪魔をさせまい。」
そう言って、小走りのジップと長身の男が、街の人ごみに消えていく。
そしてその五、六メートル程後ろを、一つの影が密かに追っていた。
やつら、まさか私に気付いたのでは・・・・??
怪しげな二人組みの男が、あまりに早足な為、この男は一瞬不審に思い、もす少し距離をとって跡を附けることにする。
さっき、店の中で話していた内容からすると、奴らはまだ、
オスティスの居場所を知らないようだな。
あいつ、上手く逃げたのか・・・。
男は、二人に気付かれぬように身を隠しながらも、ふと服の中に潜り込んでいる赤い石の首飾りを握り締める。
今考えると、オスティスがあの場面で逃げ切れることは不可能に近かった。
あれはまさに、奇跡としか言いようがない。
あの赤い光・・・、そしてこの石は一体・・・
まだ微かに残る、石の温かさを感じながら、男は更に強い決心を固めたのだった。
必ず、オスティスを奴らより先に探し出すこと。
そして、あのとき突如表れた不思議な光と、この石の謎を解明することを。
この男の腕には、王家の紋章、白い蛇の刺青が刻み込まれていた。
すいません、名前を二人も勝手につけてしまいまして、申し訳ないです・・・!