プロローグ
読者の皆様、済みません。こういう始まり方になってしまいましたが、けれども先が分からないミステリアスなストーリーになりそうな予感がします。
初めての試み、交換小説ですが、何とか総勢六人の先頭を務めまさせて頂きました。(ハラハラ)
これから次の方にバトンタッチいたします。
私もどうなるか分からず、ドキドキワクワクです。皆様もどうか一緒になって、小説の面白さを味わって下さいね。
<砂丘の彼方へ>
プロローグ
目を覚ました……。
何も無い。かすかに映るのは、果てまで続く、陽炎のスクリーンの向うのうねるような砂丘だけ。彼は暫くぼんやりと眺めていたが、すぐに激しい喉の渇きと、全身の痛みと、焼け付く太陽に照らされた背中のヒリヒリした不快な感覚を覚えた。
ボロボロに破れた、もとは白だったと思えるシャツと、黒っぽいズボンを穿いてはいるが、けれども裸足でそして持ち物も何も無い。
―ここは何処だ? そしていつ?
まだはっきりと覚醒してはいない脳裏にまず浮かんだのは、その二つの疑問だった。けれども彼はもっと重大な疑問に突き当たると、思わず身を起こそうとして喘いだ。
―自分は誰? 誰? 一体何者なんだ? なぜこんな所に?
彼は両手を見つめた。砂まみれの両手。けれども左手の指は四本しかない。小指が何か鋭いものでスッパリ切り落とされていた。止血したのだろうか、その先は火傷の跡があった。
そして何も覚えていない、という事実は彼を狂おしいほどに打ちのめした。
彼はやっとのことで砂に座ると、辺りを巡らせた。けれどもあるのはただ真っ青な空と、白く眩しい太陽と、そして砂丘だけしかない。
自分が分からなかった。名前も、歳も、国も何一つ思い浮かばない。まるで何か消しゴムのようなもので抹消されたように、彼の脳は空っぽだった。
激しい渇きが彼を襲う。水もなく食料もなく、何一つ無いこの見知らぬ砂丘にたった一人座っているだけの自分……。ただ分かっている事は、苦難の道のりがあるということだけだった。そうでなければ、緩慢な“死”が……。
けれども、なぜ自分は死なずにこんな所に居るのか、それが理解できない。
彼はワアーッという絶望の叫び声をあげた。そして砂丘の中で、ただ一滴の水分を落した。それは自分の涙だ。
―どうして、こんなことに……。
運命を呪うには、まだ早すぎたのかもしれない。これからの自分の未来を、もしも見通すことが出来たとしたら、それは……。