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第9話

フリーザが外へ吹っ飛び周りが騒然としている中、俺は今、目の前で起こった事について考えていた。


外へ吹っ飛ばされたフリーザはどうでもいいんだが、問題なのは・・・何をやったのかほとんど見えなかった事だ。


フリーザ兄が動いたのはわかっている・・・だがどうやって吹っ飛ばしたのかが全く見えなかった。


今の俺が戦ったら多分勝てないっていうのはすぐにわかったけどな!


「ガハッ!・・・兄さん・・・な・・・んで・・・」


と言いフリーザは気を失う。


「愚弟が迷惑をかけた、詳細はここにいる二人から聞いている。ギルドに落ち度は一切無い、全部こいつの慢心が原因だ。また後日、正式に謝罪に来させる」


そう言って肩にフリーザを担ぎ兄はジュリアとイリスを連れて去っていった。


・・・かっけぇぇえええ!何あれ!あれこそ勇者の子孫って名乗っていいレベルだよな!


それに比べて弟は・・・


まぁ、どうでもいいか。


もう会う事もないだろう・・・ないよね?


・・・気を取り直して依頼をこなしていこー!



――――――――――――――――



Fランクの依頼が貼ってある掲示板を見ていく。


おっ、またボア退治の依頼があるな。馬鹿が失敗したせいか報酬金額が上がってる。


だが俺はこの依頼を受ける気は無い。俺をあれだけ楽しませてくれたボアを殺すなんて・・・できないよ!


まぁ出会ったら殺すんだろうけどね。


そんな事を考えつつ依頼を見ていくと高額なの発見!




依頼:ヌンドックの捕獲


西の森にいるヌンドックを捕獲してきてください。


なるべく傷をつけずにお願いします。


報酬:3500ギル 状態によっては増額します。




西の森っていうのは多分、俺が出てきた森だろう。


ヌンドックなんて生物いたのか?っていうかあの森で生物を一匹も見て無いんだが・・・


まぁ、森の位置はわかってるし縄もあるから捕獲も問題ないだろう。


どんな生物かは受付に聞こうっと。


受付に依頼を持っていく。


「この依頼を受けたいんだが」


「はい、どの依頼で・・・あっ!あなたは!」


「何だ?」


面倒くさい事になりそうな・・・予感!


受付嬢が顔を近づけてヒソヒソと話しかけてきた。


「昨日、北の草原に行きましたよね?」


「行ったがそれがどうかしたか?」


何も悪い事はしてないのだから堂々と答える。


「その時に何か見かけませんでしたか?」


「裸で寝ている三人組がいたが・・・気持ち良さそうに寝てたからそういうプレイだと思って放置したぞ」


「ッ!・・・他に誰か見かけませんでしたか?」


「いや、特に何も見なかったな」


「そうですか・・・」


何か納得してなさそう顔をしているが俺は知らん!知らんぞ!


「それより依頼なんだが・・・」


「あっ、失礼しました。ヌンドックの捕獲ですね。ヌンドックがどのような生物かは知っていますか?」


どうやら面倒くさい事にはならないらしい。よかったよかった。まぁ面倒くさい事になっても街から出ればいいから何も問題は無い。


「全く知らない」


名前から犬っぽいっていうのはわかるんだけどね。


「そうですか、ヌンドックは小型の魔獣でしてヌンヌンと鳴きます。それさえ知っておけばヌンドックとすぐに判別できるしょう」


えっ?魔獣なの?しかもヌンヌンって何?ワンワンでいいじゃん。


「魔獣って危険じゃないのか?」


「いえ、危険はそんなにありません。ヌンドックは性格が大人しくこちらが手を出さなければ襲われる事はそうそうないんですよ」


大人しい魔獣ねぇ・・・だったら普通の獣扱いでいいんじゃねぇの?


まぁ、見に行って無理そうなら諦めよう。


「捕獲した後はどうすればいいんだ?」


流石に魔獣を連れて街には入れないだろ。死んでるなら別だが。


「捕獲した後は門にいるギルド職員に言って引き渡してもらえば大丈夫です」


「門にギルド職員がいるのか?」


「えぇ、街が襲撃された際に即座に緊急クエストを発行するために常に待機しています」


ふぅん、色々やってるんだな。


「わかった、捕獲した魔獣の査定もそいつがやってくれるんだな?」


「はい、その際に依頼達成書をお渡しするので、それをこちらまでお持ちください」


「わかった。依頼には関係ないがちょっと聞きたい事があるんだが」


「なんでしょうか?」


「先ほどギルドに入って来た男は誰だ?」


「レイ様の事ですか?」


「名前は知らないが・・・フリーザだったか?そいつを担いで出て行った奴だ」


「だったらレイ様で間違いありませんね。レイ様はフリーザ様の兄で三兄弟の次男になります」


「あいつも冒険者なのか?」


「そうですね、レイ様はBランクの冒険者です」


あの実力でBランクとかその上にいる連中はどれ程の化け物だよ・・・


「ちなみに長男のグレイル様はSランクの冒険者ですよ?」


長男がSで次男がBなのに三男がF・・・?


やっぱりフリーザは面白い奴だな!HAHAHA!


「Sランクってどれくらい強いんだ?」


「そうですね・・・今ギルドに登録している冒険者の中では上位10人に必ず名前が入る実力者ですね」


何それスゲー!


「ちなみにレイって奴はどうなんだ?」


「レイ様も冒険者ランクはBですが実力はAくらいありますからねぇ。上位100人には入ってるでしょうね」


「んん?実力はAなのにランクはBっておかしくないか?ランクアップしてないの?」


「ギルドからも何度かランクアップの要請は出しているのですがレイ様は大規模PTを組んでまして新人育成もあるからって断ってるんですよ」


面倒見も良いとか・・・お前がナンバーワンだ!って言いたくらいの人格者だな。


にしても


「大規模PTって何だ?」


そんな単語初めて聞きましたけどぉ!


「20人以上のPTを大規模PTと言うんですよ」


20人以上って多いなおい!


「それPTとして機能するの?」


「もちろんクエストを受ける時は何グループかで別れて受けるのが普通ですよ?大規模PTは利益も多いのですがもちろん不利益もありますのでご説明しますね」


と言って説明をする受付嬢。面倒だから俺がまとめるよ!よ!


1:情報やアイテムの共有


強い人からおこぼれを貰うよ!魔物の情報も聞けて便利だよ!安全度が上がるね!まぁこれは普通のPTでは情報くらいだね共有は!アイテムは個人持ちってのが多いよ!

持ってないフリしてPT仲間のアイテムを無料で貰おうとする奴もいるからね!要注意だっ!


2:依頼の共有


依頼も共有できちゃうよ!報酬は冒険者のランクによって差額が出ちゃうけどね!もちろん死んでも責任は取らないよ!

でも強い人にくっついて依頼の成功率を上げるには便利かもよ!まぁ、酷いPTだと使い捨ての駒にされることもあるらしいけどね!

ちなみに普通のPTの場合はランクを合計して平均値の依頼が上限になっちゃうよ!AとFが組んだ場合、平均はCかDだけど低い方を取られるからDまでの依頼しか受けられないよ!

だから普通はランク差のあるPTなんて組まないよ!1つか2つくらいの差じゃないとおいしくないからね!


3:PT加入、脱退の制限


大規模PTは普通のPTと違って申請書を出さないと加入できないし脱退も出来ない。加入はPTリーダーの許可が必要だが脱退に関しては本人だけで行える。

ちなみに1回脱退した大規模PTに再度加入する事は出来ない!アイテムの持ち逃げがないかって?あるみたいだよ。まぁでも脱退する時にギルドがある程度調べるみたいだけどね。

あと普通のPTを組むには依頼を受ける時に言っておけばPT扱いされる、途中で加入はできないのだよぉおお!脱退はできるみたいだけどね。


とりあえず説明するのはこれくらいだっ!


「なるほど。結構面白いシステムだな」


「まぁ、そういうことですので個人としてはAランク級なのです」。


「わかった、色々とありがとう。そろそろ依頼に向かうよ」


ギルドから出て西にある門へ向かう。


あっ、言い忘れてたけどこの街の門は東西南北にあるが使用できるのは西、南、東のみ。


北の門は領主の家の敷地内にあるから緊急事態じゃない限り使用禁止らしい。


だから昨日の依頼も西の門から出て北に向かったからちょっと時間がかかって面倒だったよ。


ちなみにどうでもいいことだが、俺は未だに西の門しか利用した事が無い。


この街にやってきた時に通ったのも西の門だったし、依頼で出入りしたのも西の門だったからだ!


本当にどうでもいいことだったな。それじゃあらためて出発だ。




――――――――――――――――




西の門にいる衛兵に挨拶をして外に出る。


森に向かう途中であることを思い出した。


昨日殺さずに放置したゴブリンはどうなったのだろうか?


「ちょっと見に行ってみるか」


と見に来てみたのはいいのだが・・・


「くらえっ!!」


「ギャッ!」


見知らぬ少年がゴブリンをボコボコにしていた。


ゴブリンはボコボコにされながらも生きているようだ。


生命力たけーなー。昨日から丸一日経っているのに生きているとは・・・さすが魔物だ。


とりあえず少年に近づいて話しかけてみるか。


近づいて少年を観察してみると鉄製の鎧に剣を腰に身に着けている。戦士か?


「何をしているんだ?」


「見て分かんない?魔物を倒してるんだ!」


「冒険者なのか?」


「あぁ!そうさ!すごいだろ!」


いや、俺も冒険者なんだけどさ。


「ランクは?」


「今はFだけどすぐに上がってみせるさ!」


ふぅーん。


「そこのゴブリンは殺さないのか?」


遠くから見てたけど持ってる剣も使わずに蹴り飛ばしてるだけなんだよな。


「あぁ、こいつには仲間の所に案内してもらうんだ!それでゴブリンどもを皆殺しにして報酬をもらうって寸法さ!」


はて?Fの依頼にゴブリン討伐なんてあったっけ?


「Fランクでゴブリン討伐依頼なんてあったか?」


「無かったから受付に言ったんだけどさ、受けさせてくれないから独断でやってるんだ!ゴブリンごときなら僕一人でも余裕で倒せるって言う事をギルドに証明するんだ!」


「・・・ちょっとギルドカード見せてもらって良いか?」


「いいよっ!ほらっ!」


と言って見せてもらったら依頼達成数が0/0だった。ちなみに名前はボブだ。


「無茶じゃないか?」


「ハハッ!受付の人と同じ事を言うね!でも大丈夫さ!ほら!こうやって倒せてるだろ?」


と言って倒れてるゴブリンを蹴飛ばしている。


そいつは俺が昨日弱らせておいたんだけどなぁ・・・


と考えていたら、俺の強化された視力が遠くの方に何か動く物体を捉えた。


「そうか、まぁ頑張ってくれよ」


俺は嫌な予感がしたので急いでその場を後にする。


「あぁ!すぐに僕の名前が国中に広がるよ!楽しみにしてて!」


と俺に向かって大声で言い放ち、ゴブリンに蹴りを入れるボブ。


「ギャアアアィ!」


叫びをあげるゴブリン。


その声を聞いて遠くから砂煙を上げて何かが近づいてくる。


足早に歩きながら砂煙を上げている何かをよく見てみると・・・


「やっぱりゴブリンの集団かよ!」


遠くから砂煙を上げながら近づいてきてるのはボコボコにされている仲間を見て怒り狂っているゴブリンの集団だった。


俺は急いで森の中に入り隠れてゴブリンの集団とボブを観察する。


ボブはまだ気づいていないようで倒れているゴブリンをボコボコにしていた。


「哀れボブ・・・」


ゴブリンの集団がかなり近づいて来たところで流石にボブも気が付いたらしい。


「な、なんだ?!」


迫ってくるゴブリンの集団を目にしたボブは


「ゴブリンか!そっちから来てくれるとは手間が省けたよ!」


やる気満々だった。


「やる気満々とかすごいな、集団の利をわかってないのか?例え一撃で倒せる奴らでも集団になると恐ろしい力を持つというのに・・・」


俺がなんで知っているかって?MMOやってた時に敵に囲まれてHPがギュンギュン減っていくのを体験してるからな!


ちなみに、昨日の夜にチンピラが襲い掛かって来た時に戦ったのは相手が人間だったからだ。


人間は感情のふり幅が大きいからまだ楽な方、あれが魔物だったら俺も逃げている・・・と思うよ?


っていうかあんなに自信満々って事はもしかして勝てるのかね。


さて、ボブの観戦に戻るか。


「ゴブリンよ!僕の糧となれっ!」


と格好つけて剣を振るうが・・・


あっさりと避けられてしまった。


その隙をついて木の棒を持っているゴブリンがボブに襲い掛かる。


「痛っ!」


痛みに負けてあっさりと剣を落としてしまう。


「クッ!ゴブリンのくせにっ!」


まだ諦めていないのか素手で殴ろうとしている。


「逃げりゃいいのに・・・ゴブリン馬鹿にしすぎだろ」


その時、ボブの願いが通じたのか振るった拳がゴブリンに当たる。


殴られてフラっとするゴブリンを見たボブは


「ハハッ!やっぱり僕は強いんだ!ゴブリンに負けるはずないんだ!」


と、そんな事を言っている間に背後から木の棒で頭を叩かれる。


「ぐぁっ!」


と言いながらボブは気を失い、倒れていった。


「あぁー兜も身につけていれば勝て・・・るわけないか」


倒れた所をボコボコにされ、ピクリともしなくなった所でゴブリン達は食事に入るようだ。


「おぉう、ボブだった物がどんどんゴブリンの腹に収まっていってる」


とても・・・グロいです・・・


食事を終えたゴブリンたちはボブの装備品を身に着けて立ち去っていった。


んーどうするかなー熱血漫画みたいにボブの仇だぁああって言いながらゴブリン倒してもいいけど・・・やっぱ放置かな。


俺に害が無い限りは全力で放置っ!


それに街道からも近いし、誰かがギルドに知らせるさぁー


「よし、ヌンドック探しに行こうっと」


そうして俺はその場を後にして森の中へと入っていくのであった。

ちょっと短めです。


ちなみに作者はボブみたいな可哀想なキャラが大好きです。

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