第8話
カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる、もう朝のようだ。
外ではギョエーギョエーと鳥が鳴いている。
「そこはチュンチュンかコケコッコーにしとけよっ!」
と言って俺は目を覚ます。
「いやー、久々だなこんなに寝たの。廃人だった頃は睡眠時間も削ってたからなぁ」
と言いながら体をほぐす、飯はもうできてるかな?トイレに付いてる洗面台で顔を洗って一階へ向かう。
歯も磨きたいけど歯ブラシなんてなさそうだし、この世界の人はどうしてるんだろうか。
一階に行くとおばちゃんに会った、いつもいるような気がするけどこの人ちゃんと寝てるのかね?
「おや!もう起きたのかい!早起きだねぇ!」
「昨日は早めに寝たからな、食事はもう出来てるか?」
「食事はもうちょっと待ちな!できたら持っていくからね!」
「わかった。それと、寝起きで口の中が気持ち悪いんだが・・・」
「洗浄水なら一杯50ギルだよ!」
・・・洗浄水とな?普通の水じゃないのか?
「洗浄水?」
「なんだい!知らないのかい?昔の偉い魔導師が開発したお水でね、それでうがいをすると口の中が綺麗になってスッキリするんだよ!」
何その便利な水。しかも魔導師が開発した水って事は魔法で作ってるのか?
「あぁ、じゃあ一杯もらえるか?」
「食事の時に一緒に持っていくよ!お金もその時に払っておくれ!」
「わかった」
とりあえず部屋に戻る。あぁー口内が綺麗になるって知ったらお風呂も入りたくなってきたなー
その洗浄水って体にも使えねーのかな。でもコップ一杯で50ギルって事は全身洗うの高くなりそーだな。
おばちゃんが来た時に聞いてみるか。
とりあえず今日は魔法関係の店に行って服屋にも行かないとな、流石にずっと同じ服を着ている訳には行かない。
あとは雑貨屋で何か使えそうなのないか探すか、お金も増えたしな。
コンコン
ん?おばちゃんのノックじゃないな?誰だ?
「誰だ?」
「お食事をお持ちしました」
「入ってくれ」
と言ってドアを開ける、入ってきたのはポニーテールの髪型をした可愛いらしい女の子でした。
おばちゃんと全然違うな、おばちゃんは返事をする前に容赦なく入ってくるのに・・・
「ありがとう。テーブルの上に置いといてくれ」
「あの、洗浄水の代金を・・・」
「これでいいか?」
そう言って銀貨を1枚渡す、これで銅貨の価値がわかるはずだ。
「はい、お釣りの50ギルです」
銅貨を5枚渡された。ふむ、銅貨は1枚10ギルか、これで俺の所持金は銅貨も合わせて9万8370ギルになった訳だ。
「絵が描いてあるコップに入っているのが洗浄水ですので・・・」
と説明をしてくれるポニーテール。
「これって体や髪を洗うのには使えないのか?」
「体ですか?洗えますけど・・・そんな事をしているのはお金持ちの貴族か王族の方だけだと思いますよ?
体を洗いたいのでしたら店の裏手にある小屋にシャワー室がありますので」
ですよねー・・・ってシャワーあんの!?水洗トイレの時も思ったけど文化水準がわかんねぇえええ!
「そのシャワーってお湯は出るのか?」
「お湯が出るシャワーもありますが、そちらは有料になっております」
「なら水のみは無料って事だな?」
「はい、井戸から水を引いているだけですから・・・でも体を拭くタオルは有料ですよ?」
何そのシステム、タオルは持参した方が良さそうだな。
「わかった、色々とありがとう」
「いえ、ごゆっくりどうぞ」
そうしてポニーテールは出て行った。
さて、先にうがいをするか・・・洗面台に行き洗浄水を半分使ってうがいをする。
「ガラガラガラガラガラガラガラ・・・ペッ!」
・・・何この水すげぇ!!・・・正直舐めてました。味は全くしないんだが終わった後のスッキリ感が凄まじい。
歯もトゥルトゥルになっていた。ツルツルじゃない!トゥルトゥルだ!
これを発明した魔導師はすごいな・・・天才だったのか?これの作り方が知りたい・・・
まぁ、今は飯を食おう。
今日の朝食はパンに野菜と肉を挟んだもの、つまりはサンドイッチだ。肉には濃い味付けのタレが絡まっていてそれがパンと野菜に染み込んで美味い。
飲み物は水じゃなく、さっぱりとしたレモンジュースの様な飲み物でこれもまた美味い。
今日の夕食も楽しみだな。大盛りにしてくれるらしいが・・・覚えてなさそうな予感もしている。
さて、残してある洗浄水でうがいをして活動を開始するか。まだ朝早いが店が開いてるといいな、開いてなかったらギルドで適当な依頼をこなそう。
――――――――――――――――
一階で食器をおばちゃんに返す、美味しかったという言葉も忘れない。何事も繰り返して言う事が大切なのだ。
そのまま鍵を預け外に出ようとするとおばちゃんに呼び止められた。
「外に行くなら気をつけなよ!」
「何かあったのか?」
「この宿の近くで人が殺されてたらしいからね!」
・・・あぁー昨日のチンピラどもかな。
「まぁ殺されてたのは盗賊ギルドの連中だって言うからあんたは大丈夫だと思うけどね!」
「盗賊ギルド?」
あいつら盗賊ギルド所属だったのかよ・・・殺したのは早計だったかな。
でも殺さなかったら更に面倒ごとになりそうだったからいいか。
「あぁ!ならず者たちが集まって作ったギルドさ!」
「そんなギルドが存在を認められてるのか?」
「表立っては認められて無いけど裏じゃどうだかわかんないね!」
なるほど、利用価値はあるってことか・・・
「わかった、気をつけておくよ」
そう言って外に出る。
ちなみに荷物は全部持っていっている。
まぁさほど荷物らしい荷物を持って無いんだけどね、荷物を置いてきて奪った女性のパンツ見られたら嫌だし。
ちなみに魔法関係の店は昨日街をうろついている時にそれっぽい店を見つけてある。
さすがだな俺!
しばらく歩いて店の前についた。どうやら開いているようだ。看板には[魔]とシンプルに書かれているだけだ。
中に入り店内を見渡すと怪しい品がいっぱいあった。どうやら俺以外に客はいないようだ。
色々と見てみるが使い方や効果がわからないのでカウンターでフードを深く被って顔を隠している人に聞いてみる。
「すまない、ちょっといいだろうか?」
「何でしょう?」
声を聞いて驚いた。てっきり爺か婆かと思ったのにかなり若い女の声だったのだ。
まぁ、若かろうが何だろうが店を持ってるのでそれなりの知識はあるのだろう。色々と聞いてみよう。
「俺はこういう店に来るのは初めてなんだがお勧めの物はあるか?」
ここは素直にお勧めを聞いておかないとね、知ったかぶっても良い事ないし、どんな物があるかもわかんないしねー。
「初めてですか・・・でしたらこの店に来たのも頷けますね」
「・・・どういう意味だ?」
「この店は普通の冒険者や魔導師たちは訪れませんから」
んん?意味がわからないぞ。
「紹介状でもいるのか?」
「いえ、紹介状などはいりませんが・・・」
被っているフードを取る店員。
「私は・・・魔族ですから・・・」
そう言って現れたのは肌が青く耳が尖っているがそんなのは気にならないくらいの美しさを持った(ここ重要!)女性だった。
美人キターー!!魔族は初めて見たけど全員こんなに美人なのか!?
もしそうだとしたら俺は魔族の国に住みたいぞぉおお!
っといつまでもじろじろ見てると変に思われるな。
「魔族だと何か問題でもあるのか?」
「問題と言いますか、人と魔族では種族としての力の差がありすぎるので魔族を恐れる人が多いのです」
あぁ、そういうことなのね。
「ふぅん、種族としての力の差があるのは獣人なども同じじゃないのか?」
「魔族よりは力の差がありませんから恐れる人はほとんどいないですね」
そんなものなのかね?
「強いからって無差別に人間を襲ったりしないんだろ?」
「そうですね、強大な力を持った魔王がいた時代は暴れてたみたいですがそういう魔王が倒されてからは滅多にありませんね」
「なら何も問題は無い」
と思う。
「人族にしては珍しい性格をしていますね」
「褒め言葉として受け取っておこう。それより魔王ってまだ居るのか?」
さっきの言い方だと強大な力を持ってない魔王は残ってるみたいじゃないか。
「えぇ、魔族が住んでいる国・・・「魔国」と言うんですけど魔国領内の各地を治めている人たちを魔王と呼んでいます」
ほう、領主の事を魔王と呼んでいるのか何か物騒だな。
「そういえばお勧めの物を探してるんでしたね。失礼ですが冒険者の方ですか?」
「冒険者ギルドに所属している魔導師だ」
「魔導師の方でしたか。属性をお聞きしてもよろしいですか?」
「属性って魔法の属性だよな?それなら『地』属性だ」
「・・・あなたは本当に珍しい人ですね。今時『地』属性を使う人がいたとは驚きです」
えっ?どういうこと?土木作業や農作業の人が使ってるんじゃないの?
「ちょっと待った。今時ってどういうことだ?まるで今は使ってる人がいないみたいじゃないか」
「え?」
「え?」
シーンとする店内、辺りに気まずい空気が流れる。
「・・・もしかして知らないのですか?」
「すまないが田舎から出てきたばっかりで冒険者ギルドに入ったのも昨日の事なんだ。良ければ教えてくれないか?」
「なるほど、それなら知らないのも仕方ありませんね。説明しますと今は魔法がかかっている道具、それを「魔道具」というのですが・・・
それが普及しているので『地』属性魔法でやっていた作業は皆さん魔道具を使ってやられてますよ?魔道具は魔法が使えない人でも簡単に使えますからね」
・・・マジで?どうりでフリーザ達に『地』属性魔法を使った時に気づかれないわけだ。
ずっとあいつらが馬鹿だからと思ってたのに。ショッキング!
もしかしてギルドや宿にあった光っている石も魔道具だったのか?
「その魔道具って永遠に効果を発揮するのか?」
「いえ、魔道具には核となる「魔石」が埋め込まれているんですがその魔石が壊れたり、魔石に溜め込まれた魔力が無くなると効果を発揮しなくなりますね。
あっ、魔力が無くなった場合は魔石に魔力を注ぎ込めば再び使えるようになりますよ」
なん・・・だとっ!?
「魔道具が便利なのはわかったが『地』属性に適正がある奴はどうしてるんだ?使われなくても適正がある奴はいるだろ?
それに自分に合わない属性の魔法を使おうとすると発動しない事があるらしいじゃないか」
「今は杖の性能も上がってますから魔力がある程度あれば『地』属性の適正者も威力は劣りますが他属性も使えますよ?」
あるぇー?本に書いてあった事と違うじゃん・・・
「んん?俺が読んだ本には発動しない事が多々あると書いていたが・・・」
「あぁ、それは初心者用の本ですね。あの本は魔法に興味を持たせるのが目的であって書いてあるのは結構適当なんですよね」
えっ、なにそれ怖い。
「そもそも本に書いてある通りにやって魔法を発動できる人なんていませんからね。自分の適正属性すら分からない訳ですから」
確かに属性を判別する方法は書いてなかったな・・・なんというトラップ!
俺は神様からチートを貰って更に適正属性がわかってたから発動したって訳か・・・
「普通はどうやって適正属性を判断するんだ?」
「一般的には魔導師を育てる学園に入学する際に検査をしてくれますね。あとは魔導師に弟子入りすれば魔導師ギルドが検査してくれます」
なるほどなるほど。
「結構面倒なんだな。俺は独学で適当にやってたらわかったんだが・・・」
本当は元からわかってたんだけどね!
「あぁ、たまにそういう人もいるみたいですね」
いるのかよっ!
「あっ、ちなみに人族以外の種族で『地』属性を使う種族はいますよ」
「ん?そうなのか?」
「『地』属性は範囲魔法が多いのですが人族の持つ魔力の量だと範囲魔法を使っているとすぐに魔力が切れますからね。
ですから魔力の量が多い種族だとそういうのは気にしませんからね」
あぁー・・・なるほど、魔力の量も理由の1つなのか。
――――――――――――――――
他にも色々聞いてみたところ種族によって魔法も色々あるらしい。
精霊と親しい種族は精霊と契約をして精霊魔法を、膨大な魔力を持つ種族は人族には使えない属性を使う事が出来るとか・・・
ちなみに他の種族が『地』属性を使えるって言ってもやっぱり戦闘には使わないらしい。
強いと思うんだがなぁ、だがこれは利用できそうだ。
相手が予想しない属性って事は初めて戦う相手の場合かなり有利になる。他にも色々と・・・HAHAHA!やっぱり『地』属性は最高だZE!
でもやっぱりデメリットもあるわけで・・・
「誰も使ってませんので『地』属性を補助する杖などは置いてませんよ?」
だってさ!そりゃそうだよね!
「まぁ、仕方ないな。そういえば杖ってどんな効果の物があるんだ?」
これは聞いておかないとな。
「基本は各属性の補助ですね。どんな種類の杖でも属性補助が必ず入っています」
「適正属性がなくても魔法が使えるって奴だよな?」
「はい、例えば『火』属性補助が入った杖だと『火』属性魔法が使えるようになります」
「その場合元々『火』属性の適正を持っていたらどうなるんだ?」
「魔法の威力や発動速度がアップしますね」
ふむ、本当に補助なんだな。
「杖には一つの属性補助しか入ってないのか?」
「高価な杖だと複数入ってることもありますよ」
うーむ、複数持ちは相手にするのが面倒そうだな。
「他に効果はあるのか?」
「あとは魔力消費を減らしたり魔法の発動を早めたりするくらいですかね」
んー『地』属性以外使う気はないから杖は買うのはやめておこうかな。
「私のお勧めは『火』か『水』属性補助がついた杖ですね。人気があって応用も利きますから色々と便利ですよ?如何ですか?」
「悪いが『地』属性以外使う気はないんだ。杖はもういいから他に何か魔道具はないか?」
「ん~そうですね、それならこの着火石は如何でしょう?」
そういって店員が取り出した物を見てみると手に収まるサイズの石?に小さな赤い石が埋め込まれている。
「着火石?」
「はい、こちらの着火石は火をつける魔道具でして、冒険者が必ず持っていると言っても良い位の必須商品です。試しに使ってみますから見ていてくださいね」
店員が手に持った着火石を発動させると小さな赤い石が光りだしてちろちろと小さな炎が出てきた。
要するにライターか。確かに冒険者には必須だよな。
「それは便利だな、ひとつ貰おう」
「ありがとうございます」
「その赤い石が魔石で良いんだよな?」
「そうですね、こちらの石が魔石です。属性によって色が変わるようになっています」
「なるほどね、『火』属性だから赤いのか、魔力が切れた場合はすぐに気づける物なのか?」
気づかないで冒険に出て後で使えない事に気づくとか笑えないぞ。
「魔石に込めた魔力が減りますと魔石の色が黒ずんでくるので無くなる前に気づくと思います」
なんて便利な・・・
「魔力を魔石に溜めるにはどうすればいいんだ?」
「魔法を使う時に魔力を集めますよね?その要領で魔石に流し込めば良いだけです」
「案外簡単なんだな」
「はい、ですから新人の魔導師は魔石への魔力溜めでお小遣い稼ぎをしているみたいですよ」
あぁ、魔石に魔力を溜めるだけで金になるのか。何て安定した職業なんだ魔導師・・・
「あっ、でも魔石の許容量を超えて魔力を注ぎ込むと魔石が割れますので注意してくださいね」
「それはどうやって判断すればいいんだ?」
「魔石の色の強さで判断して貰うしかありませんね。余りにも魔石が強く輝き出すと危険です」
ふむふむ。
「ですから魔力が多い魔族の場合は小さい魔石だと魔力を溜められないんですよね。一瞬で壊れちゃいますから」
むぅ、魔力が多いと危ないって事は俺の場合もすぐに壊れそうだな注意しないと・・・
――――――――――――――――
その後も色々と役立ちそうな物を買って店を出る。
ちなみに買った物は
1:着火石 1500ギル
効果:小さい炎を出す事が出来る。
2:結界針 1万ギル
効果:刺した場所から半径2mの範囲に魔物を防ぐ結界を張る事が出来る。
継続時間は魔石に魔力が満たされている状態で24時間程。
※ただし張った結界は一定以上のダメージを受けると壊れてしまう。
3:冷水筒 3000ギル
効果:いつでも冷たい飲み物を飲む事ができる水筒。内容量は5リットル程。
ちなみに水筒と書いてあるが筒状ではなく特殊な皮を使った袋状の物なので使わない時は小さく折りたたんでおく事ができる。
買った魔道具はこれだけだ。
水が冷やす袋があるなら食材を冷やす魔道具があっても良い筈だと思って聞いてみたらあるらしい。
だったらそれも買おうと思ったのだが冷水筒みたいな柔らかい皮製の物がなく硬い素材でできた物しかないのだとか・・・
さすがにそれじゃ旅をするのに邪魔すぎるから買わなかった訳だ。
とりあえずこの3つさえあれば旅はある程度大丈夫だろう。何か足りないと思ったらまた買えばいいだけだしな。
ついでに中級以上の『地』の魔道書がないか聞いてみたが残念ながらないと言われてしまった。
魔法学園がある街「サイクォッツ」なら資料用としてあるだろうとの事。
・・・資料用ってひどくね?
主人公の所持金 9万8370ギル→8万3870ギル
――――――――――――――――
適当に街をぶらついていると子供がドンとぶつかってきた。
これはもしかして・・・盗人フラグか?と思い即座に荷物をチェックしてみるが特に異常はなかった。
俺が荷物をチェックしている間に子供は謝りもせずに足早に去っていった。
次に会ったらボコボコにしてやると心に誓っていると
「おい!あんた!ガキを見なかったか!?」
見知らぬオヤジがいきなり話しかけてきた。
「ガキならあっちに行ったが・・・何かあったのか?」
「あのクソガキ!俺の財布を盗みやがったんだ!」
なんだ、もう既に盗んだ後だったか。
「そりゃ大変だな、引き止めて悪かったな」
俺がそう言うとオヤジは凄い速さで追いかけていった。
あの調子なら追いつきそうだな。頑張れオヤジ。
そしてぶらつきを再開。
いくつか服屋を発見して入って見たものの生地が駄目すぎる。
ゴワゴワするよ!とてもゴワゴワするよ!
何でだ!製本の技術やトイレの技術もすごい上に魔道具なんて物があるのに何で服がゴワゴワなんだ!
意味がわからん!納得できねぇえええええええ!
俺が今着ているTシャツとジャージが高級品に思えるほどだ・・・
もしかして高級な服屋に行けば違うのか?でも安い服でも一着1000ギルとか2000ギルくらいしてるしなぁ。
高い服だといくらになるか想像がつかん。
どうすっかなぁー替えがないとさすがにきつい。我慢するか・・・?
いや!駄目だ!服の着心地が悪いとイライラするからな。
どうすっかなー・・・
「そこのお兄さん・・・何かお悩みのようだね・・・?」
ローブを被った婆が話しかけてきた。婆の前には水晶玉があって怪しさMAXだ。
「わかるか?俺は今とても悩んでいるんだ」
服の生地に。
「どうだい・・・?占ってみないかい?答えが見つかるかもしれないよ?」
「俺の悩みを当ててくれたら考えるよ」
「ヒヒヒ・・・簡単だよ、お兄さんは今仕事で悩んでるね・・・?」
はい!違う!婆インチキ決定!
「仕事では全く悩んでないな」
「わかってるさ、冗談だよ・・・恋人関係だろう・・・?」
・・・この婆はこうやって当たるまで冗談で通すのだろうか?
「恋人関係でも悩んで無い」
「ヒヒヒ・・・だったらアレだね。アレしかないよ・・・」
とうとうアレとか言い出したぞ、この婆駄目すぎる。死ねばいいのに。
「婆もう黙れ、天に召されろ」
と言って立ち去る。
「ま、まっておくれぇ・・・ゴホッゴホッ・・・あぁ・・・持病の発作が・・・」
おいおい、今度は同情を引こうとしてるし・・・
「そのまま死ね」
全く変なのが多い街だぜ・・・
仕方ない・・・とりあえず服は諦めて道具屋でも探すかな。
――――――――――――――――
そうして歩いていると道具屋っぽい店を発見っ!
店名はっと・・・ん?カイヌス商店?
カイヌスって何処かで聞いたような・・・
あっ、俺が助けた商人か。
確かに商人って言ってたけど本格的な店持ってたのか・・・
護衛無しで外に出るくらいだからてっきり露天商くらいかと思ってたんだがな
まぁいいや、入ってみよう。
店の中に入ると結構な数の客がいた。
結構流行ってるんだなぁ・・・と考えていると
「いらっしゃいませ~何か御入用ですか?」
と何処にでもいそうな人族の青年が話しかけてきた。
他にも客はいるのに何で俺にだけ話しかけてくるんだ?と思いながらとりあえず基本的な事を聞いてみる。
「ここって道具屋であってるんだよな?」
「はい、当店は冒険者に必要な道具を取り揃えたお店でございます」
ふむ、冒険者用の道具屋だったのか・・・って言われても違いがわからねぇよ!
こっちは異世界二日目だぞこの野郎!
まぁそんな事は置いといてだ。
「何で俺に話しかけてきたんだ?」
一応聞いておかないとね。
「初めて見えられたお客様には話しかけるようにしておりますので」
来た客を全員覚えてるのかよ。
「ところで何かお探しのものはございますか?」
ふむ、探し回るのも面倒だし全部用意してもらうか。
「とりあえず旅に出るのに最低限必要な物を探している」
こう言っておけば余計な物は勧められないはずだ・・・多分。
「それでしたらこちらの「新人冒険者さん必見!これさえあれば大丈夫!・・・かもしれないセット」はいかがでしょう?」
何その商品名・・・
「どんな商品か聞いてもいいか?」
「はい!こちらはですね、これから旅を始める新人冒険者さんに向けた商品でして・・・」
説明を求められるのが嬉しいのか嬉々として説明を始めた店員・・・だが!長いのでカットさせてもらう!
商品の内容は以下の通り。
1:毛布×1 2000ギル
寒い日も安心!これ1枚あるだけで大満足な暖か毛布!暖かい日?なにそれ?おいしいの?洗濯はマメにしてよねっ!
2:包帯×1 200ギル
傷口を覆って優しく保護!傷口が無くても巻いていれば「クッ!○○が疼くぜ!」って出来ちゃう厨ニ病のあなたにもお勧めの一品。
3:ポーション×5 250ギル×5
簡単な傷を癒す薬。飲んで良し!傷口にかけても良し!飲んだ場合は体力もちょこっと回復するよ!傷口にかけた場合は超しみるからSMプレイにもお勧めだよ!液体の色は赤。
4:解毒ポーション×5 300ギル×5
簡単な毒なら解毒しちゃう薬。これは飲み薬です。ぶっかけても効果はないから要注意だ!液体の色は緑。
5:縄×1 300ギル
そう簡単には切れない・・・はずの丈夫な縄。縛っちゃうのかい?縛っちゃえよ!俺は簡易SMプレイが大好きだぁあああ!あっもちろん普通の用途にも使えるよ。
6:片手鍋×1 1000ギル
煮て良し!焼いて良し!あれば便利な片手鍋!保存食だけじゃ物足りない!そんなあなたにピッタリだ!
7:道具袋×1 1500ギル
入っちゃうよ!上の道具が全部まとめて入っちゃうよ!それでも空きスペースがあるよ!これはもう道具袋の粋を越えているのではないか荷物入れでもおかしくは無い。
ちなみに巾着みたいに紐で口の部分をギュッて出来るよ!
以上7点がまとめられているセットだ。
ふむ、あってよし!だな。ちなみにポーション類は透明の容器で出来た平底フラスコ状の容器に入っている。テンプレの容器だな。
ゲームとかでよく見かけてたが、実物を見ると激しい戦闘とかしたら割れそうで怖いな。
「このポーション類は割れないのか?」
「強い衝撃があると割れてしまいます。戦闘をする時は注意して貰うしかないですね。あっ、空容器は買い取りしてますので是非持ってきてくださいね」
・・・容器の買い取りって昔あった瓶ジュースを思い出すなぁ。
更に詳しく聞くとこの容器以外だと品質が変わって効果を失ってしまうらしい。気難しい液体だな。
「こちらは単品で買い揃えますと7750ギルなんですがセット品と言う事で7000ギルとなっております」
「ふむ、ならそのセット品と道具袋を後二つくれ」
財布用と食材入れるようの袋も買っちゃうぜ。
「はい!ありがとうございます!道具袋のサイズはどうしましょう?」
と言われたから用途にあったサイズを選んでお会計。
ちなみに財布用の小サイズが500ギルで食材用の中サイズが800ギルほどだった。
合計で8300ギルを払い店を出る。
ちなみにカイヌスの姿を見かける事は無かった。
にしても良い買い物をしたな。
道具袋が手に入ったのでローブで作った荷物入れは捨てた。もう必要ねぇんだよぉおお!
さて、それじゃあ今日もお金を稼ぐためにギルドへ行きますかねー
主人公の所持金 8万3870ギル→7万5570ギル
――――――――――――――――
ギルドへ到着すると何やら受付が騒がしい。
騒がしいって言うか受付が見えないくらい人が集まっている。
何かあったのか?と思って近くにいた野次馬に聞いてみる。
「騒がしいが何があったんだ?」
「あぁ、フリーザって言う冒険者が来ててな。そいつが受付で騒いでるんだよ」
フリーザ?フリーザって昨日、俺がおちょくってボアにボコボコにされて体のある部分がポークビッツ以下のあいつだよな?生きてたのか。
それにもう動けるようになってるとは予想外だ。どうやって治療したんだろう。
同名の別人って事も考えられるが、何人もあんな名前の奴がいても困る。
「そのフリーザって奴は何を騒いでるんだ?」
「フリーザが言うには依頼を誰かに妨害を受けたんだとさ」
ふむ、妨害された事に気づいたのか、まぁ気づかない方がおかしいくらい妨害したんですがね!
「それでフリーザの後に北の草原の依頼を受けた奴がいるって何処からか聞いたらしくて、そいつが俺達をはめたに違いないって騒いでるんだ」
うむ、俺のことに間違いないな。だが俺自身がフリーザ達に姿を見られたわけでもないし、何の問題もないだろう。
依頼を受けただけで犯人に決め付けれないだろうしな。
「それにこれは聞いた話なんだが・・・」
「ん?他にもあるのか?」
「昨日街に帰ってきた時に裸に葉っぱ姿だったらしい」
・・・葉っぱ?
「葉っぱ?」
「そう、葉っぱ」
「・・・ブハッ!」
「おいおい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫じゃない・・・わ、笑いが止まらない・・・クックックッ」
「だよなぁ、俺も聞いた時は吹き出したからなぁ・・・」
「す、すまんすまん。ふぅ・・・ようやく落ち着いてきた。で、それって本当なのか?」
「何人も見た奴がいるから本当じゃないか?ちなみに顔も葉っぱで覆ってたらしい」
顔も覆ってたとか、完全に変質者だな。
「よくそんな怪しい格好した奴が街の中に入ってこれたな」
「いやぁ、それがな門の衛兵に向かって「俺は勇者の子孫だ!」って言ったらしい」
「ブフゥッ!」
「うぉっ!」
「ゲホッゲホッ・・・ひ、ひどいなそれ」
笑いを通り越してむせてしまったぜ。
「だろ?昨日そんな事があった上から今度は何をするんだろうって皆集まって見てるらしい」
ふむ、完全にネタキャラになったようだ。
と受付の会話が聞こえてきたので聞いてみよう。
「ですから!そういう事はギルドの信用に関わりますから言えないと言っているじゃないですか!」
おぉ、あの大人しそうな受付嬢が怒ってるようだ。
「勇者の子孫である俺様の依頼を邪魔したんだぞ!?」
「ですから証拠はあるんですか!」
「証拠なんてなくても俺様がそう思っているんだ!俺様が正しいに決まってるだろ!」
何処までも馬鹿だなアイツ。
「それがおかしいと言っているんです!それに妨害されたと言ってますが目撃もしてないんですよね!?
本当に妨害されたと言えるんですか?」
頑張れ受付嬢!俺に被害が及ばない限り俺は味方だぞ!!
「目が覚めた時に装備品がなかったんだぞ!俺様の後に依頼を受けた奴が盗んだに違いない!」
「妨害関係なくなってるじゃないですか!それに目が覚めたって事は敵にやられて気絶してたんですよね?盗まれても完全に自業自得だと思いますけど?」
「だから俺様がボアごときに気絶させられるわけないと言っているんだ!そいつが邪魔したに違いない!」
「実際にやられて気絶してるじゃないですか!それにあなたのパーティにはあなたを含めて三人もいたんですよね?
あなたが言うには三人とも妨害を受けたんですよね?それなのに誰も目撃していないっておかしいじゃないですか!しかも何をされたかもわからないって・・・
あなた達は結果として依頼を達成できなかった!それはまだいいでしょう、失敗するのはよくある事ですので他の冒険者に受けてもらえばいいだけですから。
しかしあなた達は失敗の理由を他の冒険者の妨害のせいだと言い張っている。
それも証拠があるならいいでしょう!ギルドが責任を持って調べ、本当に妨害をしていたならきちんと罰を与えます!
冒険者ギルドの原則として依頼内容が同じ物でない限り、冒険者が冒険者の邪魔をする事は禁止されていますからね!
ですがあなた達は証拠も無い、目撃もしていない、何をされたかもわからない、そんな話を誰が信じるって言うんですか!
ギルド側から言わせてもらえば、敵にやられたのも装備品を盗られたのも実力に合わない依頼を受けたあなた方の自業自得です!」
プププ・・・正論で返されてやがる。
でも同じ依頼なら相手の妨害をしても良いってそんな原則あったんだな。今初めて聞いたぞ。
禁止しても防げないからか?
まぁ、今はそんなことよりだ・・・お顔が真っ赤なフリーザ様は何て返すのかな?
あれ?そういやお供の二人がいないな。何処にいるんだろ?
「クソッ!お前みたいな下っ端じゃ話にならん!ギルドマスターを呼べ!」
おいおい、ギルドマスターまで呼ぶのかよ。無理だろ。
と思っていると入り口から誰かが入ってきた。
フリーザを見ていた野次馬達がその人物に気づくと慌てて道を開けていく。
見よ!人垣が割れていくぞ!まるでモーゼの再来だ!
モーゼが割ったのは海ですけどね!と自分のボケに自分がツッコミを入れる一人漫才をしていると・・・
「兄さん!」
とフリーザが言った。
兄さん!?と慌ててその人物を観察するとイリスとジュリアを連れた一人の男がそこにいた。
その男の容姿は筋肉質のガッチリした体に髪の色だけはフリーザと同じ金色だが短髪が似合う爽やかなイケメン・・・
装備品も心臓の部分だけを覆うプレートとそれと対の形をした背中を守るプレートを繋げただけの銀色の鎧と手甲に足甲の、余計な装飾などないシンプルな装備。
完全に動きやすさ重視だな。武器は持っていないように見えるが・・・徒手空拳で戦う人か?
にしても・・・にてねぇえええ!何なの?本当に兄弟なの?フリーザは橋の下の子じゃないの?
「兄さん!聞いてくれよ!この受付が全然僕の話を聞いてくれないんだよ!」
あれ、俺様って言わなくなったな。言葉使いも変わってるし、流石に兄は怖いのか?
でも受付はちゃんと話を聞いていたぞ、聞いてなかったのはお前の方だ。
などと考えていると・・・ブンッと言う音とともにフリーザがギルドの外へ吹っ飛んでいた。
お久しぶりです。お待たせしてすいません。