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第12話


朝がやって来た。


「ギョーギョギョーギョエーギョーギョーエー」


今日もどこかで鳥が鳴いている。


「パターン変えてんじゃねぇよっ!」


と言って俺は目を覚ます。


「ふぅ、今日こそは平穏な一日であってほしいな・・・」


絶対にありえそうにない事を言ってみた。


言うだけなら無料だもんな!


「えーっと、今日はまず・・・何だっけ」


やばい、まだ寝ぼけてるみたいだ。


確か買いたい物は・・・タオルと石鹸と調味料だったか。


他はなかった・・・よな?


さて、食事と洗浄水を頼んで来るか。


一階に下りておばちゃんに食事を頼む。


「おはようさん!今日も早起きだね!食事は出来てるよ!どうするんだい?」


朝から元気だなぁ。


「すぐに食べるよ。洗浄水も頼む」


「あいよ!すぐに持っていくからね!」


部屋に戻り旅立ちの準備を始める。


「たった二日だけだったが色々あったな・・・」


としみじみ思っていると、


ドンドンドン!


「はい!お待ち!」


早っ!早いなっ!3分と経ってないぞ!


「ありがとう、50ギルだったな」


洗浄水分の50ギルを支払う。


「はいはい!どうもね!ところで今日の宿泊はどうするんだい?」


「今日はいい。ちょっと他の街へ行ってみようと思ってるんだ」


色々とやっちゃったからな!


「あら!そうなのかい?残念だねぇ・・・まぁゆっくり準備していきな!焦らなくてもいいからね!」


とても・・・良い宿です。


「ありがとう。またこの街に来た時にはここに宿泊させてもらうよ。食事も美味いしな」


「あっはっは!嬉しい事を言ってくれるじゃないか!その時は腕によりをかけて作ってあげるよ!」


そう言っておばちゃんは去っていった。


さーて!この宿での最後の食事だ!しっかり味わって食べようっと。


っとその前に洗浄水を半分使って口内洗浄をしてっと。


よっしゃ、お口はトゥルトゥル!次は食事だ!


「ふむ、今日はスープとパン・・・それにサラダか」


ちなみにコップに入っているのは昨日の朝食にも出てきたレモンジュースみたいな酸味のある飲料。


「早速いただくでガンス」


まずはパンから頂く。


「ちょっと硬めのパンだな」


それに味は薄い、でも美味いっていう。これはもしかしてスープに浸して食べるタイプなのかな?


すぐに浸そうと思ったがスープのみでも食べておきたい。


「スープに具は入ってないのか」


ちなみにスープの色は緑。見た目は野菜スープなんだよな。


「どれどれ・・・って味はコーンスープかよっ!大好きだよ!」


ちょっと違和感はあるが・・・美味いからよし!


次にパンをスープにぶち込んで食べてみる。


「こ、これは!」


あぁ!パンを噛んだ瞬間にジュワッとスープが口の中に広がっていく!!


た、たまんねぇぇえええ!


「味に飽きそうになったらサラダとジュースでリセット!何度も感動が味わえるZE!」


そんな事を繰り返して食事終了。


「ふぅ・・・満足満足」


食後の洗浄水も終わらせたし、ちょっと休憩したら行くか。



主人公の所持金 8万1520ギル→8万1470ギル




――――――――――――――――




「気をつけて行って来な!いつでも待ってるからね!」


宿から出る時、おばちゃんがそう言って見送ってくれた。


うむ、素晴らしい宿だった。


とりあえず買い物に行く前に先にギルドへ行ってサイクォッツ行きの依頼を探すか。


Fランクで受けられるといいなぁ。



はい!ギルド到着!中に入って依頼を探す。


「ねぇな・・・」


やっぱりと言うか何というかサイクォッツ行きの依頼はなかった。


でもヌンドックの捕獲依頼が新たに貼り出されていた。


クッ・・・他の街に行くという予定が無ければ!


まぁそれは置いといて、受付でも念のためにサイクォッツ行きの依頼がないか聞いてみよう。


「ちょっと聞きたいことがあるんだが」


「はい、何でしょう?」


「Fランクでサイクォッツ行きの依頼ってないか?」


「サイクォッツですか?ちょっと待ってくださいね」


分厚い紙の束を取り出して調べだす受付嬢。


「その紙、全部Fランクの依頼なのか?」


「はい、掲示板に貼り付けた後に一定期間受けられなかった依頼は掲示板からはずされるんですよ」


あー、それもそうか。いつまでも貼ってある訳ないよな。


「あっ、ありましたよ」


そう言って一枚の紙を取り出す受付嬢。


「見せてもらえるか?」


「はい、どうぞ」


依頼書を見せてもらうと・・・



依頼:手紙の配達


サイクォッツの魔法学園まで手紙を配達して欲しい。


報酬:3500ギル



「手紙の配達って冒険者がするものなのか?」


疑問に思ったから聞いてみる。


「いえ、普通はその街に向かう商人に頼んだりしますね」


だよな、その方が効率良いもんな。


「ですが商人は荷物ごと手紙を奪われる危険がありますから・・・その点、冒険者ならある程度は自衛が出来ます。

ですから大事な手紙などの依頼は冒険者ギルドに頼む人もいるんですよ」


うーむ、でもさぁ。


「Fランクだったら一般人とそう変わらないと思うんだが」


だって新人な訳じゃん?


「それでも商人よりは配達率が高いんですよ?」


えっ!?マジで?


「何か理由はあるのか?」


「理由としては、まず新人で配達依頼を受ける人がいないってところですね。お金や名声を求める人は早くランクを上げたい訳です。

ですから近場の討伐依頼や採集依頼を受ける事が多いですし、あと配達先の街に行くにはどうしても準備などでお金が掛かります。

報酬が出てもその街に行くまでの費用で赤字になる事もあるんです。それでも受けるって言う人はよっぽどの物好きか、その街に行く理由がある人だけです。

そういう人は大体新人じゃありませんからね。だから商人よりは配達率が高いんですよ」


「なるほどな。あと、この依頼ってどうやって達成証明するんだ?」


「配達専用の依頼達成書を手紙と一緒に持っていってもらいます。それで相手から署名を貰えば大丈夫です。

その後、依頼達成書をサイクォッツにある冒険者ギルドに渡せば報酬を貰えます」


ふむふむ。


「相手が手紙を受け取ってくれなくて拒否された場合は?」


受け取り拒否されて失敗扱いでこの街に帰還とか嫌だよ。


「その時も署名だけは貰ってください。その後にサイクォッツのギルドへと持っていって貰えれば大丈夫です」


「署名偽造の心配はないのか?」


署名を書くだけなら簡単に偽造されそうだけど。


「あぁ、大丈夫ですよ。依頼達成書に書かれる事は誤魔化す事が出来ませんから」


「ん?どういう事だ?」


「依頼達成書に嘘を書くと預かった時にわかるようになってるんですよ」


何その機能。


「ちなみに依頼人を脅迫して依頼達成書を奪ったりしても預かった時にすぐにバレるようになってます」


依頼達成書すっげぇええ!ただの紙じゃなかったのか!


っとまだ聞きたいことがあるんだった。


「あぁ、あと届け先が魔法学園になっているが魔法学園の誰に届ければいいんだ?」


「それは依頼人から直接聞いていただくようになってます」


ふぅん、プライバシーの問題かな?色んな依頼を見たけど依頼人の名前は基本的に書いてないし。


「よし、その依頼を受けよう」


「わかりました。依頼人の家を教えますので依頼人から手紙と依頼達成書を受け取って下さい」


「わかった」


「そういえばどうやってサイクォッツまで行かれるんですか?」


「ん?徒歩で行こうと思ってるんだが」


他に何かあるの?


「・・・ちなみにサイクォッツが何処にあるのかご存知ですか?」


「いや、知らないけど」


依頼人から聞こうと思ってるんだけど。


「はぁ・・・ちょっと待ってくださいね」


そう言って受付嬢は何かの紙を取り出してきた。


「いいですか?この地図を見てください」


取り出してきたのは地図のようだ。


そういや初めて見たな・・・この世界の地図。


「ここが今いる街カルナッタです」


ふむふむ。西の方には森があり南にはちゃんと川が流れている。


「そしてここがサイクォッツです」


受付嬢が指で示した場所はカルナッタのかなり東の方だった。


「遠いな」


うむ、遠いぞ。


「そうです。徒歩で行けば2~3週間は軽くかかるでしょう」


「途中に村や町はあるんだろ?」


「ありません」


えっ、ないの?


「もう!何も知らないじゃないですか!」


そう言って受付嬢は丁寧に説明してくれた。


長いから俺がまとめるよ!よ!


ちなみに受付嬢は何人かいるから俺一人に時間を取られても何の問題もないよ!


毎回同じ受付嬢に当たっているのは偶然だよ!


どうやら魔族の住んでいる国、「魔国」があるのはこの大陸の東の方でサイクォッツはかなり魔国との国境に近い所にあるようだ。


争いが無くなったとはいえ魔族が強大な力を持つ事に変わりは無く、その力に恐怖して今でも魔国に近い東の方に住む人間は皆無らしい。


だからサイクォッツを除けばカルナッタが人が住む最東端だと言う事だ!


ちなみに何でサイクォッツが魔国に近い場所にあるかというとサイクォッツは元々、魔族を研究する為の施設だったんだってさ!


それがそのまま魔法を教える施設になって学園が出来た・・・と言うわけさ!わかったかな?


あとは魔国に近いと魔獣や魔物の数が増えて学生の戦闘訓練にも便利なんだって。



ついでに今いる人族の国の名前は「シルヴェウス」っていうらしい。初代勇者の子孫が治めている国のようだ。


初代勇者は王道パターンで魔王を倒した後に、その時の王様の娘、つまり王女様と結婚したらしいよ!それに側室が数十人もいたんだって!怖いね初代!


まぁ、初代ってあの神様達にありえないチートをつけられて魔王を瞬殺出来る勇者だから当然かもしれないな・・・


でも子供には恵まれなくて一人しか出来なかったらしい。相続争いが無くて良かったな・・・数十人全員に出来てたら恐怖ですよ。


あーでもその辺もチートでどうにかなってたのかな、というか神様のチートって受け継がれるのかね?


第八代目勇者の子孫の長男と次男は評価を聞く限りある程度はチートを受け継いでそうだったけど・・・三男の馬鹿を見る限りじゃ違う気もするしなぁ。


ちょっと神様達を呼んで聞いてみるか!



出ろぉおおお!ゴォオオオオッドガ○ダァァァ・・・



危ないっ!これは違う!もうちょっとで指も鳴らしてしまうところだった。


受付嬢がまだ長ったらしい説明してる途中に指鳴らしは駄目だよね。


何か話が逸れてるっぽいから聞き流してるんだけどさ。




~主人公の頭の中~




「「「「呼ばれて飛び出て・・・」」」」


と4つの光の玉が現れた。


「それも駄目だっ!」


というか何で知ってるんだよ、世界違うだろ。


ネタを知らない人がいたらごめんね!


「とりあえず俺から見て左端の神様だけに聞きたいんだけどさ、勇者のチートって子孫にも受け継がれてるのか?」


後の神様は当てにならない事はもうわかっている!


「呼び出したのはそっちなのにまた放置っ・・・!駄目っ!我慢できなくなっちゃう!」


と左から2番目の光が点滅しながらビクンビクンしている。


「放置キターァアア!」


無駄に輝きながらテンション高いのは左から3番目。


「俺の出番だな!」


と前に出ようとしているお前は一番右端だろ。見ようによっては左端だけどさ!俺から見て左端ってちゃんと言ってるだろ!


「そうですね・・・受け継がれるとも言えますし、受け継がれないとも言えます」


ふぅ、やっと左端が喋りだした。


「運って事か?」


「特殊な能力・・・例えば伝説の武具などは意思が宿っていますので使えるかどうかは完全に運ですね。身体能力に関する能力は素質は受け継がれていますが

覚醒するかどうかは本人の努力次第ですね。努力をすれば勝手に覚醒しますよ。まぁ、覚醒した後も努力を続けないと消えるようにしてるんですけどね。

元々勇者を作ったのも、初代勇者は家族を魔物に殺されて復讐するためにそれはもうすごい努力をしてましてね。これに能力を与えたら良い暇つぶしになるんじゃないかと思ったのが始まりですからね」


今明かされる衝撃の事実!初代勇者は復讐者だった!というか伝説の武器や防具に意思があるってのも初めて知った!


「努力をして自分を痛めつけてる人を見ると・・・ハァハァ・・・堪んないわぁっ!」


・・・努力仕様は左から2番目の神様が決めたっていうのはわかった。


「というか伝説の武具って言ってるけど作ったの神様達だよな?」


「そうですよ?やっぱり強い武具には伝説ってつけないと駄目でしょう?」


子供かよっ!


「あと努力しないと消えるって俺のチートはどうなるんだ?」


消えられたら困るどころか死ぬ自信があるぞ。


「あぁ、我々から直接与えられた能力は消えませんよ」


良かった・・・努力なんて人をおちょくる時にしかしないからな・・・


「ついでに聞くけど第八代目勇者につけたチートって何だ?」


子孫を見ちゃったから気になるよね。


「八代目ですか?八代目は確か・・・身体強化、肉体再生、カリスマでしたか?」


左端の神様が左から2番目に話しかけた。


「そう!カリスマで人の注目を集めながら戦闘で傷を受けて・・・でも身体強化されてるからすぐには死ねないし、時間が経つと傷が治っちゃうからまた見られながら傷ついて・・・か、感じちゃうっ!」


そう言って光は弱々しくなった。


「・・・もしかして勇者によってチートを与えた神様が違うのか?」


「えぇ、最初の方は全員で能力を与えてたんですが変化をつけようと言う事で色々試してたんですよ」


どれだけ暇なんだよ・・・


「わかった、色々とすまないな」


「いえいえ、何かあればまた呼んで下さい。それではまた」


「今回も放置っ・・・でもそれがいいっ・・・ハァハァ・・・」


「アイルビィバァアアアック!」


「次こそは俺の番だよな!」


うん、やっぱり左端の神様だけが頼りだな。


にしても身体強化と肉体再生とカリスマかぁ・・・


フリーザにあるのは肉体再生ぐらいか?


結構な怪我してたはずなんだけど、次の日には治ってたもんな。


まぁ、まだ魔法で治したって言う選択肢もあるが・・・


カリスマと身体強化は100%持ってないな、努力もしてないだろうし。


でも肉体再生ってどんな努力をすれば覚醒するんだ?


・・・ハッ!もしかして肉体再生のチートってボコボコにされたら覚醒するのか!?


それなら納得ができるな!ってもしかしてボア戦で覚醒したのか・・・?


まぁ、いっか。何かあっても再生する前に殺せば良いだけだ。




~主人公の頭の中終了~




「ですから、サイクォッツに行く場合は動物や魔獣に騎乗していくか、荷車に乗って引っ張っていって貰うのが普通なんです・・・って聞いてますか?」


おぉ、ちょうど話が終わったようだ。ナイスタイミング!


「あぁ、聞いてるよ。にしても動物ならわかるが魔獣を使うなんて大丈夫なのか?」


「えぇ、大丈夫ですよ。前にも言いましたが知能が高い獣は全て魔獣の扱いになりますので人が飼育出来る大人しい魔獣もいるんですよ。昨日ロック様が依頼を受けたヌンドックも大人しかったでしょう?」


でしょう?って全然大人しく無かったよっ!むしろ凶暴だったよ!


というか俺なら全力で走れば時間をかけずにたどり着くんじゃないか?


まぁ、人に見られるリスクを考えれば危険だからあんまりやりたくないんだけどさ。


「ふむ、荷車は邪魔になるから手に入れるなら騎乗用だな。騎乗用の動物や魔獣は売ってるのか?」


「はい、販売している店はこの街にありますが魔獣の方は売っているかはどうかわかりませんね。騎乗用の魔獣は人気がありますから・・・」


あぁーやっぱり魔獣は人気あるのか。まぁ行って見て魔獣が売ってなかったら走るか。


ん?動物で良いじゃないかって?動物に乗ってもつまんないじゃん!やっぱり魔獣だよ!魔獣!


っていうか騎乗するなら相棒になるわけだから気に入らなかったら魔獣でも買いませんけどね!


赤いM字帽子を被った人みたいに乗り捨てにする訳にも行かないからな・・・


「まぁ、後で行って見る。依頼は受けるから依頼人の家とその店の場所を教えてくれ」


「わかりました。では案内図を用意しますので少々お待ちください」


そして依頼人の家と店への案内図を貰う。


「あぁ、そういえば聞きたいことがあったんだ」


「何でしょうか?」


「この街の領主って冒険者ギルドに口を出せる程の権力を持ってるのか?」


これは聞いておかないとな!どこまで領主の権力があるのか気になるし!


「ありませんよ?」


ないのかよ・・・


「冒険者ギルドは完全に中立ですので、例え王様であっても理不尽な要求は突っぱねますよ」


まぁ確かにフリーザの要求も突っぱねてたしな。


「でも、どうしてそんな事をお聞きになるんですか?」


「いや、昨日領主の息子がフリーザの冒険者資格を停止してやるって言ってたのを街中で聞いてな」


嘘は言ってないよ!


「あぁ・・・あの方ですか。毎回執事さんが来ていますけど苦労しているみたいですよ」


だろうな・・・俺が執事だったら即効殴り飛ばしてる自信がある。


「まぁ、いつもの事ですので気にしない方が良いですよ」


気にしない方が良いって言ってもなぁ・・・


「市場の露店が無くなってるのも毎回なのか?」


あれのせいで俺は調味料を買えなかった・・・買えなかったんだぞぉおおおおおお!


「そうですね。みんな厄介事に巻き込まれたくありませんから・・・それに商人ギルドに所属しているならまだしも露店をやっている人は一般の人も居ますからね、目をつけられたくないんですよ」


「商人ギルドに所属してないのに露店が出来るのか?」


所属してないと商売が出来ないと思ってたよ。


「えぇ、ちゃんとしたお店を持つなら所属しないと無理ですが露店くらいは大丈夫ですよ。その代わりトラブルがあっても自己責任ですよ?

商人ギルドはギルドにある程度のお金を納める代わりに厄介事があると守ってくれたり色々と便宜を図ってくれる役割も持ってるんですよ」


なるほどなぁ。


「そうなのか、色々とありがとう。それじゃ」


「はい!ロック様もお気をつけて」


受付嬢の笑顔で見送られて俺はギルドを後にした。




――――――――――――――――




先に依頼人の家へ行くべきか、それとも魔獣を見に行くか、それが問題だ。


うぅん・・・魔獣はじっくりねっとり見たいから依頼人の家に先に行くか。


お気に入りの魔獣がいないとなったらそのまま調味料とかを買って街を出れば良いだけだし。


と言うわけで・・・



「はいっ到着しました!こちらが依頼人の・・・誰だっけ?」


渡された地図を見てみるが依頼人の名前は書いてなかった。


「また聞き忘れた・・・」


まぁ、いいか・・・案内図の位置は間違ってないっぽいし。


とりあえず依頼人の家を見てみる。


石造りで出来た家は2階建てで街の中では、中程度くらいの大きさ。


入り口に門が付いて庭もあるから依頼人は貴族か・・・?


いや、まだお金を持った一般市民という可能性も・・・


貴族だったらちょっと嫌だ。


今の所良い印象がないんだよな・・・色んな意味で。


とりあえず、門についてる小さな鐘を鳴らしてみるか。


カランカラーン。


ガチャっとドアを開けて出てきたのはメイドさんだった。


メイドさんか・・・メイドさんって何かエロスを感じるよね。


「何の御用でしょうか?」


と言いながらメイドさんは訝しげな目をしながら俺の事をジロジロと見てくる。


まぁそういう反応だよね。怪しい格好してるもんね。


「手紙配達の依頼を受けてきたんだが・・・」


と言うとメイドさんの俺を見る目がちょっとマシになった。


「依頼を受けて来てくださったんですか、ギルドカードを拝見してもよろしいですか?」


むっ、さすがメイドさん・・・簡単に信用しないな。まぁ、それくらいはするよね。


「ほら、これでいいか?」


と言ってギルドカードを見せた。


「ロック様・・・Fランクですか・・・」


何そのちょっとガッカリした顔。Fランク依頼で受けたんですけどぉ!


「Fランクの依頼だったのだが、違うのか?」


「少々お待ちください、旦那様に確認してまいりますので・・・」


・・・この待ってる時間、俺は何をすれば良いのか。




体感時間で10分くらい経つとメイドさんが戻ってきた。


待ってる時間を使って俺の妄想力がちょっと上がったZE!


何を妄想してたかって?


・・・フッ、決まってるだろ?エロい事さ!


「確認が取れましたので中へどうぞ」


メイドさんに案内されて玄関を通って中に入ると、廊下は木造でその上に赤い絨毯が敷いてあった。


金持ちっぽい雰囲気出してるなぁ・・・こんな家が自宅だと絶対に落ち着かないだろうな。


とくだらない事を考えている間に目的地についたようだ。


「それでは、こちらへお入りください」


とメイドさんが両開きの扉を開けてくれたので中へと入る。


どうやらメイドさんは入ってこないようだ。そのまま扉を閉められてしまった。


部屋の中を見回してみると、本棚が大量にある。書斎かな?


「君が依頼を受けてくれた冒険者かね」


声がした方へ顔を向けると、ダンディなおっさんが書類を積んである机の前に立っていた。


「あぁ、あんたが依頼人か?」


「そうだ、私が依頼を出した。早速ですまないがギルドカードを見せてもらっても良いかね?」


はいはい。


「これでいいか?」


「・・・やはりFランクか」


・・・メイドさんの時もそうだったんだけどさ。Fランクだと駄目なのか?Fランク依頼だったのに?そんな馬鹿なっ!


「Fランクに不満があるなら報酬を上げれば良いと思うんだがな?」


「あぁ、すまない。気に障ったのなら謝ろう。私もこの依頼はどうしても成功させたいから焦っていてね」


そんなのはどの依頼人も思ってる事だよっ!お前だけが特別じゃねぇええよぉおおお!


「だから成功させたいなら報酬を上げれば良い話じゃないのか?」


「それがそう簡単にも行かなくてね。冒険者ギルドは報酬の不当な高騰を防ぐ為に依頼によって最高額を規制しているんだよ」


ふむ、そんな事してたのか。まぁ、確かに規制しておかないと高額依頼ばかり受けるようになって一般市民の依頼を受ける奴が居なくなるかも知れないな。


「それは知らなかったが・・・そこまで大事な手紙なら自分で護衛の冒険者を雇って行けばいいんじゃないか?」


今更思い出したんだけど、これって手紙の配達だよな?入れ込みすぎじゃねぇの?


何か嫌な予感がするんだけど・・・誰か気のせいだと言ってくれよ!


「それができるならとっくにそうしている!」


「何かできない理由でもあるのか?」


「最近、周りで不穏な出来事が多くてな・・・迂闊に出歩く訳にはいかんのだよ」


当たった!嫌な予感が当たった!これは間違いなく巻き込まれるぞぉお!


「それで魔法学園に居る娘が心配になり手紙を何通か出したのだが・・・」


「届いてないと?」


「あぁ、出入りの商人に頼んでも道中で必ず襲われるらしくてな。手紙だけじゃなく荷物も全て奪われる・・・幸い命は奪われていないが、今では受け取ってもくれんよ」


「出入りの商人は護衛を雇っていないのか?」


「雇っていても倒されるそうだ。かといって雇いすぎると赤字になるからな。難しい物だよ」


ふむ、たまに襲われるならまだしも毎回襲われるなら赤字が凄い事になるな。嫌がるのも無理はないか。


「それで冒険者ギルドに依頼を出したのか」


「その通りだ」


「という事は俺も襲われるわけだ」


「だから高ランクの冒険者が来るのを期待していたのだが・・・」


「ギルドに話さなかったのか?」


そうすれば、ある程度の高ランク寄越してくれるだろ。


「あまり話を広めると、なりふり構わなくなるかもしれないからな・・・」


あぁーなるほど。


「で、この依頼を受けてくれるのかね」


受けてくれるのかねってもう受けちゃったしな。


ってかこの家に入った時点で断っても絶対に襲ってくるだろ。


「報酬をギルドとは別に貰えるのならやろう。もちろん前金でな」


襲われる事が確定してるのに3500ギルはちょっとねぇ。


「それはもちろん払わせてもらうが・・・前金だと少なくなるぞ?」


「あぁ、別に良い。後で支払われないよりマシだ」


と言うか取りに来るのが面倒です。この街に戻ってくるかどうかも分からないし。


「わかった、早速用意しよう」


そう言って机の上にあったベルを鳴らす。


チリン(ガチャッ)チリン


「お呼びでしょうか」


早っ!ベル鳴らしてる途中で入ってきたぞ!


扉の外で話を聞いてやがったな・・・


「依頼を受けてくれるそうだ、前金で報酬も出す。手紙と一緒に用意してくれ」


「かしこまりました」


そう言って出て行くメイドさん。


報酬の額を言わないって事は既に予想してたのか。


「そういえば聞き忘れていたが・・・」


「何かね?」


「襲って来る奴らの正体ってわかってるのか?」


それによって殺す殺さないの対応が変わっちゃうZE!


「あぁ、恐らく盗賊ギルドの連中だろうな」


・・・あぁー初日に相手した連中か。殺しても問題なさそうだな。


「何かやったのか?」


「前に奴らの頼みごとを突っぱねたからな」


ふーん。


「そんな事で襲ってくるのか」


「奴らはメンツを大事にするからな」


「にしても盗賊ギルドって商人の護衛を潰せるほど強いのか?」


そんなに強い印象がないんだがな。


「強さはともかく人数は多いからな。この辺りの治安はしっかりしているから高ランクの魔物や魔獣は少ない。だから護衛もそんなにランクが高くないというのも関係あるだろうな」


ふむ、確かに道中で魔物に襲われた事は無かったな。最初のゴブリンとボブの時だけだな。


まぁ、両方とも襲われてたのは俺じゃないんだけどさ。


「ふむ、あと聞きたいのは娘さんの名前と特徴だな。確認するが手紙を渡す相手は娘さんで間違いないんだろ?」


「あぁ、娘で間違いない。娘の名はレイシアと言う。これが娘の絵だ」


そう言って見せてくれた絵に描かれていたのは、かなり幼い顔をした可愛らしい女の子だった。


まぁ一番の特徴は燃えるような赤い髪ということだろう。これは目立つからすぐ探せそうだな。


にしても・・・


「娘さんって何歳だ?」


幼い顔をしていると言ったがちょっと幼すぎる。この絵の通りならロリコンさん大喜びだぞ。


「15歳のはずだが・・・」


うっそん!これで15歳!?ありえねぇよ!


「あぁ、この絵に描かれてるのは10歳の時のレイシアだぞ」


それなら見せる時にそう言えよ!びっくりしたぞ!


「すまない、びっくりさせたな。魔法学園は入学すると手紙以外のやり取りを禁じられるんだ、もちろん緊急時は別だがな。

だから入学する直前に描いたこの絵が一番、新しいんだ」


「何で手紙以外のやり取りが禁止されてるんだ?」


「出来た当初はそんな決まりはなかったらしいのだが、子供が帰省中に魔法が暴発する事故が多くあったみたいでな、

魔法をきちんと制御できるまでは禁止するようになったんだ」


あぁー、中途半端に習得してると暴発する危険があるのか。


きちんと学ぶと大変なんだなぁ・・・魔法って・・・


まぁ、『地』属性チート持ちの俺には関係ないんですけどね!


などと考えているとメイドさんが帰ってきた。


「お待たせしました。こちらが報酬と手紙になります」


渡してきたものを受け取る。手紙はちゃんと蝋で封されてるみたいだな。


っと報酬もきちんと確認しておかないとな。ふむ、大銀貨が10枚・・・1万ギルか。


Fランクに渡す額としては高い方じゃね?


「報酬と手紙は確認したが依頼達成書はどこだ?」


あれがないと依頼が達成できないよ。


「あぁ、手紙の中に同封している」


ふむ、用意の良い事で。


「入ってるのは確実なんだな?」


「あぁ、間違いなく入れてある」


これで入ってなかったら・・・ねぇ?


「ならいい。それじゃそろそろ行くが、手紙のほかに伝言でもあれば伝えるぞ?」


あぁ・・・何て優しい俺!


「いや、心遣いはありがたいが手紙に全て記してあるから必要ない」


あっ、そうですか。


「手紙に全部書いてるって奪われたら危険じゃないか?」


「それも大丈夫だ。娘以外が手紙を開封すると燃え尽きるように魔法がかかっている」


・・・え?そんな事出来るの?


「便利な魔法があるんだな」


「初代勇者が王女と文通するために作った魔法を元にしているらしいが・・・」


初代勇者・・・文通してたんだ・・・というかそんな魔法作るならワープ魔法作って会いに行けよ。


「まぁ、いい。それじゃ出発する」


「あぁ、娘の元へ何としてでも届けてくれ」


「どうかよろしくお願いします」


ふむ、メイドさんに見送られるのも悪くは無いな。と思いつつ依頼人の家を後にした。


さて、次は騎乗用の魔獣探しだZE!好みの魔獣が居るといいな!



主人公の所持金 8万1470ギル→9万1470ギル




明けましておめでとうございます。


いやぁ、週間でも1位になっていたみたいで感動しています。


その上、更新が止まっていたのにまだ日間100位に入ってるとは・・・ありがたいです。


第3話の誤字を修正しました。内容は変わってませんので・・・ご指摘感謝。


今年もよろしくお願いします。

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