第1話
目が覚めたら目の前に知らない爺がいて俺の顔を覗いていた。
「おっ、目が覚めたかのぅ」
「・・・オラァッ!!」
怖いのでとりあえず殴っといた。
「こ、こりゃ!何をするんじゃ!」
クッ!流石に寝ながらの体制だと当てられないか!
「目が覚めて知らない爺が目の前にいたら誰でも殴るだろ!」
「そんな訳あるか!今まで何人かここに来たがお主みたいな奴は初めてじゃ!」
ん・・・?何人もだと?
「何人もってどういうことだ?っていうか、そもそもここはどこだ?」
そう俺と爺がいるのは真っ白い何も無い空間だったのだ。
そして、その質問を待っていましたというばかりに爺がニヤニヤしたのがむかついたのでもう一発殴ってみる。
「フンッ!」
パンチが顔面に吸い込まれていくのを確認してよしっ!と思うが殴った感触がなかった。
「フッ・・・残像じゃよ!」
慌ててうしろを振り返ると爺がまたニヤニヤしていた。
「なん・・・だとっ!?」
その後も何発か拳を振るってみるも全部避けられた・・・どうやら俺には爺を殴ることができないらしい。
悔しかった・・・まぁ電器のヒモボクシングしかやってないから当然な気がするが・・・
「まぁ、お遊びはここまでにして話を聞こうか」
「お主から仕掛けてきておいてよく言うわ!」
「ははは、何を言ってるんだこの爺は」
「はぁ・・・まぁいいわい・・・まぁお主がなぜここにいるのかと言うと、お主は死んだのじゃよ」
「ふぅん、まぁ予想通りっちゃ予想通りだな」
「ほぅ、あっさり受け入れたの・・・」
「まぁいつ死んでもおかしくない生活をしてたからな」
そう、俺は俗に言う廃人ゲーマーだった。
常に部屋に引きこもり外にはたまに食料と飲料補充に出かける程度である。
もちろんゲームに集中するあまり飲まず食わずの日も結構あった。
こんな生活を続けていれば死ぬのは時間の問題だっただろう。
あっ、ちなみに引きこもり費用は宝くじで1千万当たったからそれをやりくりしてたよ!
親に迷惑はかけてないんだから・・・かっ勘違いしないでよねっ!
「で、俺が死んだのはいいけど爺は何者だよ?」
「わしは神じゃ」
「ふぅ~ん」
「信じておらんな!」
「いや、信じる信じないじゃなくてさ、俺に何の用だよ。ってか神様って死んだ奴にわざわざ会いに来るほど暇なの?」
「そんな訳あるか!これでも忙しい中、時間を確保して会いに来てやったんじゃぞ!」
「はっ!まさか俺の体があまりにも魅力的だったからか!?」
「いや、わしの好みはもっとこうムチムチっとしたお姉ちゃんの方が・・・って何を言わせるんじゃ!」
「ノリノリだな爺」
「わしも色々とストレスが溜まっておっての・・・」
「爺も苦労してるんだな、んでそんな忙しい中わざわざ俺に会いに来たって事は何か重要な事なの?」
「いや、それがの、非常に言いにくいんじゃが・・・」
「なんだよ、はっきり言えよ。俺と爺の仲じゃないか」
と言っても会ってから20分も経ってないんだけどね。
「じつはの、異世界に行って欲しいのじゃ」
ほう!テンプレだな!
「理由は聞いても?」
「・・・・・・じゃ」
「ん?何だって?」
「・・・暇つぶしじゃ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「フンッ!」
俺は再び爺に殴りにかかる。
「重要な話と思って真面目に聞いてれば暇つぶしだと!ふざけんじゃねぇぞ爺!」
「ち、ちがうんじゃ!話を最後まで聞いてくれ!」
避けながら必死に言い訳をする爺。
「分かった、とりあえず言い訳を聞いてやろう」
結局どれだけ殴ろうと思ってもやっぱり爺には当たらないから爺の言い訳を聞くことにする。
「暇つぶしをしたいのはわしではない別の神なのじゃ」
「ん?なら何で直接その神様が来ないんだ?爺ってもしかしてかなりしょぼい神様なのか?」
「違うわ!わしはこれでもこの世界で一番えらい神じゃぞ!」
「ならなんで直接その暇つぶしをしたい神様が来ないんだよ」
「それはのぉ・・・異世界の神だからじゃ。この世界におる神なら用があれば直接言いに行くじゃろうよ」
「異世界の神ねぇ・・・同じ神の爺は忙しいのにその異世界の神は暇なのか?」
「管理の仕組みが違うからの、わしは一人で全部管理しておるがあっちは分担で管理しておるのじゃ」
「なら爺も分担にすればいいんじゃねぇの?」
「それがの・・・わしと同程度の神がいればそれもできるんじゃが同程度の神がいないのじゃ」
「あぁ~ということは異世界は最高ランクの神様が何人もいるのか」
「そういうことじゃの、実に羨ましいかぎりじゃ・・・」
「まぁ、理由は納得できたけどさ何で俺なのよ?別に暇つぶしなら大道芸人とかでもよくね?」
「いや・・・その異世界には魔法が普通に存在する世界での。魔法を使って面白い事をしてくれそうな奴を送ってくれと言ってきたのじゃ」
「それって爺が従う必要あるのか?」
「いや、その・・・まぁ・・・」
「何だよ、何か従わなきゃいけない理由があるのか?」
「賭けで負けちゃっての・・・てへっ」
「ソイヤッ!」
と拳ではもう駄目だと思った俺は股間の急所めがけて蹴りを放つ。
「あぶなっ!」
とまたも見た目に似合わない動作でよける爺。
「チッ、やっぱり当たらないか」
「股間は駄目じゃろ!股間は!」
「うるせー!賭けに巻き込まれる俺の身にもなってみろや!」
「いやいや、まさかあそこでロイヤルストレートフラッシュが来るなんて誰にも予想できんじゃろ」
「ポーカーかよ!爺も絶対暇人だろ!ってか神様ならそれくらい予想しとけよ!」
「わしの手札はストレートフラッシュじゃったんじゃぞ!勝てると思うじゃろ!」
「知るかボケェ!・・・ついでに聞いておくが爺が勝った場合は何がもらえたんだ?」
「ムチムチした秘書のお姉ちゃんじゃ!」
「爺・・・本当に神様なのか?」
「仕方ないじゃろ!わしも癒しが欲しいんじゃ!ワシの秘書どもは全員男で癒しがなくていかん!」
「はぁ・・・もういい・・・でも魔法がある世界ならこっちの世界に比べて色々な事が出来そうだし、わざわざ異世界人を呼ばなくても住民に適当に力を与えれば暇にはならないと思うが」
「いやいや、試しに魔王とか勇者を作っても毎回同じような展開でつまらないんじゃと、だから異世界から人材を送ってくれと言ってきたわけじゃな」
「あれ?今まで何人か送ったんじゃねぇのか?ここに来たのって俺が始めてじゃないんだよな?」
「あぁ、そこの異世界は初めてじゃよ。他の異世界には勇者召喚とか魔王召喚の儀式で送った事はあるがの」
「ふぅん、他の異世界に送った奴らも爺が賭けで負けて送ったのか?」
「いいや、そもそも他の異世界から人を呼び寄せるにはちゃんとした理由がないと駄目なのじゃ。それが勇者召喚や魔王召喚の儀式というわけじゃな。
それも安易にできると言うわけでもなく神が世界を作る時に他の異世界から召喚するよーって決めておかないとできないのじゃ」
「つまりその異世界では決めてなかったと?」
「そういうことじゃな、決めておけばよかったとかなり後悔しておったようじゃぞ」
「なるほどなぁ、で賭けの対象にして送ってもらおうって考えて爺はまんまと負けたと」
「その通りじゃ!」
「でも送っても大丈夫なのか?ちゃんとした理由がないと駄目なんだろ?」
「一人くらいはどうにかなるじゃろって感じじゃな、それに召喚の儀式と違って死んだ人間を送るわけじゃしな」
「適当だなおい!」
「神なんてそんなもんじゃ!」
「そんなハッキリと断言する事かよ・・・」
「まぁ、これで成功すれば他の召喚の儀式がない異世界からもお主は呼び出されるじゃろうな。」
「何で俺だけ!?他にもいっぱいいるだろう!?」
「だってこれ以上わしの世界の人間を減らすわけにはいかないしぃ、召喚の儀式がある異世界からの呼び出しでかなり減ってるのに
召喚の儀式がない異世界からも呼び出されたらたまったもんじゃないわい」
「てめぇが賭けの対象にするのが悪いんだろうが!ってか何でこの世界から召喚される奴が多いんだよ!他の世界からも呼び出せるだろうが!」
「この世界から召喚された人間のハプニング率が異常に高いから人気があるのじゃよ。ご指名率ナンバーワンじゃな」
「なにその理由!?ハプニング率が高いから呼び出されるってどれだけハプニング期待してるんだよ!?」
「この世界から呼び出された人間はこの世界にある漫画みたいな展開が日常的に起こるらしいぞい」
「逆に怖いわ!ってか俺もそうなるのか!」
「死んだ人間を送るのは初めてじゃからなぁ、どうなるかわからんわい」
「もういい、何か疲れたわ・・・そういや死んでる俺の肉体は再構成されるのか?それとも転生して赤ん坊からやり直すのか?」
「多分再構成じゃろうな、赤ん坊から見てるなんてそんなの待ちきれない!って言ってたからのぉ」
「おいおい、今まで数億年単位で見てきたんだろうが・・・十何年くらい我慢しろよ・・・」
「まず無理じゃろうな、勝負の日以降まだ来ないのか?まだ来ないのか?ってずっと言われておるからのぉ」
「何その期待感・・・ものすごいプレッシャーがかかるんだけど」
「まぁ気にする必要はないじゃろ」
気にするだろ普通・・・だがどうにかしようにも、どうしようもないしな。それより色々な事聞いておこう。
「他にも聞きたいこと色々あるんだけど爺の時間は大丈夫か?」
「うむ、もうしばらくは大丈夫じゃ。まぁ、わしに聞くより向こうの神に聞いた方が良い気がするがの」
「それは駄目だ、多分向こうの神様は話を聞く前に放り出される」
「それはさすがに・・・ありえる話じゃの」
「だろ?だからとりあえず爺に聞いておく」
「わかる範囲であれば答えてやろう」
「まず異世界召喚にありがちなチート能力はもらえるのか?」
「何か希望があるのかの?あればわしが異世界の神に言っておこう。ただし不死は駄目じゃぞ、死がないと他の異世界に送れないからの」
「あぁ、不死になる気は別にない。命を失う危険性がないと見てる神様もつまらないだろうしな。不老は大丈夫なのか?」
「うむ、不老なら大丈夫じゃの。しかし良いのかの?不老だとひとつの場所に何年も留まる事は難しくなるぞい?」
「あぁ、いいよ別に、そこら辺は上手くやるから。あとは異世界言語の習得だな、もう使われてない古代言語とかも含めてくれると嬉しい、もちろん読み書きできるレベルでな」
「ふむ、言語の方はデフォルトで向こうの神がつけてくれるじゃろ。しかし使われてない古代言語まで必要かの?」
「遺跡とか探索した時に役立つだろ?それに大体の伝承とか言い伝えって途中で権力者に都合の良いように捻じ曲げられてるからな、古代に書かれた書物などを読む事で真実を知る事ができるかもしれない」
「意外と勤勉なのじゃな」
「ちげーよ!それを元に矛盾点をついて人をおちょくるためだよ!俺は人をおちょくるためならどんな努力も怠らない!」
「お主、いい性格をしておるの・・・選んで正解じゃったわい。じゃがそれなら最初から全知識を詰め込んだ方が早い気がするがの」
「わかってねーな爺は・・・俺だって知る楽しみが欲しいんだよ!最初から全部を知ってるなんてつまらないにもほどがある」
「なるほどのぉ、他に要望はあるかの?」
「あとは肉体強化と魔力強化くらいか」
「ふむ、肉体強化はまぁ当然じゃろうな、すぐ死なれてもつまらんだろうし。魔力に関しても相応な量を与えられるじゃろ」
「魔法の属性はどうなってるんだ?」
「確かあの異世界の基本属性は『火』『風』『水』『地』『光』『闇』だったはずじゃ、もちろんこれにあてはまらない系統の『時』や『創造』も一応存在するがの」
「じゃあ『地』属性だけで特化してくれりゃいいや、あとはいらない」
「『地』属性だけでいいのか?それにしても『地』属性とはまた不人気で地味な属性を選んだのぉ、こういう時は『光』『闇』もしくは『創造』を選ぶ奴が多いんじゃが・・・」
「爺!『地』属性は最強ではないかもしれないが最高なんだよ!それを俺が証明してやるよ!」
そう・・・俺が考えるに『地』属性は最高の属性なのだ・・・俺がやってたゲームの中でも攻撃が地味で空を飛ぶ敵には役に立たないと言う理由で人気も無く誰も使いたがらない属性だった、
だがそれでもある程度の強さや補助魔法もあるのでソロゲーマーの俺にはピッタリな属性だったのだ、そこから考えるに多分、異世界でも人気が無い属性だと思う。
もしここで全属性とか特殊な属性を選ぶと間違いなく目立ってしまう、それは良くない。偉い人に目をつけられると自由が無くなるからな、それは非常に困る。
俺は自由が好きなのだ、自由最高!フリィイイイィイダァアアアアアアアム!!!
おっとテンションがおかしなことになってしまった・・・落ち着こう。
「まぁ、お主がそれでいいなら、わしは何も言わぬよ」
「信じてねぇな爺・・・まぁいいや。とりあえず能力はそれだけでいいや」
「よし、あとは何か質問はあるかの?」
「そういや種族ってどうなってんの?そこまで暇をもてあましてるなら知能が高い生物って人間だけじゃないよな?」
「うむ、例をあげるとキリがないくらいの多数の種族がおるからそこはお主が直接確かめてみるとよいぞい」
「それもそうだな、聞きたい事はこれくらいかな。」
「うむ、それではお主を異世界に送るとしよう。この扉をくぐればそこはもう異世界じゃ」
と言い爺がどこぞの青狸が出してくるようなショッキングピンクの扉を出してきた。
「・・・パクったのか?」
「わしがオリジナルじゃ!あいつはわしが育てたのじゃ!」
もう駄目だこの爺、はやくどうにかしないと・・・
「色々とありがとうな爺。最後に握手させてもらっていいか?」
「うむ、いいじゃろう」
と言い右手を出してきたので俺も右手を出す。
「オラァッ!!」
そしてにこやかに握手をした瞬間に爺の右手を引き寄せてあいてる左手で爺の顔面を殴る。
「ゴフゥッ!」
俺の最後の作戦は見事に成功した!利き腕じゃないから威力が弱かったのが悔いに残るがまぁいいだろう!
「ようやく一発入ったか!それじゃ元気でな爺!」
蹲ってる爺を放置してさっさと扉をくぐる俺。
「この小童めがぁあああぁ・・・」
という爺の最後の叫びが聞こえたが俺にはどうでもよかった。
初小説です。その場のノリと勢いで書いてるので矛盾や違和感があるかもしれません。
生暖かい目で見守ってください。よろしくお願いします。