第06話:「コラボの命令」
【朝・ソラの部屋】
空気清浄機が回る音だけが響く。
私はスマホを握りしめたまま、
凍りついていた。
《Kaito〔スターダスト〕からメッセージ》
▽ Kaito〔スターダスト〕新着
無視? いい度胸じゃん
お前のとこの「魔王設定」、
全部バラしてもいいんだぜ?
CG合成だって
10時。黄昏の廃坑。遅刻厳禁。
――脅迫
逃げ道はない。
行かなければ、私のチャンネルは潰される
行っても、ただの引き立て役にされるだけ
吐き気がする
指が震えて、文字が打てない
――――スッ
横から、白い手が伸びてきた。
スマホが奪われる。
ソラ:
あ……
ティアグラ:
……朝からうるさいな、この板は、、、
ティアグラが画面を覗き込む。
ゴスロリ衣装〔寝巻き代わり〕
眠そうな目が、メッセージを見た瞬間――
――スンッ
細まった
温度が消えた
ティアグラ:
……ほう。
『命令』か。
この私(の所有物)に対して。
スマホの画面に、
――ピシッと亀裂が入る(>_<)
ソラ:
ひゃっ!?
わ、割れます⚡️⚡️⚡️
私の唯一の商売道具が(× × )
ティアグラ:
ふん。
ティアグラは私にスマホを放り投げた。
そして、優雅に髪をかき上げる⭐︎彡
⭐︎ 彡
⭐︎ 彡
⭐︎ 彡
ティアグラ:
行くぞ、ソラ。支度をしろ。
ソラ:
え……?
行くって、コラボにですか?
だ、だめです! あの人たちは……
私を捨てた人たちだ。
Sランクの強者だ。
何をされるか分からない。
ティアグラ:
ソラ。
低い声。
私の肩がビクリと跳ねる。(*º ロ º *)!!
ティアグラが、私の頬に手を添えた。
――冷たい手
でも、瞳には灼熱の焔が見えた
ティアグラ:
お前は誰の所有物だ?
ソラ:
え……
ティアグラ、
さんの……
ティアグラ:
そうだ。
私のものに手を出そうとする
――愚か者
がいるなら、
躾が必要だろう?
――ニヤリ( ̄▽ ̄)
凶悪で、そして最高に美しい笑み
ティアグラ:
顔を見に行こうか。
その『カイト』とやらが、
どれほどの絶望に耐えられるのか。
……ゾクリとした
カイトへの恐怖じゃない。
この魔人の「本気」に対する、
畏怖と
――期待。
私は震える手で、
メッセージを返した。
分かりました。行きます。[送信]
◇
【中級ダンジョン「黄昏の廃坑」・入り口】
午前9時55分。
集合場所には、
すでに人だかりができていた。
Sランクパーティ『スターダスト』
最新鋭の魔導アーマー
取り巻きのファンたち
そして、
カメラクルー
(専属スタッフ)
私とは住む世界が違う
圧倒的な
「勝ち組」の
『オーラ』
足がすくむ
帰りたい
――その時
私の背中が、
トンと押された。( ˙ㅿ˙ )
ティアグラ:
胸を張れ。
お前の後ろには、私がいる。
白いゴスロリドレス。
足元には、モフモフの子犬〔フェン〕
場違いなほど優雅に、
ティアグラが歩き出す。
ざわっ……
ざわっ……
ざわっ……
ざっわ…… …… ……っ
周囲の視線が集まる。
――おい、あれ……
――今バズってる
『魔王コス』の女じゃね?
――うわ、顔ちっさ
――本物だ……すげえオーラ
カイトたちが、こちらに気づく。
リーダーのカイト。
そして、その腕に絡みついている
ピンク髪の少女――
――ルナ。
カイト:
ようソラ。遅えよ。
見下ろす視線
変わらない
――
――
――あの雨の日と同じ
ルナ:
あ〜っ! ソラせ・ん・ぱ・い!
お久しぶりでぇ〜す!
ルナが駆け寄ってくる。
甘ったるい
――香水の匂い。
ルナ:
すごぉい、新しい装備ですかぁ?
……あ、でもそれ、
『型落ちのセール品』
ですよね?
ドンキで見ましたぁwww
クスクスと笑う。
悪意の
――ジャブ。
言葉が詰まる。
言い返せない。
ルナの視線が、ティアグラに移る。
ルナ:
で、こっちが噂の
『魔王ちゃん』?
へぇ〜
『近くで見るとメイク濃いですねぇ』
あ、
そのツノ触っていいですかぁ?
遠慮なく手を伸ばすルナ。
ティアグラの「本物の角」へ。
――ピキッ⚡️
空気が凍った
・・・
ティアグラ:
……気安く触るな。
冷徹な声
ルナの手が、空中で止まる。
ティアグラ:
その薄汚い手を、私の視界に入れるな。
切り落とされたいか?
――殺気。
――ただの一睨みで、
――ルナの顔が
――引きつる。
本能的な恐怖。
生物としての格の違い。
ルナ:
ひっ……!?
後ずさるルナ。
カイトが眉をひそめて割り込む。
カイト:
おいおい、挨拶代わりに脅しかよ?
なりきりも大概にしろって。
……ま、いいわ。
カイトはカメラマンに合図を送った。
カイト:
時間だ。
配信始めるぞ。
今日の企画は『新旧メンバー交流戦』だ。
ソラ、お前は前衛な。タンク役やれ。
ソラ:
えっ……?
私、隠密スキルしか……
カイト:
あ? Fランクが口答えすんなよ。
俺らが後ろから魔法で援護してやるから。
……感謝しろよ?
Sランクの俺らと組めるんだからな。
ニヤニヤと笑う取り巻きたち。
拒否権はない。
これは「コラボ」じゃない。
「公開処刑」だ。
私は拳を握りしめる。
また、こうやって搾取されるのか。
でも。
ティアグラ:
……ソラ。
頭の中に、声が響いた。
《念話》
ティアグラ:
(今は従っておけ。
……舞台は、深いほうが面白い)
横目でティアグラを見る。
彼女は、カイトたちを見ていなかった。
道端の石ころを見るような、
無関心な目で――
しかし、
口元だけが三日月のように歪んでいた。
(絶望の準備はいいか? 人間ども)
そう聞こえた気がした
《配信を開始します》
カメラのランプが赤く点灯する。
最悪で、最高の「復讐劇」の幕が上がる。
(第6話 完)




