第05話:捨てられた囮の悪夢
《WARNING》
《WARNING》
《WARNING》
《クエスト更新:緊急任務》
[難易度:A (推奨Lv.60〜)]
《⚠ WARNING : MASS OUTBREAK》
[BOSS] アビス・ドラゴン ... 1
[MOB] キラー・ビー ....... 50
[ Total Threat: S (Catastrophe) ]
【コメント欄】
: うわあああああああ
: 終わった
: 逃げろ!!!!
: いや無理だろこれ
: 無理っぽ
: ピーンチ
: 荷物持ち(タンク)の出番だぞ
――痛い
――熱い
――息ができない
泥水を蹴る。
背後から、鼓膜を破るような咆哮。
カイト:
おいソラ! お前が引きつけろ!
ルナはまだ慣れてねえんだよ!
俺が連れて逃げるから、お前が時間稼げ!
ソラ:
うん。わかった。やってみる。
気をつけてね。カイト。私は平気だから…
――私が囮になって引きつけなきゃ
みんなのために
カイトのために
ソラ:
はぁ、はぁ、はぁッ……!
カイト……ッ!
よかった……無事、だったんだね……!
カイト:
……はぁ?
なんで戻ってきてんの?
「時間稼げ」
って言ったよな?
それ、
『死ぬまで足止めしろ』
って意味なんだけど。
中途半端に生き残って戻ってくるとか、
マジで空気読めねーな。
だからお前は「無能」なんだよ。
ルナ:
カイトく〜ん、行こぉ?
ゲート閉まっちゃうよぉ?
ここ空気悪いしぃ。
カイト:
だな。
あいつがいると、空気まじ悪いよなぁ。
――ガシャン。
二人はゲートの奥へ消えた。
私には目もくれず。
まるで、
最初からそこに居なかったかの様に。
――プシューッ
無機質な音を立てて、扉が閉まる。
待って……
声が出ない。
追いかけられない。
置いていかないで……
私は、無価値だ
才能がない
誰からも必要とされない
寒くて
暗くて
惨めで
◇
【現在・ソラの部屋】
「――ッ、はぁ、はぁ、はぁッ!!」
――ガバッ
飛び起きる。
全身、汗びっしょり。
心臓が早鐘を打っている。
夢……
最悪の目覚め。
震えが止まらない。
まだ、あの雨の冷たさが肌に残って……
「……うるさいぞ、ソラ」
不意に。
温かい何かに包まれた。
え?
目の前には、水色の髪。
ティアグラが、私を抱きしめていた。
背中を、
(´・ω・)ノ゛ポンポン
と一定のリズムで叩いている。
ソラ:
あ、ティアグラ……さん……?
ごめんなさい、起こして……
ティアグラ:
謝るな。
……泣いていたのか
指先で、頬を拭われる。
濡れていた。
ソラ:
……怖い夢、見たんです。
昔、仲間に捨てられた時の夢……
言葉が溢れる。
誰にも言えなかった、惨めな過去。
ソラ:
私、弱くて……才能なくて。
装備も剥ぎ取られて、
ゴミみたいに捨てられて。
……だから、今も怖いんです。
いつかまた、
全部失うんじゃないかって……
言ってしまった
最強の魔神に、こんな弱音
きっと呆れられ
幻滅される。
そう思って、身を縮こまらせた時
――ギュッ
抱きしめる力が、強くなった。
ティアグラ:
……馬鹿な連中だ。
耳元で、静かな怒気を含んだ声。
ティアグラ:
見る目のない節穴どもめ。
才能がない? 笑わせるな。
ティアグラが私の顔を覗き込む。
紅い瞳が、真っ直ぐに私を射抜く。
ティアグラ:
お前は、この私を見つけた。
三百年間、誰も到達できなかった深淵で、
私を拾い上げた。
その『運』と『逃げ足』は、
どんな剣技よりも価値がある。
ソラ:
……っ
ティアグラ:
胸を張れ、ソラ。
お前は、最強の魔神のオーナーだぞ?
お前を捨てた雑魚どもなんぞ、
私の指先一つにも値しない。
温かい
体温が、凍りついた記憶を溶かしていく
ソラ:
……私、ティアグラさんの隣にいて、
いいんですか?
ティアグラ:
許可する。
というか、離れることは許さん。
ティアグラがニヤリと笑う。
意地悪で、傲慢で、最高に頼もしい笑顔。
ティアグラ:
安心しろ。
もしその
『元仲間』
とやらが目の前に現れたら……
私が、絶望というものを教えてやる。
その言葉は、予言のように響いた。
足元で、フェンが
「ワフッ」
と同意するように鳴く。
涙が止まる。
震えも、消えていた。
ソラ:
……はい。
おやすみなさい、ティアグラさん。
私はもう一度、
温かい腕の中へ潜り込んだ。
今度は、
悪い夢は見ない気がした。
――翌朝
その「予言」は、最悪の形で現実となる。
――ブブッ
スマホの通知音。
画面に表示された名前を見て、
私の血の気が引いた。
《Kaito〔スターダスト〕からメッセージ》
▽ Kaito〔スターダスト〕新着
コラボ、してやんよ。
明日の10時、
中級ダンジョン「黄昏の廃坑」な。
拒否権ねーからw
悪夢の続きが、始まった。
(第5話 完)




