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第02話:最強魔神の押しかけ女房

【ダンジョン・最深部(崩落現場)】




 ――バズっている




 私のスマホの中で、


  見たことのない数字が踊っている





 (視聴者数:1800 ↗)




 夢?



 いいや、現実だ



 目の前にいる、

  この規格外の美少女のおかげで



ティアグラ:

 ふむ。


 人間どもは、

    私がピース (*^^)v

        をするだけで喜ぶのか?


 チョロいな。



ソラ:

 (チョロいのは私です……!)


 あ、あの、ティアグラさん。


 そろそろ配信切ってもいいですか?


 バッテリーが……



ティアグラ:

 ん?


 ああ、好きにしろ。


 それよりソラ。


 もっとないか?


      さっきの『エネルギー』



 ――少女が私のポケットを漁る


   ――距離が近い


     ――甘い匂いがする



ソラ:

 あ、えっと、もうないです。


  地上に戻れば、

   もっと美味しいものが

    ありますけど……



 言った瞬間、空気が凍った。




 ――ピタリ




 ティアグラの手が止まる。


   後ろの巨大狼フェンも、


     ビクリと耳を立てた。



ティアグラ:

 ……地上?

 外、か。



 紅い瞳が、遥か頭上――

   崩落してきた穴を見上げる。




 そこには、分厚い岩盤と、

  何重にも張り巡らされた――



 『封印術式』の魔法陣が見える。



ティアグラ:

 ここを出られるのか?


 私は、三百年前にここに封印された――



 『災厄』だぞ。



ソラ:

 えっ……


 (設定じゃなくて、ガチのやつ!?)


 あ、いや、私はただの配信者なんで、


  封印とかは解けな……



ティアグラ:

 ――そうか。


 『もっと美味いもの』が、あるのか。



 ――ドクン…


   ――魔力が膨れ上がる。


     ――空気が歪む。


ティアグラ:

 なら、話は早い。


 少女が右手を掲げた。



 ただ、それだけ。







 ――パチン







 指を鳴らす音。



 ――ドゴォォォォォォォ

   ――ォォォォォォォォォ

      ――ォォォォォォォン!!!



 ――閃光


   ――衝撃波


      ――轟音


 目を開けると、天井がなくなっていた。



 いや、岩盤も、封印魔法陣も、


  すべてが――



 『消滅』して、



 青空が見えていた。



 ( ゜д゜) ・・・



 開いた口が塞がらない。



 これ、ダンジョン崩壊レベルでは?



ティアグラ:

 ふぅ。



  久しぶりのシャバの空気だ。



    行くぞ、ソラ。案内しろ。



ソラ:

 は、はいぃぃッ!!



 (逆らったら死ぬ!)




 ――が、問題発生。



フェンリル:

 グルルルゥ…… (ᐡ⸝⸝o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅⸝⸝ᐡ)




 フェンが悲しそうな声で鳴いた。 




ソラ:

 あ。




 デカすぎて、穴通れませんね……




 バス・サイズの狼――



 どう考えても地上で運用できない。

   自衛隊が出る((((;゜Д゜))))ガクガク



 通報不可避――


 



ティアグラ:

 ――チッ




 面倒だな。

 おいフェン。




 >縮め<




フェンリル:

 ワンッ!




 ――ボンッ


 ……白煙が上がる.。oO


 煙が晴れると、そこには――



 モフモフの、


 真っ白な


 大型犬(ミ ´•ㅅ•`ミ)がいた。





 それでもゴールデンレトリバーより


  二回りデカいけど……




ソラ:

 か、かわいい……!

 縮めるんですね!



ティアグラ:

 質量保存の法則を無視した高等魔法だ。


 感謝しろよ、駄犬。


 よし、行くぞ。



 ティアグラが私の腰を抱く。

 ふわりと体が浮いた。



 ――飛行魔法。


  私たちは光の矢となって、


   ――地上へと飛び出した。



【ソラの自宅・1DK】

 築40年。家賃3万5千円。

 万年床と、配信機材だけの部屋。



 そこに、異物が混入している。



ティアグラ:

 狭いな。

 私の封印牢より狭いぞ。



 ボロボロのドレス姿の美少女が、


  私の布団の上に鎮座している。


   足元には、巨大なモフモフ(フェン)


    が丸まって寝ている。



 部屋の占有率がヤバい。



ソラ:

 す、すみません……底辺なもので。


 あの、とりあえず服、着替えます?


 そのドレスだと目立つので……





 私はクローゼット(ただの段ボール)

  から、比較的マシな服を取り出した。




 黒のパーカーと、

 ショートパンツ。




 いわゆる「地雷系」っぽいコーデ。



ティアグラ:

 ほう。現代の防具か。


 生地が薄いが、動きやすそうだな。





 ――バサッ


  ――ティアグラが躊躇なくドレスを


   ――脱ぎ捨てた。

 



ソラ:

 ひゃああああっ!? 


  (――下着、着てないの…)


   ちょ、ちょっと待ってください!!


    ――目のやり場が!!



ティアグラ:

 ん? 何を慌てている。


 同性だろう。


 それともソラ、お前……



 ティアグラがニヤリと笑い、

  全裸のまま私に近づく。



 ――壁ドンッ!


 ――近い 

   ――白い 

     ――いい匂い



ティアグラ:

 私の体に、興奮したか?



ソラ:

 し、してませんッ!!


 (嘘です。ちょっとしました)


 とにかく着てください!



 顔を真っ赤にしてパーカーを押し付ける。



 ティアグラは


 「うぶな奴だ」


 と笑いながら袖を通した。



 ……悔しいけど、似合う



 ダボッとしたパーカーから伸びる、

  白くて細い足。




 魔性のアピール力がカンストしている。




ティアグラ:

 で、ソラ。



 約束の『美味いもの』はまだか?



 あぐらをかいて催促

 完全に我が家の主だ



ソラ:

 あ、はい。今ウーバー頼みます。



 (今月の食費……さよなら)



 スマホを操作する。

 と、通知が止まらないことに気づく





《SNS通知:99+》

《チャンネル登録者数:2000人突破》

《DMが届いています》






 ――バズってる






 まだ夢じゃない

  さっきのアーカイブ、

   切り抜き動画が拡散されている 







【速報】底辺配信にガチの魔神降臨w

【神回】この美少女は何者か!?

【特定班】場所は始まりの洞窟最深部か?





ソラ:

 すごい……


 一晩で、登録者が千人も増えてる……


 震える手で画面を見つめる私。



 その背後から、


   ティアグラがぬっと顔を出した。


     アゴを私の肩に乗せる。





 ――重いけど、


   ――嫌じゃない




ティアグラ:

 ほう。人間どもが騒いでいるな。


 ――かわいい』


 ――尊い』


 ……ふん、語彙のない連中だ。



ソラ:

 ティアグラさんのおかげです。


 ありがとうございます。



ティアグラ:

 礼には及ばん。


 お前は私に飯を食わせる。


 私はお前の『数字』を稼ぐ。


 ……共犯関係、というやつだろ?




 耳元で囁かれる

 ゾクゾクするような低音


ソラ:

 共犯……





ティアグラ:

 そうだ。



 私は退屈を殺したい。



 お前は現状を変えたい。



 利害は一致している。



  ティアグラが私の手を取り、



   指を絡ませる。




 いわゆる、――恋人繋ぎ




ティアグラ:

 契約成立だ、ソラ。



 私の世話係オーナー



 せいぜい私を楽しませろよ?





 ――ピンポーン




 インターホンが鳴る。


 ウーバーだ




ティアグラ:

 来たか!


 私のメシ



 パッと手を離し、


  玄関へダッシュする魔王様。


   フェンも


    「ワフッ!」


      と起きて後を追う。


 ……取り残された私


  まだ、手のひらに熱が残っている


 契約、しちゃった


   人類の敵と


 でも


  スマホを見る


   増え続ける数字


    溢れるコメント





 「一人じゃない」





 そう思えたのは、いつぶりだろう




 こうして


 私と、最強の魔神と、デカい犬の


 奇妙な

     『同棲生活』

            が始まった。


(第2話 完)

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