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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
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9.ボアアーノに到着

ググマップではモモンガの足で30分程で着くとされていたが、実際には1時間15分くらいかかってしまった。だが、無事にボアアーノに到着できた。よかったよかった。


ボアアーノは、立てた丸太を横に並べた塀に囲まれているようだ。削りたての鉛筆のように鋭くなっている先が、丸太が三重になっていることを教えてくれている。


『やったー』

『よっしっ』


あ、ダオちゃん、野太い声を重ねてしまってごめん。だから、不思議そうな顔で見ないで。可愛い可愛いモモンガさんが、おっさんみたいで本当に申し訳なかったけど、ググマップが正確だって分かって安心したの。お願いだから、「そんな声出るの?」って瞳をキョトンとさせないで。


もうここは、何食わぬ顔で首を傾げよう。「え? 私かな? 私だったかな?」ってシラを切ろう。だって、私は前世も今世も女の子で、決しておっさんではないのだから。大丈夫。


「ダオか? どうして村の外にいるんだ?」


斜め後ろから戸惑い気味の声が聞こえ、ダオちゃんと同時に振り返った。正確に伝えるなら、ダオちゃんが振り返ったから、背中に座っている私もそっちを向いたになる。


そこには、明らかに動揺している熊獣人の男性が居た。可愛い熊さん耳が頭にあり、少し長めの茶色の髪・焦茶の瞳を携えている面持ちは厳つくて、体は恰幅がいい。脇に狐のような生き物を抱えていることから、狩りに行ってきたんだろうと予想できた。


『クークーだ!』


「どうして村の外に? モモンガ? あれ? ダオだよな? どうして?」


なんかすっごい狼狽えているけど、もしかしてピボノーアが塀の外に出ることはないの? 2回も言ったもんね。「どうして村の外に」って。


『クークー、一緒に帰ろう』


ダオちゃんがクークーという男性の周りをご機嫌で走ると、クークーさんはハッと体を揺らし、朗らかに微笑みながらダオちゃんの頭を撫でた。怖い印象だったが、笑うととても可愛らしい人だった。


門らしきモノが無いから、こっちは裏側なのかも。あ、でも、広そうだから、いざという時のために裏門はありそうだよね。だったら、ここは側面なの……は? へ? ほ? はぁぁぁ!? ※混乱したら語彙力ってなくなるよね。


ちょ、ちょっと! クークーさんが、丸太塀の1ヶ所に指を引っ掛けたのよ。で、腕を横にスライドさせたら、引き戸のように丸太が動いたの。


三重だったよね? 1人の力で動くものなの? いや、そもそも観音開きじゃなくて、スライドするってどういうこと? 地面にブッ刺さってんじゃないの?


え? 地面に穴が無い? 固定してなかったら、塀の意味ないよね? いや、そもそもスライドの跡さえ無いわ……


異世界こわっ。意味不明すぎてこわっ。


ちなみに、このモモンガさん、驚きすぎて開閉の音が無かったことに気付いていません。


「クークー様、お帰りなさい」


大きな胸を揺らしながら茶色の髪を風に靡かせ、1人のそこそこ可愛い女の子が、クークーさんに抱きついた。


見た目の美醜に関しては、私の主観です。リア中を僻んだ訳ではなく、私の好みに基づいているので、世間とは差異があることをご了承ください。


「リンリン、ただいま」


言葉では応えているが、クークーさんはリンリンという女性の肩を押して離れさせている。


恋人と思ったけど違う? ただ単にクークーさんが恥ずかしがり屋なだけ? それにしては無表情なんだよねぇ。


リンリンさんは一瞬歯噛みしそうな顔をしたが、すぐに笑顔に切り替わり、手を背中側で組んだ。


分かりますか、諸君。あざと女子がする行動ですよ。計算じゃなきゃ、肩甲骨の運動以外で、背中側で手を組みませんよね。


「クークー様、これは狐ですか?」


おーおー、これは確定だな。体ごと首を傾げるをしていいのは、幼児と動物だけだぞ。貴様、17歳前後じゃないのか? その年でそれは、絶対に計算だろ。モモンガの目は誤魔化せんからな。


「クークー、戻ったか」


「森におかしな点は無かったか?」


クークーさんを出迎えるためか、数人の男性が声を上げながら、こちらに向かってきている。クークーさんは、リンリンさんの問いを忘れたかのように、男性の質問に答えた。


「どうやってここまで辿り着いたか不明だが、狂花(きょうか)しかけている狐がいた」


クークーさんが、抱えていた獣を地面に下ろした。男性達は、獣をマジマジと眺めている。


「やはり森のどこかで、何か起こっているんだろうな」


「おとう。ランランを知らないか?」


クークーさんが、悩ましげな顔をしている男性に声をかけた。見た目はクークーさんに皺を足したような感じで、よく似ている。親子と分かって納得した。


「もしもを考えて声をかけておいたから、そろそろ来るだろう」


「えっ? ランラン様は、ダオと外に行ったんじゃないんですか?」


やってきた男性達の中で、1番若そうな(20歳くらいの垂れ目)が、ダオちゃんを見ながら、そんなことを言った。


「ダオと外だと? ランランがするわけないだろ」


厳しめな声で答えたのは、クークーさんのお父さんだ。


「族長が許したんじゃないんですか? ランラン様とダオが外に行く姿を見たから、俺はてっきり……」


急に空気が固まり、「まさか」「本当にランランだったのか?」「一体どうして……」「そういえばこの前は、リンリンが作った野菜をダオに荒らさせてたよな?」「違うわ。あれはお姉様のせいでは」などと騒つきはじめる。


私の正直な感想は、「なんだ、これ」だ。


一、獣人から情報収集したい。

二、ダオちゃんが可愛い。

三、可愛いダオちゃんが迷子なのは可哀想。


その3点のために、ココまでダオちゃんの背中に乗ってやって来た。クークーさんの言葉が分かったから話せる可能性に喜んでいたのに、そんな状況ではなくなっている。


「クークー。ダオはここに居たんだろう?」


お父さんに尋ねられ、クークーさんは困ったように視線を落とした。先程から一言も話していない。変わらず無表情だが、ずっと困惑しているように感じる。






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