50.皆さん、さすがです
『リリ、戻ったぞ』
レッドさん・ブルーさんの2匹が先に帰って来た。憤っている私の横に降り立っている。
今更な情報だが、レンジャーのみんなは壁抜けができるんです。なぜなら魔法だから。
実体化もできるし、本当に高性能だよね。私も通り抜けしてみたい。
『薬師の人は、どうでした?』
『うん、悪い奴だった。懲らしめてきたぞ』
レッドさん、いい笑顔ですね。最高に可愛いです。
『奴が作っておった薬の半分は開発中の物じゃったぞ。どうやら病人を利用して研究していたようじゃ』
『は? そんな奴が薬師だなんて終わってますね』
そりゃ新しい薬の開発には研究がつきものだ。適当に混ぜたら出来ちゃった、みたいに作れる物じゃない。研究は必要だ。効果も試して調べないといけない。そんなの知識がない私でも分かる。
だからと言って、助けを求めてきた病人に対して、無断で試していいものじゃない。モラルの欠片もなさすぎる行いだ。
テメェの体で、ありとあらゆる薬を試してやろうか、クソが。
『3人のグループだったぞ。だから、3人共痛めつけて、薬を全部燃やしてやったんだ』
確かに要らないけど、燃やして? 火事にはなってないよね?
『我のコントロールは完璧じゃ』
はい、ごめんなさい。もうどのレンジャーのことも疑いません。全面的に信用し、そうなんだーで終わらせます。
私がブルーさんにペコリと頭を下げた時、ピンクさん達4匹も帰ってきた。
やりきった感が漂うピンクさんとイエローさんが眩しい。
一体どこまで本気を出してきたんですか。おっちゃんが起きた時に、腰抜かさないように祈っておこう。
『皆さん、お疲れ様です。ありがとうございました。母ちゃんはどうでしたか?』
『治しましたよ。相当辛かったでしょうに頑張って耐えていて、称賛を送りたいほどでした』
そうか。今日まで頑張って生きてくれていてよかったよ。ありがとう、母ちゃん。明日はおっちゃんと子供達と喜び合っておくれ。
『ホワイトさん、ありがとうございました』
ホワイトさんは、綺麗に微笑みながらカーテシーをして消えた。残っているレッドさん達は、楽しそうに何をしてきたかの報告をし合っている。可愛すぎて尊い。
「リリ、どうしてホワイトさんが居たんだい? 私に内緒で何をしたんだい? 教えてほしいね」
「へ? 悪いことなんてしていませんよ。きちんと決めた件数での世直しです」
私の横でレンジャーの皆さんも深く頷いている。それなのにフェレルさんの眼差しは懐疑的だ。
「今日はどんな世直しをしてきたんだい?」
『薬師を懲らしめてやった』
「とのことです」
「リリ。私はレッドさんの可愛さは分かっても、言葉は理解できないんだよ。だから、通訳してくれるかい」
やれやれ。怒られそうだから内緒にしておきたかったのに、誤魔化されてくれないなんて、フェレルさんは我が強いな。
仕方がない。今回だけだからね。これからは気にしないでね。
私は抑揚を付けずに、淡々と一気に何をしてもらったのかを説明した。少しずつフェレルさんの笑顔が固まっていったが、もう後の祭りだ。
花祭りの後だから、ちょうどいい表現だな。えへ。
「フェレルさん、ため息を吐くと幸せが逃げますよ」
「吐いていないよ」
「吐かれそうだったので、先に伝えておいたんです」
「リリって偏屈だよね」
なぬ。それは喧嘩を売っていると受け取ってよろしいですか?
私は「平和を愛する」「可愛い子供の笑顔を守りたい」「優しくしてくれた人には恩返しがしたい」っていう、人情に厚いモモンガなだけですよ。
それなのに、へそ曲がりだなんて酷い。失礼しちゃうわ、ぷんぷん。
「お伝えして反対されていたとしても、私はレンジャーの皆様にお願いをしていました。絶対に譲れないことでしたから。だから、フェレルさんに相談をしなかったんです」
「それは、どっちにしようか悩むことなら、相談してくれていたってことかい?」
「もちろんです。フェレルさんやルカくんの生活に関わること、私の判断ミスで良くない事が起こってしまいそうなこと、知識が足りなくてどうしたらいいか分からないこと。そういった際は必ず相談いたします」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。でもね、相談が必要ない時も、報告だけはしてくれるかい。こんなに面白いことを知らないなんて悲しいじゃないか」
ほ? へ? まさか……さっきのは笑いを堪えていたとか言うんでしょうか? 私の説明のどこに笑いのツボがあったと言うの?
マジでフェレルさんが分からん。
「分かりました。報連相は大切ですからね。怠ってすみませんでした。以後、気をつけます」
って、また笑っている。ゲラだ。フェレルさんは“ただのゲラ”と認定しよう。
フェレルさんは「明日ロントくんに教えてあげよう」と上機嫌で部屋に戻っていった。
私もレンジャーの皆さんにおやすみの挨拶をして、ルカくんのベッドへ。
気持ち良さそうに眠っているルカくんにほっこりし、「いい夢見れそうだな」と瞳を閉じて、5秒後には深い眠りに落ちていた。
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