48.蝋燭作り
蝋燭作りの予約時間に間に合えばいいので、休憩を兼ねてのんびりと過ごすことになった。
急いで食事をして気持ち悪くなってはいけないし、中途半端な時間で焦りながら散策しても楽しくないだろうからとのこと。会話をしていて、思っていたより時間が経っていたという理由もあるそうだ。
子供がいるからね。余裕をもって動く方がいいと思う。私も賛成だ。
ルカくんにちょっとずつご飯を分けてもらっていると、ピンクさんが戻ってきた。予想よりも早い帰りだったので、おっちゃんの家はここから近いのだろう。
それはいいことなのだが、いかんせんピンクさんがプリプリしていらっしゃる。
だからか、一緒に残っていたレンジャーの皆さんは、青い顔で4匹身を寄せ合ってしまっている。
ここは1番年長者だと思う私が、勇気を出して話しかけよう。ゴクリ。
『(ピっンクさん、おかえりなさい。母ちゃんの容態はどうでしたか?)』
『(それがね、リリさん。信じられないのよ。私、怒り心頭だわ。一体、薬師は何をしていたのかしら。いいえ、一体母ちゃんに何をしたのかしら)』
『(な、なななにがあったんでしょうか?)』
『(毒ではないのよ。でも、母ちゃんの様子がおかしいのよ。何かしら、あれ。病気というより、体を悪くさせられているような気がするのよ。薬に悪い物が混ざっているのかしら)』
『(どういうことですか? 母ちゃんは本来なら元気だったということですか?)』
「(そうだと思うわ。風邪とか軽い病気だったんじゃないかしら。おっちゃんは帰ったら薬を削って母ちゃんに与えていたのよ。『もうすぐきちんと飲めるからな』って謝っていたわ。その薬から嫌な感じがしたのよね)』
『(それは、ホワイトさんで治せるモノでしょうか?)』
ここが1番大事。病気なら絶対に治してもらえる自信があったけど、よく分からない何かって治せるのか不安になる。
『(リリ、それはホワイトが怒るわよ)』
『(そうだ。今のはリリが悪い)』
『(擁護できないあるね)』
『(ホワイトに治せぬものはあらぬからな)』
『(そうよ。異常状態も治せるのよ)』
はっ!
そうだった! 私が最大級のチートに設定したんだった!
ごめんなさい、ホワイトさん! 二度とバカな不安を覚えたりしません! ホワイトさんなら救えない命なんてないって、この先ずっと私が胸を張っています! だから、怒らず現れてくれたら嬉しいです。
私がまだ呼んでもいないホワイトさんに謝っている間に、ピンクさんがレッドさんに『今夜の世直しは、薬師を叩きのめすのよ』と伝えていた。レッドさんのやる気が漲っているって分かる。
気絶させるまでだよ。殺したらダメだからね。殺す以外なら何してもいいからね。
念話でのモモンガ会議が終了した頃、ちょうど出発する時間になった。私はルカくんの肩に移動し、蝋燭作成会場に向かう。
先日の予約場所でもあった会場は、広場に長机とパイプ椅子が並べられ、受け付けの場所のみ天幕が張られている。
蝋燭作りと言っても、ワックスを溶かして作る蝋燭作りは、大人しか参加できないようになっている。子供が参加できる蝋燭作りは、蝋燭に絵を描いたり色を塗ったりするものなので、火傷の恐れはない。のびのびと自由に作れる。
フェレルさんとロントさんは大人だが、今回は絵付けの方に参加する。
受け付けで絵付けする蝋燭を選び、案内された席に移動した。時間制となっているので、完成していなくても席を空けないといけない。なので、ある意味、時間との勝負なのだ。
席に着き、蝋燭と一緒にもらった絵の具で、みんな各々に絵を描きはじめる。
と言っても、フェレルさんとロントさんは記念参加みたいなもので、花の形をした蝋燭を選び、一色塗りという暴挙に出ていた。
2人の目的は、自分の分は適当に終わらせて、子供達の作業を手伝うことなので、暴挙と言ったら可哀想だな。優しい行動だな。
でもさ、だったら予約せず手伝うだけでよかったんじゃないって、少し思っちゃったよね。これもそこそこ高かったらさ。
まぁ、思い出の品って大切だもんな。要らない物でも、その場のテンションで買っちゃったりするんだよね。
本当にねぇ、家でうどん打たないのに、うどんの棒を買っちゃってね。あの棒意外と長いから家のキッチンには不向きでね、結局立て掛けているだけになっちゃったんだよね。
なんてね、レンジ命だった私には、短かろうが棒を使うような料理はしなかったよ。えへへへ。
ん? 木刀とかの話をするのかと思ったって?
いやいや、私が欲しかったのは変身道具だったからね、木刀に興味持ったことすらないよ。
「絵しりとりの紙を見た時も思ったけど、ビアナちゃんは本当に絵が上手だね」
「ありがとうございます。リリにも褒めてもらいました」
そこはビアナちゃんの元気いっぱいな笑顔に、微笑みを返すところだろ。とツッコみたくなるほど、フェレルさんは悩ましげな面持ちで「うーん」と唸った。
「就職に悩んでいるんだったよね?」
フェレルさんの確認に、ロントさんとビアナちゃんが瞳を瞬かせながら顔を合わせている。そして、同時に頷いた。
フェレルさんもつられてか、緩く首を縦に動かしている。
「絵に関する仕事を目指していいかもしれないね」
「え? 画家ってことですか?」
「あたしでもなれるんですか?」
「画家も1つの選択肢だけれど、他にも絵付け、本や広報用の挿し絵なんかもあって、意外と幅は広いよ。画家をしながら副業でという人もいるだろうけれど、継続的に契約をした方が報酬はよかった気がするんだよね」
前から思っていたことだけど、フェレルさん物知りだな。こういう話になった時に、本当に頼りになるよね。
「それは、どうやって目指すものなんでしょうか? 商業ギルドに登録するんですか?」
「商業ギルドにある掲示板で仕事を募集してもいいと思うけれど、そういう仕事をしている商会に属してもいいと思うよ。契約面のことを考えると、信用できる商会にっていうのが安心できるかもね」
ロントさんが、怖いくらい真面目な顔をしているな。
ビアナちゃんは戸惑っているように見えるから、「本当にあたしにできるのかな?」って不安がっていそうだな。
私はまだ“これ”って決めなくてもいいような気がするけど、この世界の子供達は社会人として働くのが早いのかもな。だから、将来の指針を決めるのも、早い段階の方が好ましいのだろう。そんな気がする。
「ロントくん達は、どこに引っ越すかは決めたのかい?」
「はい。ブリントリア国に叔父が住んでいますので、ブリントリア国にしました」
「なら、絵については協力できるかもしれないね。私達も次はブリントリア国に向かおうと思っていたから、知り合いを紹介するよ。その人は絵の勉強会を開いたりもしているから、そこに通いつつ、どうするのかを決めるのはどうだい?」
「いいんですか?」
「いいよ。同じ目的地なんだ。気にする必要ないよ」
「ありがとうございます」
ロントさんが泣きそうになりながら頭を下げ、ビアナちゃんのお辞儀からも気持ちが伝わってくる。
うんうん、優しい人達は幸せになっていいんだよ。
フェレルさん、グッジョブだよ。今日の夕食は、イエローさんにフェレルさんの好きなご飯を作ってもらおうね。晩酌もしたらいい。深酒しても私が許す。なぜなら私はペット様だからだ。
振り返ってみても、ペットだから遠慮しようという行動をしてなかったからね。気持ちはあったのにおかしいよね。
特にフェレルさんには、大胆猛威しかしていない。それでも許されてきた。だから、もう私はペット様でいいのだ。
というか、ペットってそんなもんだ。私は正真正銘ペットになれていたということだ。よし!
温かい気持ちで蝋燭作りの時間は終わり、ルカくんは向日葵とモモンガを描いた蝋燭を私にくれた。
一生懸命描いている姿を眺めているだけで幸せをもらえていたのに、まさか私へのプレゼントだったとは。
感激だよ。涙ちょちょぎれそうだよ。
「リリ、大好きだよ。いつまでも側に居てね」
『ククク(私もルカくんが大好きですよ。一緒に居ましょうね)』
本来は受け答えしてはいけないけど、こんな可愛いことをしてもらった時くらい、すぐに答えてあげたい。気持ちには気持ちを、きちんと返したいからね。
本当に嬉しいよ。ありがとう。独特な絵だけど、このモモンガはきっと私なんだろうな。可愛い。一生の宝物だよ。大好きだから頬擦りしておくよ。
ルカくんの嬉しそうな声に、私は満たされすぎてデロデロに溶けていた。
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