表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
65/65

44.不思議現象

コモウェル側に到着した私達は、まずは川沿いを歩くことにした。


来週のお祭りのために設置されはじめている飾りにワクワクしてくる。屋台も多く出るようで、来週はどんな風景に様変わりするのか、本当に楽しみだ。


「蝋燭はもう売り出しているんだね」


「あれを買うの?」


「買わないよ。お祭り当日は作れるはずだからね。折角だし、作れた方が楽しいだろう?」


「うん。蝋燭って作れるんだね。楽しみ」


フェレルさんは歩きながら振り返り、ビアナちゃんとパニカくんにも声をかける。


「聞こえたと思うけれど、私達は来週のお祭りに来る予定なんだよ。ロントくんに話して、3人も一緒にお祭りに行かないかい?」


「行きたい!」


「兄さんに話してみます。伝えたら、たぶん大丈夫だと思うので」


「みんなで一緒に蝋燭を作ろうね」


「旦那さん方、蝋燭を作りたいのか?」


会話が聞こえていたようで、飾りの設置をしているおじさんが話しかけてきた。


足を止めて、人好きな笑顔を携えたフェレルさんが答える。


「はい。お祭り当日は作れたと思ったんですが、昔とは変わっているんでしょうか?」


「作れるよ。でもね、3年前くらいから予約制になっちまってね。当日枠もあるんだが、朝から並ばないと作れないんだよ。子供がいると並ぶのは大変だろうから、予約をお勧めするよ」


「そうなんですね。教えてくださり、ありがとうございます。とても助かりました」


「いいよ。祭りを楽しんでほしいだけだからな」


優しいおっちゃんだ。おっちゃんのおかげで、来週はきっと楽しめるよ。ありがとう。


「ありがとうございます」


ルカくんがお礼を伝えると、ビアナちゃん達も急いで頭を下げていた。おっちゃんは「照れるな」とハニかんでいて、おっちゃんへの好感度が爆上がりした。


本当におっちゃんにも幸あれ。優しい人達には幸運が訪れてほしいからね。


おっちゃんには見えていないが、おっちゃんに向かって手を振る。


すると、私の真似をするようにルカくんが、ルカくんが振るからビアナちゃんとパニカくんもとなり、恥ずかしそうにしているおっちゃんと手を振り合いながら別れた。


おっちゃんが教えてくれた予約場所に向かい、ロントさんの分も合わせて無事に5名分の予約をした私達は、昼食を取ることにした。


ビアナちゃん達はお弁当を持ってきていると言っていたので、フェレルさんは2人分のハンバーガーとフライドポテトと飲み物、そして私の果物を、小さな公園の横にある屋台で購入してくれた。


ルカくん達は公園のベンチに座り、私は袋の中で食事を始める。


姿を消しているからね。空中で果物が少しずつ消えていったら超常現象だからね。騒がれたら大変だ。


「食事はロントくんが作っているのかい?」


「朝は兄さんですが、昼と夜はあたしが作っています」


「ビアナちゃんは凄いね。いいお嫁さんになれるよ」


こら、フェレルさん。あーた、またそんなこと言って。わざとなの? わざとだったらタチ悪いからね。


「師匠、あの人達は何をしているの?」


ルカくん、どうしたの? 変な人でもいた? フェレルさんは何を苦笑いしているの?


「みんな、ここから動いたらダメだよ。いいね」


3人、とてもいい返事しているけど、ねぇ、何があったの? レンジャーの皆さん、子供達は危なくない? 大丈夫?


『(問題ないわよ)』


『(そうである)』


『(助ける必要もない。フェレルも放っておけばいいんだ)』


『(フェレルは見分けがつかんのであろう。仕方あるまい)』


あの、もう少し詳しくお願いできればと……


『(ええっとねぇ。リリさんに分かりやすく説明をすると、ナンパよ。男性が2人、中の上くらいの女性2人を誘っているのよね。でもね、その女性達、いい匂いがしないのよ。悪さに片足を突っ込んでいるのかしらね。だから、オラオラでナンパしている男性も、心が汚い女性も助ける必要ないってことよ)』


へー、そーなんですねー。ピンクさんのちょっと毒舌だけど分かりやすい説明ありがとうございました。


まぁ、お祭りってナンパの宝庫みたいなとこありますもんねぇ。


私も大学生の時に1回だけ経験あるんですよ。断りましたけどね。「ブスが断っているよ」って笑われたから、「ブスに断られたあんたらはブス以下なんだよ」って言ってやりましたよ。その後怒鳴られたから、大声で悲鳴上げてやりましたわ。大衆を味方につけてやったんですよ。


ケケケケケ。女だと勝てると思っている男なんて滅びればいい。


『(そうなるわよね)』


『(フェレルはバカである)』


『(だから、放っておけばいいと言ったんだ)』


あらあら。ブルーさんとピンクさんもため息を吐いちゃってますね。食べ終わったから袋から出て、何が起こっているのか見ようかな。


袋を揺らすと、ルカくんが手を突っ込んでくれた。


ヨジヨジと登り、フェレルさんの姿を探すと、助けただろう女性達に言い寄られている所だった。


ピンクさんは中の上と表現していたが、2人共とても綺麗な人で22、3歳かなって感じ。


フェレルさん、モテ過ぎだな。どんなけ女を寄せ付けんの。


フェレルさんを助けてあげるか、解決するまでルカくん達を公園で遊ばせるか考えていると、突然ビアナちゃんが立ち上がって、勢いよく走っていった。


そして、フェレルさんと女性達の間に入り込み、「私の好きな人を困らせないで」と叫んでいる。


ああ、なるほど。レンジャーのみんなが助けなかった理由が、よく分かる。


自分達がしつこくナンパされて嫌だったんなら、同じようなことをしちゃいけないと思うし、何よりビアナちゃんを蔑むように笑ったからね。


確かに「子供が何を言ってんだ」ってなると思うよ。でも、バカにしたように笑っていいことじゃない。子供の真剣さを舐めちゃいけない。というか、子供に注意される自分を恥ずかしいと思え。


ブルーさん。目眩しに突風を吹かせて、あの女性2人を尻もちつかせてやってください。


『(仕方ない。今回だけじゃぞ)』


はい、すみません。でも、悪人ってほどじゃないかもしれないけど、ああやって笑う人達には小さな不幸があってもいいと思うんです。


『(いいわね。私もそう思うわ)』


『(そうよねぇ。大人が理不尽に子供を半泣きにさせたのだから、少しくらいいいと思うわ)』


『(ブルーがやらないなら、俺が体当たりしてやるぞ)』


『(いいあるね。あっちもやるあるね)』


『(やらぬとは言っとらん)』


ブルーさんが杖を振ると、女性達は見事な尻もちを披露し、何故か転んだ拍子に服が汚れるという不思議現象にも遭い、真っ赤になって立ち去っていった。


そうなるよね。私も何にもないところで躓いたら、躓いてませんよって顔で、そそくさとその場を離れるもん。転けたら誤魔化しきかないもんね。恥ずかしくて逃げちゃうよね。分かる。


フェレルさんは、ビアナちゃんをフォローすべくお礼を伝え、頭ポンポンをしていたが、「危ないから、今度からは大人の前に出たらダメだよ」と注意もしていた。


フェレルさんと一緒に戻ってきたビアナちゃんの眉尻も目尻も下がっていて、ビアナちゃんが突進してしまう前に、私がブルーさんにお願いをすればよかったと反省した。


折角の楽しいお出かけだったのになと、しょんぼりしていたが、街散策を再開し、少しするとビアナちゃんの顔にも笑顔が戻っていた。髪飾りの露店を見つけて、はしゃいだことが大きかったと思う。


女の子だな。私はトレーディングカードやガチャガチャでテンション上がる子供だったからさ。アクセサリーも可愛いとは思うけど、欲しい物が出た時の幸福感よ。あれには何も勝てないよね。


私の心のテンションも戻り、みんなは花祭りの前後でだけ販売しているという花が浮かんでいるジュースを飲み、花の形をした大判焼きみたいな物を食べていた。


ウスリーの街には、夕方にまた渡し船で戻っている。ビアナちゃんとパニカくんを迎えに来ていたロントさんと家の前で合流し、来週のお祭りは一緒に行く約束をした。


余談だが、この日コモウェルの街では転ける人が続出していた。


あちらこちらから「うわっ」とか「きゃ」とかの悲鳴を何度も耳にしたよ。私が思ったことだけど、ちょっと遠い目をしちゃったよね。


いや、善い行いをすれば幸運が、悪い行いをすれば不運が訪れるのは自然の摂理だ。誰も抗ったり逆らったりすることが許されない法則なんだから、身を委ねるしかない。


神様のご意志とか言っちゃうと、王様ライオンさんやアルパカさんに怒られるかもしれないからね。言わないよ。みんなもお口チャックをお願いね。






リアクション・ブックマーク登録・読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ