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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
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6.チャメル、ありがとう

暗くなった頃、警戒しながら顔先だけを出して、辺りを確認した。そして、ようやく巣穴から外に出た。


今日は、試しに湖の水を飲んでみようと決めている。魔力を含んでいるという水の味が気になったのだ。後、水面で姿を確認できたらいいなとも思っている。


のんびり歩きながら、空に浮かんでいる月を見上げた。


今日一日観察して気付いたことだが、あの位置から全く動いていない。光り方が、夜風→夜明け風→朝風→昼風→夕方風→夜風というように、時間によって変わるだけだ。となると、月や太陽という呼び名じゃないのかもしれない。


それに、この世界は自転も公転もしていないのかもしれない。球とも限らないしね。この大陸の裏側には誰も居なくて、「◯◯の人ー、元気ですかー」を地面に向かってできない可能性が高い。


湖の淵に到着し、ゆるゆる覗き込んだ。澄んでいる水は、月明かりを頼りに水面に景色を映している。その一部に、愛してやまない顔がある。


ああ、チャメルだ。本当にチャメルの姿だ。可愛い。大好きだよぉ。


瞳から落ちる雫が湖に小さな波紋を作り、見ていたいチャメルの顔が歪んでしまう。チャメルに泣き顔は似合わないから涙を止めたいのに、涙腺が壊れたように溢れて落ちていく。


「チャメル、ありがとう。ごめんね。ありがとう。チャメルが居てくれた日々が、何より宝物だよ。大好きだよ。チャメルの分も、この世界で生きていくからね。チャメルがくれた命を、絶対に粗末にしないからね。でももし次があるなら、自分のために使ってね。私なんかよりチャメルが幸せになってね。大好きだよ、チャメル。本当に愛してるよ」


大声で泣きながら、つっかえながら、チャメルに届くようにと言葉を紡いだ。そして、家族や友人への感謝と謝罪も口にし、気が済むまで泣き続けたのだった。


どれだけ泣いていたのか分からないが、お腹の音で涙は止まってくれた。こんなに感傷的になっている時でも、お腹は空くのかと可笑しくなる。「チャメルがくれた命が、間違いなく生きている証だな」とクスリと笑いながら、湖に顔を近付けた。


今日の目的は、湖の水の味を確かめること。他の用事は無いから明日に回してもいいが、泣いて喉が渇いているので丁度いい。今なら味覚が研ぎ澄まされている……はずだ。


水面を一舐めすると、ぶわっと全身の毛が逆だった。


強炭酸じゃん! 辛い! 唐辛子とかの辛さじゃなくて、炭酸が強すぎて辛く感じるってやつ。でも、薄っすらと、本当に薄っすらとイチゴの味があるような気がする。ごくごく飲めないけど、美味しい水認定でいいと思う。すでにクセになってるもん。


「余は満足じゃ」


独り言多いな、私。まぁ、誰に聞かれることもないから、気が抜けているんだと思うけどね。そうであってほしい。


モモンガは音に敏感で、動体視力もいい。夜行性だから、昼より夜の方が見えやすいはずなんだけど……私、夕方でもよく見えてたな? 転生特典かな? 有り難いから何でもいいか。


そのモモンガの能力を持ってしても、巣穴に居る間も他の動物の気配を感じなかった。警戒しながら巣穴から出てきた今も、この世界で1匹ぼっちになった気分になるくらい静かだ。


「水を飲みに来る動物がいるかなと思ったのになぁ。スーベリの実だってあるわけだし。それなのに、今日一日ゼロだなんて」


襲ってくるような動物には会いたくないが、やっぱりリスやらウサギやらの小動物に会って、話せるかどうか試しておきたい。


もし話せないのなら、話し相手がいない孤独な人生になる。まぁ、陽キャでもなかったので、それはそれで自由気ままストレスゼロで、楽しく生きていきそうな気もする。






ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


第1章が終わるまでは、毎日1話ずつ予約投稿をしていきます。

投稿時間は朝の9時30分になります。

(第2章からは木曜の朝9時30分に投稿になります)


モモンガに転生したリリの日常を、一緒に見守り続けていただけたらと思います。

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