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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
55/77

34.お預かりしますよ

「リリ、起きて」


うーん……誰かが私を揺らしている……もう少しだけ……もう少し……瞼が開くまで待ってください……


「まだ眠たいよね。ごめんね」


ルカくんかな? 待ってね。ちゃんと起きるからね。


大きな欠伸をしながら目を覚ますと、ベッドで顔が半分見えていない、ルカくんの申し訳なさそうな面持ちが目の前にあった。どうやらルカくんはすでにバッチリ起きていて、ベッド横でしゃがんでいるようだ。


「リリ、起こしてごめんね」


「大丈夫ですよ。おはようございます、ルカくん」


「おはよう。ロントさんがね、リリに挨拶をしたいって言っているの」


「ロントさん?」


あ! 昨日泊まってもらったんだった。寝惚けすぎてて、頭から抜け落ちてたよ。


「起きます。ルカくん、起こしてくださってありがとうございました」


「ううん。僕は起こさなくてもって思ったんだけど、ピンクさんが起こした方がいいって伝えてきたんだ」


それはありがとう、ルカくん。今起きられていなかったら、後からお説教されていたかもしれなかったよ。回避できてよかった。本当にありがとうね。


「ルカくんは優しいですね。ありがとうございます」


ルカくんの顔に擦り寄ると、擽ったそうな小さな笑い声が聞こえた。きっと笑顔が戻ったことだろう。


私が頑張ればいいことで、ルカくんを落ち込ませる必要はないんだから。でも、お昼寝の時間は、いつもよりもらおう。


ルカくんの肩に乗って1階に下りると、ロントさん達3人はソファに座っていた。私達を見るなりロントさんが立ち上がり、ビアナちゃんとパニカくんも続いて腰を上げている。


「リリ、起こしてすみません。けど、ギルドに顔を出しに行かなきゃいけないし、その前にビアナ達を家に送り届けたいしで、我が儘を言って起こしてもらいました」


「いえいえ、気にされなくて大丈夫ですよ。私もお話ししたいことがあったので、起こしてもらえてよかったです」


「俺達に話ですか?」


「はい。心配いらないと思いますが、私とレンジャーの皆さんのことは、絶対に秘密でお願いします」


「もちろんです」


ロントさんの言葉に、ビアナちゃんとパニカくんが頷いている。だが、2人はまだまだ子供。念押しさせてもらう。


「もしバレたりしたら、怖い貴族の人達に追いかけ回されたり、珍しいからって実験動物にされてお腹を裂かれるかもしれません。私はまだまだルカくんと一緒にいたいので、本当に内緒でお願いします」


ビアナちゃんはさっきと変わらずしっかりと頷いてくれ、パニカくんは目を丸くしながら必死に首を縦に振ってくれた。


ただ単に「言わないで」とお願いするより、きちんとどう問題なのか話しておくべきだ。ダメな理由が分からないと、口は緩くなってしまうものだからね。


「それと、ロントさん。今日はフェレルさんが帰って来られる日ですから、後からまた来られますよね?」


「はい。フェレルさんがお疲れじゃなければ、相談に乗ってほしいことがありますから」


「でしたら、ビアナちゃんとパニカくんは、ここでお預かりしていますよ」


「いいえ! 昨日も散々お世話になったのに、今日もだなんて厚かましすぎます」


「全然ですよ。2人共いい子ですから。庭の遊具で遊んでいたら、あっという間にロントさんが来られる時間になるはずです」


「しかし……」


「ビアナちゃんとパニカくんを家に残したまま、どれだけ時間がかかるか分からない相談なんて、気が気じゃなくなりますよ。簡単に解決できる憂いなんて必要ありませんから」


「では……ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」


浅く頭を下げたロントさんの横で、ビアナちゃんとパニカくんが顔を輝かせている。嬉しそうにニマニマしてる。


2人も、本当に手がかからないいい子達だと思うよ。怒鳴りたくなるほど元気があり余っている子なら、私が提案した時に「遊ぶー」って騒ぎ出していたはずだもん。今だって静かに会話が終わるの待っているんだから。


「はい、任されました」


元気よく手を上げると、ようやくロントさんにも笑顔が戻った。


「ロントさん。1つ疑問なんですが、朝早くにギルドに行くって、依頼を受けられるんですか?」


「違いますよ。まぁ、朝に依頼が更新されるので、朝イチでギルドに行く冒険者は多いです。早い者勝ちですからね。俺も簡単な依頼は受けたりしますが、基本ギルマスの駒使いですね。各所に書類を届けたり、必要な物を買いに行ったり」


「行かない日もあるんですか?」


「ほとんどないですよ。日銭を稼がなきゃなので、数をこなしたいんです。だから、昨日の午後、一回も顔を出していないのを怪しまれているかもって思って、今日の朝は何が何でも行かなきゃなんです。昨日、あれだけのことがありましたから」


あーね、うん、めちゃくちゃ五月蝿そうだな。頑張って。


「フェレルさん達、警備の冒険者達の帰還もありますから、今日は大忙しだと思います」


あーね、うん、大事が重なると、てんてこまいだろうね。猫の手ならぬ、モモンガの手は貸してあげられないしね。ごめんね、頑張って。


ロントさんは、「はしゃぎすぎるなよ」とビアナちゃんとパニカくんの頭を撫でてから、ギルドに向かって出発した。門から出ていく背中に「行きたくない」と書いていたような気がする。


彼はきっと今日、ものすごく苦労するだろう。昨日の事件の処理が終わっているはずがない。怪しまれないためにいつも通りの振る舞いをするのなら、昨日の分もハゲの相手をしなければいけない。


大変だ。陰々鬱々だ。そりゃ背中に「行きたくない」の文字を背負うはずだ。


だから、私は心の中で何度も「頑張れ」と応援しとくよ。頑張れ。






来週はフェレルさん視点になります。


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