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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
53/64

32.お子様ランチ

ダイニングテーブルに到着し、私は机に降りた。ルカくんはいつもの席に座り、ロントさん達も空いている席に腰掛ける。


「兄ちゃん! すごいよ! すごい!」


「兄さん! どうしてモモンガが料理できるの!? どうして戦えるの!? どうして喋れるの!?」


「リリ達は特別なモモンガってだけだよ。それ以外は俺も知らないから」


大丈夫だよ。私も私自身のこと、よく知らないから。


「兄ちゃん! これなに!?」


「え? こんな贅沢していいの?」


「パニカ、兄ちゃんも知らない。ビアナ、お祝いだから有り難くいただこう」


えっと、目の前に置かれたのは、紛れもなくお子様ランチなんだけど、この世界にワンプレートの贅沢盛りは無いの?


『(ワンプレートはあるけど、お子様ランチはないあるよ)』


イエローさん、念話ありがとうございます。ってことは、ボカして説明するしかないな。


「今日はお祝いですからね。色んな美味しい物をたくさん食べられるように、イエローさんが工夫してくださったようです。好きな物からでも、少しずつ順番にでも、どんな食べ方でも大丈夫です。楽しみながら食べましょう」


説明、無理だったわー。「子供が好きな食べ物を集めたプレートご飯を、お子様ランチって言うんです」なんて言ったら、「どこで?」って話になっちゃうし。


だったらご飯の説明をと思ったけど、エビフライ・ミートソースパスタ・チーズ乗せハンバーグ・ポテトサラダ・タコさんウインナー(目と足はあるが赤ではない)・ブロッコリー・とうもろこし・デニッシュ・コンソメスープを順番に言わなくても見て分かるもんね! 私は無力だった。


まぁ、美味しい料理に説明はいらないのだよ。この料理の素晴らしさは、舌で確かめておくれ。


ルカくんとレンジャーの皆さんと一緒に「いただきます」をすると、ロントさん達に「なにそれ?」と質問されたので、ルカくん達にした説明と同じ説明をした。ロントさん達もこれから使うそうだ。食事ができるって、本当に有り難いことだからね。感謝大切だよね。


ルカくんはエビフライを、ロントさんはハンバーグを、ビアナちゃんはコンソメスープを、パニカくんはタコさんウインナーを1口食べ、顔を伸ばしながら瞳を輝かせている。そして、口々に「美味しい」と称賛しはじめた。


そうか、そうか。そんなに美味しいか。分かるよ。私も塩味だけのはずなのに、ブロッコリーが脳天直撃するくらい美味しくてビックリしたからね。


「ルカの言う通り、エビフライも美味しい」


「美味しいよね。パニカくんがさっき食べた、可愛いウインナーも美味しいね」


「兄さん、このハンバーグなに? どうしてこんなに肉汁が溢れてくるの?」


「俺が知るわけないだろ。イエローさんが料理上手ってことしか分かるかよ」


美味しいご飯の前では、みんなお喋りになるよね。ルカくんの友達ゲットできちゃったな。よかよか。


ん? あれ? そういえば、イエローさんは、私の前世の世界の料理を、どうして知ってるの?


『あっち達、リリの魔法あるね。だから、リリの記憶あるね』


なんですと!? 新事実発覚だよ!


説明されたら、そりゃそうだろって感じなんだけど、私の記憶を持っていて、この世界のことも知っているなんて凄すぎない? 私も、みんなと同じような知識が欲しかったよ。


「あのー、リリ」


「ロントさん、どうされました?」


「ハンバーグのおかわりって、お願いしてもいいんでしょうか? ちょっと我慢できないほど美味しすぎて、もっと食べたいんです」


ロントさんは成人男性だからね。大きめのお子様ランチじゃ足りないよね。


「あたしも!」


「僕はウインナー!」


ビアナちゃん達も育ち盛りだからね。イエローさんに頼んであげたいところだけど……


「ロントさんは胃袋的に大丈夫だと思うんですが、ビアナちゃんにパニカくんはやめておいた方がいいと思いますよ。この後にデザートがありますからね。お腹いっぱいで食べられなかったら悲しくないですか?」


「デザート!? ご飯の後に甘い物食べていいの?」


おや? もしやこの世界、食後のデザートっていう概念はないのかな?


「今日は特別です。お祝いですからね」


「じゃあ、あたしハンバーグは我慢します。甘い物食べたいです」


「……僕も我慢する」


ロントさんが苦笑いしてるな。あれかな? 夜に甘い物は食べさせません家庭だったのかな? それだったら、本当にすまん。私が食べたい時に食べる派なもんで。もう言ってしまったし、許して。


それとも、ロントさんの懐事情なのかな? 子供を2人養うって大変だもんね。マジで尊敬するわ。


ん? なになに? これはフェレルさんの懐からじゃないのって?


うん、そうだよ。Aランクだもん。きっと問題ないよ。それに、今回1週間もかかる仕事なんだからさ。たぶん報酬は多いはずだよ。だから、きっと数食くらい大丈夫。


それにさ、この1週間ハゲの相手をたくさんしたんだから、私達に報酬あってもいいよね?


ロントさんは2個目のチーズ乗せハンバーグも綺麗に完食し、ルカくん達子供組も残さず食べ終えている。


もちろん私も食べ残しなどしていない。それでもまだ腹7分目くらいなので、イエローさんの配膳は本当に素晴らしい。お腹いっぱいなのに無理して食べて、丸っこくならなくていいんだから。


ありがとう、イエローさん。「あいつ、触り心地良すぎないか?」にならなくて一安心です。


デザートには小さめのプリンアラモードが出てきて、子供達のテンションはMAXになった。感想を言い合いながら食べ、笑顔の花を咲かせ合っている。


平和だ。和やかだ。私が求める日常は、これだよ。


子供達の姿に瞳を垂らしながらプリンアラモードに舌鼓を打ち、ちょっと贅沢な夕食会はお開きになった。






来週は1話のみの更新予定です。


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