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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
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29.ロントさんの笑顔

ピンクさんとイエローさんの2匹が動き出そうとしてくれた時、ロントさんがダイニングにやってきた。目が真っ赤っかで、アルビノさんみたいだ。


「リリ、レンジャーの皆様、ルカラウカくん、本当にありがとうございます」


ロントさんは、背中が見えるほど深く腰を折った。


「ビアナとパニカを見つけてくださり、感謝しきれません。この御恩は必ずお返しします。本当に本当にありがとうございました」


誰もが朗らかにロントさんを見つめる中、私が代表して声をかける。


「ロントさん、頭を上げてください。私とルカくんは、ロントさんが待つ場所を提供しただけですし、レンジャーの皆様は、お礼をしてほしくて子供達を助けたわけではありません。彼らは弱きを助けるヒーローなんです。むしろビアナちゃんとパニカくんのおかげで、誘拐犯を倒すことができたんです。こちらこそ、悪い奴らを一掃する機会をいただき、ありがとうございました」


そう、レンジャーは困っている人達を守り、悪と戦うヒーローなの。だから、お礼の気持ちを伝えてくれただけで十分なのよ。それだけでレンジャーのみんなは喜んでくれているよ。


ここで私が空気を和ます為に、「んじゃあ、兄ちゃんよ、全財産寄越せや」なんてニヒルな笑顔を浮かべようものなら、冗談なのに私が袋叩きにされるって分かるくらい、彼らは高潔なの。


まぁ、ルカくんの前で、いけない大人ムーブしないけどね。教育によくない。


顔を上げたロントさんの瞳から、涙が溢れそうになっている。両手で顔を隠し、息を深く吐きながら、ロントさんは顔を天井に向けた。


次の言葉は落ち着いてからでいいよ。というか、もうお礼云々の応酬は止めよう。平行線にしかならない気がするからさ。そういうのって不毛でしょ。お互いきちんと、言葉に気持ちがこもっていればいいのよ。


「ロントさん、ビアナちゃんとパニカくんが見つかったお祝いに、プチお茶会をしようと思っているんですが、お2人は向こうで座ったままですよね。喋るモモンガがご挨拶に行っても、大丈夫でしょうか?」


「あー、すみません。お祝いしていただけるのはとても有り難いですし、2人は喜ぶと思うんですが、泣き疲れたのか眠ってしまって。2人が起きたら帰りますから、寝かせてもらったままでもいいですか? ちょっと2人を抱き上げて帰る自信がなくて……すみません」


「恐怖も相当だったでしょうから、疲れて眠ってしまうのは当たり前ですね。でしたら、お祝いは夕食の時にしましょう。それと、今日は泊まっていってください。夜遅くに帰るのは危険ですからね」


「いいえ! いいえ! これ以上ご迷惑をかけられません!」


「迷惑ではありませんよ。みんなで食べた方が、ご飯は美味しいですから。イエローさんの料理、本当に素晴らしいんですよ。度肝を抜かれてください」


「え? イエローさんが作るんですか?」


「は——『そうである!』


イエローさん、私の言葉に被せるのはいいとして、両手を腰にあてているポーズを、わざわざ私の前に来てしなくてもいいと思うんですが。


可愛いよ。可愛いけどね、私に被ってるの。ロントさんは上から見下ろしている状態だから、私の顔は辛うじて見えているっぽいけどね。でもね、被ってるの。


まぁ、写真撮ってる訳じゃないからいいけどね。写真の時はダメだぞ。地縛霊みたいに写っちゃって、心霊写真コーナーに投稿されたら黒歴史になっちゃうからね。


瞳を瞬かせたロントさんが可笑しそうに吹き出し、笑いながら涙を拭った。そして、晴れやかな顔で微笑んだ。


「もう全部お世話になります。よろしくお願いします。イエローさん、ご飯楽しみにしていますね」


『任せろある!』


あれだな。ロントさんは、なんかもう全部考えるのが馬鹿らしいという境地に入ったんだろうな。


うんうん、それでいいんだよ。受けられる物は受けて、どこかで誰かに渡せる時に渡したらいいんだよ。優しさの伝染は、みんなを幸せにすると思うからね。


たぶん、そんな詩の一節や歌詞があったような気がする。決して私がカッコつけて、アーティストみたいなことを言ったのでない。






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