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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
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27.動物なんでしょ?

「リリ、みんなは探しに行ったの?」


「はい。すぐに朗報を持ってきてくれると思います。私達はここで待ちましょう」


窓の外を見に行ったロントさんが戻ってきて、勢いよくテーブルに手をついた。


それ、普通のモモンガなら嫌がるからね。私でさえ、耳を立てて尻尾伸ばしちゃったじゃん。モモンガは大きい音苦手だからね。絶対にダメだよ。


「ロントさん、今のダメ。リリが驚いた。ダメ」


あー、ルカくん。なんていい子なんでしょ。大好きだよ。


「悪い……あまりにも現実味がなくて……どう受け止めればいいのか……」


分かる。そういう時はね、「オーケー、オーケー」って何も考えず、そうなんだくらいでいいのよ。嫌なことやムカつくこと、許せないことじゃないはずだからさ。


心に傷が残るようなことは受け入れたらダメだけどね。それ以外は、意外とどうとでもなるもんだよ。


「今後は気を付けてくだされば大丈夫ですよ。ロントさん、座ってください。イエローさんが淹れてくださっているお茶でも飲みましょう。ルカくん、ありがとうございました。ルカくんが飼い主で幸せです」


「僕も、リリが一緒にいてくれて幸せだよ」


微笑みながら顔を斜めにして、ルカくんと「ねー」と言い合っていると、ロントさんが緊張を含んだ声で話しかけてきた。


「あの、リリ様でいいですか?」


「リリでいいですよ。敬語も使わなくて大丈夫です」


「でも、その、入国時に魔物じゃないって分かっていますから、もしかして聖獣様なんじゃ……」


「違います! それに、聖獣様も魔物の一種ではありませんでしたっけ?」


「あー、そうだったかも。そんな気がします」


「ロントさんは魔物に詳しいんですか? フェレルさんでさえ、私のことを聖獣様とは言いませんでしたよ」


「俺の両親が詳しかったんです。若い時に話す魔物を助けたことがあったらしくて、その魔物が聖獣様で、祝福までもらったなんて言ってました」


「すごいですね。確かに聖獣様は祝福を与えられるそうですよ」


「そっか、両親の話は本当だったんですね。酔っ払ったらその話をするから、嘘半分で聞いてたんです。もっとちゃんと聞いておけばよかったなと、今となっては思うんです」


亡きご両親との思い出か。仲の良い家族だったんだろうな。


「ねぇねぇ、リリ」


「どうしました、ルカくん」


「師匠はね、リリのことを『特別なモモンガ』だって言ってたよ。たぶん聖獣様の上じゃないかって」


え? いつ、そんな話をしてたの?


「そうなんですか? でも、私、本当にレンジャーさんがいないと、ただ話せるだけのモモンガなので、別に特別でもないと思うんですよね」


「話せるだけで、十分すごいですけどね」


ロントさん、やっとお茶に口を付けられるまで落ち着いたんだね。よかったよかった。


レンジャーの皆さんが絶対に見つけてくれるから、のんびり雑談でもしとこう。だって辛いことに、私達にできることはないからさ。


「さっき気になる言葉があったんですが、入国時に魔物じゃないと分かっているって、どうしてですか? 申告する書類とか無かったですよ」


「入国する時に、透明の板を触りましたよね。あの板が、初めて登録する時に種族を表示させるんですよ。それがそのまま登録されて、以後、本人かどうかの照合に使用されるんです。何だったかな。血管とか、魔力とか、そういうのを照らし合わせてたはずです」


なんですと!? あのピリッとした板、瞬時に情報を読み取るの?


知ってたら、入国時の心拍数すんごいことになってただろうな。だって、私でさえ何て出るか分かんないし、入国できなかったかもしれないしね。


「種族ってことは、人間の皆様もですよね? そんなことする必要があるんですか?」


「さあ? 俺はギルマスから簡単に説明されただけなんで。ただ犯罪した時とかも、あの板で登録するから、出入国を誤魔化すことはできないはずですよ」


「そうなんですね。ちなみに、私って何で登録されているんでしょうか?」


「ギルマスが『動物だと?』って言ってましたから、『動物』だと思います」


じゃあ、私、やっぱりただ話せるだけのモモンガってことでいいんだよね? なんかスッキリした。


「あのしつこいハゲ……んんっ……ギルド長さんですが、どうしてそこまでルカくんと私に付き纏うんですか?」


「それは俺も不思議でして。まぁ、リリはただの動物ではなかったので、ギルマスの勘は当たってたんですけどね。でも、あの気持ち悪さは、犯罪者って言われてもおかしくないなと感じています」


「ギルド長さんに正体をバラす予定はないんですが、もしバラしたとしたら、もう付き纏わないですかね?」


ロントさんは、顎に手を当てて「うーん」と唸っている。


「リリは静かに過ごしたいんですか?」


「そうですね。ルカくんとレンジャーの皆さん、ついでにフェレルさんと、のんびり過ごしたいですね」


「では、絶対にバラさない方がいいと思います。といっても、他の街に行っても目を付けられるかもですが」


「どうしてですか?」


「冒険者ギルドには、ギルマス専用のメバセードがあるんですよ」


「まさか……」


いや! やめて! 頷かないで!


「気になるモモンガと、Aランク冒険者のフェレルさんのことは、もう伝え済みなんですよ」


「そこまでします?! 犯罪者じゃないんですよ!」


「ギルマスって、1人で決められないんですよね。周りに意見を求めるんです。まぁ、自分を肯定してくれる意見以外、受け入れてはくれませんけどね。だから、ニコニコと肯定してたら楽なんですよ」


お、おう。社会を生き抜く術を、その歳でもう身に付けてるのか。ご両親が亡くなられてから、本当に大変だったんだろうな。後で労ってあげよう。


ギルド長さんに至っては、報連相をきちんとしている真面目な人ともとれるけど。


ほら、百貨店やスーパーとかで「怪しい人がいます」ってので、万引きGメンが監視したりするから、怪しいってだけで十分報告対象……な訳あるかい! 一体全体、そこまで怪しい動きしてないだろが!


やいやいやーい! 大人しく家で留守番している私を疑う要素、どこにあるんだよ!


「ロントさん。私って、そんなにモモンガらしくないですか?」


「違うって分かった今なら、賢すぎるのかなとも思いますが、知らなかったらそこまでですよ。昼間に起きてるなんて珍しいなくらいです」


「なるほど。貴重なご意見をありがとうございます」


よし! んじゃあ、今後は私も、街散策の時は姿を隠してついていこう。家で寝ている設定にすればいいんだよ。






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