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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
46/64

25.事件勃発

翌日、寝過ぎた私が起きたのはお昼で、ルカくんは午前中レンジャーのみんなとリバーシをしていたそうだ。


本当に皆さんが居てくれてよかった。じゃないと、子供1人寂しい思いをさせるところだったよ。ありがとうございます。


寝起きの私はみんなとは違うご飯を食べ(みんなはトマトソースのパスタ、私は野菜・ささみ・果物)、昼からは庭で追いかけっこをして遊んだ。ハゲが来なかったので平和な1日だった。



フェレルさんがいなくなって4日目。ちょうど1週間いない真ん中。


この日は、またハゲが性懲りも無くやってきた。本当に爪で引っ掻いてやろうかと思ったが、ロントさんが早い段階で止めてくれてたので、私は彼を見直した。


ググ先生が教えてくれた通り、ロントさんはいい青年なんだろう。



そろそろ違う遊びをした方がいいかも、と思いはじめた今日は、イエローさんを先生に迎え、簡単なカップケーキを作ることにした。混ぜて焼くだけで出来るというものだ。


オーブンへ入れたり出したりは、イエローさんが魔法でしてくれるので、ルカくんは混ぜるだけ。それだけでも立派だし、自分で作るとより美味しく感じるかもしれない。


私の性格上、私は自分よりも他人が作ってくれた料理の方が好きです。


ルカくんは自分で作れたというより、私達のおやつを用意できたということに喜んでいた。この子、マジで天使。一生推せる。私が幸せにする。


ルカくんの日常に、料理が加わった日である。



ハゲが1日おきにやって来る。こいつ、暇だな。絶対に暇だ。


今日も今日とてやって来たハゲを、一言二言でロントさんが引き摺るようにして連れ帰ってくれた。


ロントさんの顔が、前回見た時より能面顔になっていた気がする。病まないうちに、どこかで休みを取ってほしいものだと思う。


それ以外は平和で、穏やかな1日だった。



そして、明日の昼にはフェレルさんが帰ってくる予定の今日。できればフェレルさんが居てくれる時がよかった、と思う事件が起こってしまった。


お昼寝をした後で、滑り台を順番に滑っていると、激しい駆け足音(かけあしおん)が近付いてきた。その足音(あしおと)は、家の前でザザザッという音と共に止まった。


「ビアナ! パニカ! ここにいるのか!」


ロントさんの声だ。非常に焦っているし、知らない人達の名前を呼んでいる。


「リリ、行く?」


「はい、行きましょう。何かあったみたいです」


サッとルカくんの肩に乗ると、ルカくんは足早に家の正面に向かった。


ルカくんの姿を確認したロントさんが、乗り出すように門に手を突いた。


「君! ここに女の子と男の子が来なかったか? 俺と同じで、赤い髪に深めの赤色の瞳をしてるんだ」


「誰も来ていないよ」


「そ、ぅか……一体どこに……」


これは、まさか……


「大丈夫?」


「あ、ああ、悪かったな。もし子供が訪ねてきたら、ここに居るように言ってくれないか?」


「えっと……」


「家の中に入れなくていい。門の前でいいから、話して動かないようにしておいてほしいんだ」


チラッとルカくんに見られたので、私はしっかりと頷いた。


普段のルカくんなら、私に確認を取らずに笑顔で了承したことだろう。でも、今はロントさんの動揺が伝わってきていて、冷静でいられないのだ。


小さな子供なんだから、周りの環境でどうしたらいいのか分からなくなるのは当たり前だ。だからこそ、健やかに過ごすために、平和が1番なのだ。


「悪いがたの——


「ロントさん、待ってください」


駆け出そうとしたタイミングで、声をかけてごめん。非常口の緑の人みたいになってるね。それ、たぶんしんどいと思う。ごめん。


「……今、誰が喋った?」


手を上げてるんだから、可愛いモモンガだよ。ほらほら、両手を振ってみようか?


「リリ、いいの?」


「はい、ルカくん。ロントさんは優しい真面な人と判断しましたので、大丈夫です」


「……モモンガが喋ってる? 嘘だろ?」


「嘘じゃないですよ。ちょっとお聞きしたいことがありまして、急いでいると思いますが、悪いようには決してしませんので、中でお話しませんか? ここで話していると、もしも誰かに見られると困りますので」


「いや、俺、妹と弟を探しに……」


「はい。そのお手伝いをできればと思ったんです。絶対に見つけてもらえますので、安心してください」


いやね、私が「もしかして誘拐に巻き込まれたんじゃ」って不安に思った時くらいから、レッドさん達が『プシュップシュ(助けるぞ)』って猛アピールしてくるのよ。


私も、顔見知りの人が不幸になるのは後味悪いって思うから、ヒーローの力を借りて手助けしたいのよ。


私は何もできないけどね。見つかった時にもし怪我してたら、ホワイトさん呼ぶくらいならできるからさ。


「うん、お兄さん、入って。リリ達が絶対に見つけてくれるよ。本当にすっごいんだから」


ルカくんが内側から門を開けて、ロントさんの腕を引っ張って中に招いた。そして、そのまま家の中まで誘導する。


「ロントさん、座ってください。皆さんは、もう姿を見せても大丈夫ですよ」


『落ち着くお茶を淹れるある』


『さすがです、イエローさん。お願いします』


『リリさん、ロントさんが固まっているわよ。私達の紹介をしてほしいわ』


『もちろんです、ピンクさん。皆さんを紹介しますね』


ロントさんやい。瞬きした方がいいよ。目が乾いたら痛いから。パッチパチした方がいいよ。


呆けながら腰掛けたロントさんの前に、すぐさまハーブティーっぽいものがイエローさんによって運ばれた。ルカくんの前には、フルーツジュースが置かれている。






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