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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
42/65

21.ハゲが怪しい

私が起きた時にはもうフェレルさんの姿はなく、フェルさんはルカくんとレンジャーの5匹を抱きしめてから出発したそうだ。


ルカくんもだが、レンジャーの5匹も誘拐犯の話を聞いたらしい。庭でいっぱい遊ぼうねと、約束をしている。


フェレルさんが帰ってきたら、また川沿いの散歩に連れて行ってもらおう。風が気持ちよかったし、外の景色を見るだけで開放感を味わえるしね。お散歩大切よ。


午前中は庭で駆け回り、お昼ご飯を食べ、お昼寝をし、ジャングルジムの上から飛ぶモモン・ガーの滑空勝負を見ようという時に、数人の足音が門の前で止まった。


「ルカくん、誰か来たようです」


小声でルカくんに伝え、口の前に手を持っていって「シー」と呟いた。ルカくんは口を引き結び、頷いてくれている。『チチチチ(見てくる)』と姿を消したレッドさんが、門の方に飛んでいった。


「おーい! 坊主! いるかー!」


ん? ルカくんを坊主と呼ぶって、あのハゲ頭か? フェレルさんが居ないことを知ってるよね? 知っているからこその掛け声なんだろうけど……何しに来たの?


様子を見に行ってくれていたレッドさんが戻ってきて、小声で教えてくれる。


『ギルド長だ。後2人、ロントって奴と、初めて見る胸が大きい女がいる。でも、2人は隠れている』


はい? めちゃくちゃ怪しいじゃん。


「坊主ー! いないのかー?」


うるさいな。帰れってんだ。何回叫ぶんだよ。


「リリ。僕、会ってくるよ」


「でも、フェレルさんが居ないことを知っていて来たんですよ。ルカくんを危険に晒せません」


「レンジャーのみんなに一緒に居てもらうから大丈夫だよ」


ううっ、笑顔が眩しい。私がモモンガじゃなければ出て行って対応するのに。


いや、チャメルの恩恵だからモモンガ万歳だけどね。でもさ、ってなるじゃん、あのハゲのせいで。しかも、絶対私を怪しんで……


あいつら、誘拐犯じゃないよね? フェレルさんが居ない間に、ルカくんを攫いに来たとかじゃないよね?


もし、そうだとしたら、色々再起不能にすんぞ、こら。


「では、私はルカくんの肩から威嚇しますね。それと、門には近づかないでおきましょう。会話できればいいはずですから」


「分かった」


レンジャー達も頷いて、ブルーさんの魔法で姿を消し、ルカくんの正面を陣取っている。


ルカくんはタッタッと走って、裏庭から表の庭に顔を出した。気付いたギルド長さんが、笑顔で手を上げている。


門から3メートルくらいのところで止まったルカくんの肩から、私は『ジコジコ』と威嚇をはじめた。


「よっ! 坊主! 元気だったか? って、そのモモンガ怒っているのか?」


「うん、怒っているみたい。なんでかな?」


ルカくんてば、こんなに大きな大人怖いはずなのに、堂々と受け答えしている。あいつ、もっと威嚇してやる。


「そ、そうか。俺、もしかして起こしたか?」


「あ、うん。そうかも。寝てたから」


「悪かったな。フェレルが居ないだろ。子供1人っていうのが心配になってな。様子を見に来たんだ」


「ありがとう。楽しく遊んでいるから大丈夫だよ」


「1人でか?」


「うん、師匠は居ないから」


「そうか、そうだよな。安全かどうか確認したいんだが、入っていいか?」


「師匠から、絶対に誰だろうと開けてはダメだって言われてるの。だから、開けられないの」


「俺は問題ない。確認するだけだ」


「ううん、師匠と約束したからダメなの」


「フェレルだって、俺ならいいって言うはずだ」


はぁ? こいつ、子供相手にしつこいな。爪で引っ掻くぞ、こら。さっさと帰りやがれ。


「ううん、ごめんなさい。師匠が帰ってきたら、ギルド長さんが来てくれたこと伝えるね。バイバイ」


ルカくんは手を振って、裏庭に向かって走り出した。ギルド長さんの「え、ちょっと待て! 坊主!」という声が聞こえてくるが振り返らない。


「リリ、あれで大丈夫かな?」


「ルカくん、天才です。きちんとお話できていましたよ。偉いです」


「へへ。リリに褒められた」


本当にすごいよ。おやつは、ルカくんが好きなケーキを作ってもらおうね。


『リリ、奴ら帰っていったぞ』


『レッドさん、ありがとうございます。何か話してましたか?』


『明日も来るみたいなことを言ってた。食べ物持ってくるって』


『しつこいですね』


『それと、赤毛の男は帰ってないぞ』


『監視してるんですか!?』


私が怪しいかもってだけで、そこまでするの!? 相手は7歳の男の子だよ。一瞬でも、「本当に子供1人だから心配して?」と思った私の純粋な心を返せ。


だって、本当に心配なだけなら、3人中2人が隠れる必要ないし、ルカくんの姿を見たら安心して帰るはずなのよ。まぁ、ギルド長さんのしつこい会話で、絶対に違うわってなったけどね。


『申し訳ないですけど、レンジャーの皆様は外にいる間は姿を消していてください。それと、ブルーさん。ルカくんが玄関の鍵を開けているように見せる魔法ってありますか?』


『我に任せろ』


『よろしくお願いします』


どっちだろうな。私を怪しんで来ているのか、あいつらが誘拐犯なのか。


でもさ、私を怪しんでいるだけなら、中に入ろうとする理由ないよね?


えー、じゃあ、ルカくんが可愛いから誘拐を目論んでるってこと?


ギルド長さん達が犯人だから、いくら調べても誘拐犯の手掛かりさえ見つけられないし、最近悪人が捕まっているから、次は自分かもって震えているってことになるの? だから、やられる前にやろうと、姿なきヒーローを探してるの?


え? やだ……小説や漫画でありそうな展開。冴えすぎている自分が怖い。


って、レンジャーの皆さん、その冷めた視線は何でしょうか? 「そんなわけない」って瞳が語ってますよ。


いいんだ、いいんだー。私はルカくんの健やかで文化的な生活のために、全方位に警戒を敷いておくんだから。誘拐犯、早く捕まってくれないかなぁ。


って、私にはググ先生がいてくれるじゃん!


わーい。夜に犯人調べてみよう。今はルカくんと遊ばないとね。






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