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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
40/64

18.グレーさんが作ってくれるおもちゃ

私とルカくんが眠っている間に、レッドさんとブルーさんは3件の世直しをしてきたらしい。私がうつらうつらと朝食を食べている時に、嬉々として話してくれた。


そして、なんとなくそうなるだろうなと思っていた、フェレルさんの呼び出しがあった。今日もロントさんという赤毛の男性が、フェレルさんをバイク……違った。スクモートで迎えに来て、連行している。


本当に私がモモンガ研修生のせいで申し訳ない。早く一人前になれるように精進するので、うまく誤魔化してきておくれ。それと、もう帰りもロントさんに送ってもらったらいいのにと思う。


「リリ、まだ寝る?」


おっと、大きな欠伸を見られてしまった。やっぱり日中起きているのは、疲れ度合いが大きいような気がするんだよね。でも、大丈夫。私も一緒に遊ぶよ。


「大丈夫ですよ。追いかけっこからにしましょうか?」


「ううん。僕、今日はリバーシをしてみたい」


皆さん、もうお分かりですね。あったんですよ。オセロが。


フェレルさんに、飾られているチェス以外にボードゲームは何かないのか尋ねて、リバーシとコネクトフォーとチャッカーが出てきた。チェスとチェッカーは苦手なので、リバーシとコネクトフォーはできると伝えている。


まぁでもルカくんが、チェスとチェッカーをしたいと言うようになったら頑張るよ。ボードゲームは相手が必要だからね。頑張る。


「では、リバーシをしてみましょう」


「うん!」


ん? なんですか、グリーンさん。グレーさんを呼べと? 分かりました。すぐに呼ばせていただきます。


あらあら、ルカくんが不思議そうに首を傾げておられる。私と一緒だね。気持ち分かるよ、分かる。『ククク(ガッハハハ)』とグレーさんは頻繁に現れるから、もう何をしてくれるモモンガか知っているもんね。今日もまた、何を作ってもらうんだろうね。


ルカくんの肩から様子を窺っていたら、なんと作ってくれたのはリバーシだった。


「え? あるよ、ある」と思ったが、口に出していない。出したら、きっとグリーンさんに睨まれる。


後、ひな壇みたいな棚を作って、グレーさんは『ククク(またな)』と消えた。


『これを使いましょ』


ルカくんの前にグレーさんお手製のリバーシを、ルカくんと対面になる位置にひな壇が反対向きに設置される。


『リリ、何をしているの? 移動しなさいよ』


グリーンさんにひな壇の上を指され、私は素直に移動した。


あ、この階段(ひな壇)登りやすい。


そして、見えた景色に、どうして作ってもらったのかが分かった。少し高い位置からだから、盤面が全部見える。


ただ、ルカくんの肩から見えていた時から不思議だったのが、盤面のマスの中に数字が書かれていることだった。私の右側の手前に1が、左隣に2が、という風に数字が増えていく。左手前は8になり、9は1の上になる。反対側のルカくんから見れば、左奥から1が始まり、右に2、1の下に9という感じだ。


グリーンさんが『プププ(ゲーム開始)』と鳴くと、石がミニチュアのハムスターになって盤面に駆けていき、28・29・36・37の位置に白2個・黒2個が交差する形で置かれた。


???


そうそう、一口メモと言うほどではないけど、元々オセロとリバーシは別物らしい。今置かれた配置から始めるのがオセロになり、リバーシは真ん中の石の初期配置を自由に決められるというもの。交差じゃなくて、縦や横で色を分けて始めてもいいそうだ。


後、盤面のマスの数もオセロは8×8に対して、リバーシは決めなくてもいいんだとか。パスの違いもあるらしいけど覚えていない。


だって、オセロと同じルールのリバーシが浸透しちゃったんだもん。私はその時代の人間だったので、覚えていないこともあるよね。興味があったら調べてみてね。


驚きすぎて現実逃避していた私は、ルカくんの「すごい! 石が自分で動いてる!」でやっと意識を取り戻せた。


危ない危ない。真理の裏側に行ってしまうところだった。


って、マジかー! グレーさん、凄すぎるわー! これを数分もかからず作ったんだよ。一大財産築けるよ。もしもがあった時は、お金方面でも力を貸してもらおう。


さて、ルカくんがキラキラ笑顔で待っておられる。摩訶不思議なリバーシをしようではないか。


こっちの世界のルールがどうかは分からないけど、フェレルさんがどっかの部屋から出してくれたリバーシは8×8の盤面で、グレーさんが作ってくれたものとマスの数は変わらない。ってことは、私が知っている、ごく単純なルールでいいな。


「ルカくん、まずはどっちの色かを決めましょう。白がいいですか? 黒がいいですか?」


「僕、白がいい。これ、きっとリリの顔だよ。だから白がいい」


うん、私もそう思うよ。それ、きっと私の可愛い顔だよ。黒の方はシルエットってことなんだろうね。


グレーさんたら、わざわざモモンガ型にしてくれているなんてね。マジで最高だよね。だってチャメルは、どの世界だろうと1番可愛いからね。


「では、私は黒ですね。リバーシは、相手の色の石を自分の色の石で挟み、挟んだ石を自分の色に変えます。置く場所がない場合のみ、パスが可能です。ゲーム終了時に、石の色が多い方が勝ちです」


「うーん、分かった」


「やってみた方が分かりやすいですからね。何回も戦いましょう。見本として、私から始めますね」


とは言ったものの……ここから石を触ることはできないし、降りて石を持って移動するとなると、他の石を蹴ってしまいそうだな。私にも浮遊魔法が使えたらいいのに。自分の無能さに泣けてくるぜ。


なんて、バカ言ってないで、降りて石を移動させなきゃ。ルカくんがニコニコ笑顔で私を見ている。


『リリ、番号を言えばいいのよ』


ほへ? 番号?


『そうよ、リリさん。番号を伝えるだけで、石は勝手に動いてくれるわ』


???


ハッ!


オーケー、オーケー。もうこれくらいじゃ驚かないよ。「は、い? 石が動くんですか? マジですか? 私でも? ええ?」って固まってないよ。だって、さっき動いてたもんね。そんな2回も呆けないよ。もしそれを見たとしたら、それはきっとあなたの夢。


え? 固まった後に、カシカシと自分の耳を後ろから前に撫でつけてたって?


それは耳が痒かったの。動揺からじゃないよ。信じて。


「に、21番」


楽しそうに笑っているピンクさん、呆れた顔をしているグリーンさんとブルーさん、3匹の視線を受けながら意を決して言ってみた。


レッドさんとイエローさんは、部屋の中を動き回っているからね。私を見てないの。


私の言葉を受け、盤面の外側に横1列で並んでいる石の1枚が、開始の石同様、ミニチュアのモモンガになって21番に駆けていった。


21番に到着したミニチュアのモモンガが石に戻ると、29番にあった白い石が、3センチほど跳んで黒い石になって着地した。


「色も変えてくれるんだね!」


本当にねぇ。お姉さんは驚きすぎて、ちょっとお疲れ気味よ。


「次はルカくんの番ですよ。縦でも横でも斜めでも、白い石で挟める番号を見つけて、選んでください」


真剣に盤面を見つめるルカくんを眺めながら、リバーシって何歳から用なんだろう? と考える。


私は何歳の時が初めてだったんだろ? 小学校の時にやっていたはずだけど、高学年だったような気がするなぁ。


ルカくんは賢い子だから大丈夫かな? 学校行っていないけど、フェレルさんが道中教えているらしくて、簡単な文字は読めるんだよね。足し算と引き算も2桁までできるらしいしね。


なお、学校はあるそうだ。貴族用のめちゃくちゃ豪勢な学校と、平民用の小さな学校があり、貴族用は国に1から2個くらいだが、平民用の学校は各街に1つはあるらしい。ウスリーとコモウェルくらい近い街なら、どっちかの街に1つとかなんだそうだ。基本、教会の隣に建てられているんだと。司祭や助祭が教えていて、平民でも払えるお値段で通えるそうだ。ボランティアではないらしい。


教会の横なのになぁと思ってしまったのは、私の偏見だ。労働に対価は必要。先生って、本当に大変だと思うしね。


ルカくんは転々としているし、フェレルさんが教えられるから通う必要はないとのことだった。街に暮らしていたとしても、何らかの事情で通っていない子もいるそうだ。


勉強以外にも友達とか……と、思わなくもないが、まず転々としている時点で通えるはずがない。体験入学みたいに通った所で、勉強の進捗が違って頭の中がこんがらがるかもしれないしね。後、ルカくんは可愛いから、ガキ大将に絡まれるかもしれないし。心配事は多い。


でも、どっかで同年代の子と触れ合える機会があればいいのになぁ、と思うモモンガである。


「ここにする。38番」


ん? 今、あの石「クプクププ」って鳴いたよね? ルカくんの時だけ演出有りなの?


いいけどさー。鳴くことも教えといてほしかったよ。耳に手を添えちゃったじゃん。


「私は、30番にします」


「えっとね、えっとね……20番」


なるほど。ルカくんは、きちんとルールを理解しているようだ。偉い! 賢い! 可愛い! 好き!


でもね、大人は汚いんだよ。大人気ないと言われても、勝負事には手を抜かないよ。四隅は全部黒にして、盤面を染め……


ん? 1個目の角、取られちゃった。


ま、まぁ、1つくらいいいでしょう。初めての子供相手なんだから、ハンデは必要だよね。残り3つは……


おや? おやおや? 2個目も取られてしまった。なぜに?


おかしいなぁ。私が取る予定だった3つ目の角にも、白い石が置かれたよ。


ねぇ、石さん達、ルカくんに加勢してない? いや、この場合、加勢できるのは盤面さんの方か。置く場所を光らせてあげているとか。


って、そんな最低なことを考えていたせいで、四隅が全部白にっ!


ルカくんの実力を、冗談でも疑ったせいだわ。醜い大人でごめんなさい。ここからは、ルカくんを子供と侮ることなく勝負するよ。四隅取られたとしても勝ち筋はまだある!


なんてね。心折ることなく、頑張っていた時間もありましたよ。


結果は惨敗……ルカくんは飛び跳ねるように喜んでいて、レンジャー達もルカくんの周りで騒いでいる。


ふっ、敗者には孤独が似合うぜ。


「リリ、もう一回。もう一回しよ」


「何回でもしましょう。次は負けませんよ」


「僕も負けないよ」


いい笑顔。その笑顔を引き出せるなら、何回でも負けるよ。まぁ、私がただ単に弱すぎるって可能性が、浮上しているだけなんだけどね。






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