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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
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14.呼び出し

今日も8時に起きてしまった私は、寝ぼけまなこで果物を食し、ラジオ体操ならぬモモンガ体操で目を覚まさせ、ルカくんと裏庭で遊んでいる。どっちが早くジャングルジムに登れるかの勝負だ。


どっちが早いって? リーチの差でルカくんだよ。


なお、6匹で勝負しても私はビリでした。みんな早すぎるわー。


私も含めて、6匹の耳が、遠くから近付いてくる乗り物の音にピクついた。


ここ数日この家で過ごしていて、この辺りは車もバイクも走っている音はしなかった。時々、パカラパカラと「馬だろうなぁ」と思う音くらいだった。


それなのに今、猛スピードで近付いてくる、前世で言うところのエンジン音がする。


たぶんバイクかな。昨日の街歩き中に耳にしたバイク音と似ているから。


耳が痛いほどの急ブレーキ音が聞こえてきて、ブランコに乗っていたルカくんがザザッと足で揺れを止めた。


「すみません! フェレルさんはいらっしゃいますか! すみません!」


門の前で必死に大声で叫んでいるだろう、男性の声が響いている。


聞いたことがある声のような気がするが、この街に知り合いはいない。気のせいだろう。


男の対応をしようとしてだと思う。ルカくんが急いで行こうとしたので、「ダメですよ」と止めている。


どこの誰か分からないのに、可愛い子供に対応させる訳にはいかない。いくら安全でもだ。もしもがあるかもしれない。


昨日フェレルさんに教えてもらったことだが、必ず手のひら認証で門を開けないと中に入られないそうだ。一度開けても、閉めたら鍵がかかるらしい。オートロック機能である。


ルカくんは登録されていないらしく、庭で遊ぶ分には大丈夫だけど、門の外には出ないように言われたのだ。


家の鍵は? と思ったら、「窓を一箇所開けておけば、レンジャーの誰かに中から開けてもらえるよね。だから、外に出る時は、絶対に窓を開けておくんだよ」と注意された。


登録は師匠さんしかできないらしく、ルカくんはすでに理解しているとのこと。


だったら、師匠さんがルカくんと一緒にいる間にできなかったの? と思わなくもないが、人様の家のことなので文句は言わなかった。


まぁ、後から『クソが』と毒づきはしたけどね。子供を蔑ろにすんなや。小さくても意外と分かってんだよ。


「はいはい、どちら様ですか?」


「ああ、よかった! いた! ギルマスから頼まれて、呼びに来たんです!」


「君は昨日の……私、何かやらかしました?」


もしかして、昨日本屋にギルド長さんを呼びに来た、赤毛の人だろうか? あの人、誰かを呼びに行く担当なのかな? 大変だろうなぁ。


「そうではなくて、えっと、大声では言えないんですが……昨日捕まえた奴らが全員、何者かによって殺されたんです。それで、ギルマスがあなたを呼んでほしいと」


小声でも聞こえるよ。モモンガは耳がいいからね。


「えっと……なぜ私に?」


「聞かれても『さぁ?』としか。俺は急いで呼んでくるようにって言われただけですので」


「んー、よく分からないけれど、行きます」


「ありがとうございます! 用意ありますよね? 待っていますね!」


「バックれたりしませんよ」


「そうではなく、俺のスクモートで一緒に行った方が早いと思いますので」


フェレルさん、苦笑いしてそう。足音がこっちに近付いてくるな。出かけるよって報告かな?


予想通り顔を覗かせたフェレルさんは、ルカくんが何もせず立っていたからか、一瞬顔を伸ばしていた。でも、すぐに微笑み、ルカくんの頭を撫でた。


「ルカラウカ、聞こえていたかもしれないけれど、ギルドの方で何かあったみたいだから協力してくるよ。私が帰ってくるまで、門の外には出たらダメだよ」


「うん、師匠。気を付けてね」


「ああ、私は行きたくないんだけれどねぇ。何でこうも巻き込まれるのか」


ため息を漏らしたフェレルさんは、最後にルカくんの頭を柔らかく叩いて、裏庭から出て行った。


「ルカくん、何をして遊びましょうか?」


「滑り台にする」


「では、私はルカくんの肩に乗ったまま楽しみますね」


笑顔で頷いてくれるルカくんの頬に、肩から頬擦りするように体を擦り付けた。クスクス笑っている声に安堵する。


ルカくんはさっき、素直に頷く前に唇を引き結んだ。ほんのわずかな時間だったから、本人さえも無意識だったかもしれない。


一緒に遊んでいなくても、家の中にフェレルさんが居るというのは安心するし、嬉しかったのだろう。「夕食は、何をお願いしようか」なんて話していたから、尚更だったかもしれない。


耳を疑いたくなるような事件だったし、マジで怖い、しんどい、大量殺人とかなにそれ、信じらんない、そんな話持ってくんなし、ルカくんの平穏を壊すとか、その犯人許せないわー。さっさと捕まってくんないかな。


「ねぇ、リリ。レッドさんとブルーさんは?」


「へ? あれ? いないですね。家の中でお昼寝中ですかね?」


いや、まさかね。レッドさんはもしかしてだけど、ブルーさんまで……まさかだよね?






明日の金曜日に、フェレル視点を2話投稿します。


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