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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
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4.正気じゃない

部屋の前から階段まで走り、滑空で階段下に降りる。そして、ダイニングまで走ると、フェレルさんはナッツ類とお酒を用意していた。


「フェレルさん、戻りました。テーブルに上げてもらえませんか?」


「ん? この机だと登れないかい?」


「いいえ。登れますが、引っ掻き傷を作ってしまうかもしれませんので」


「傷くらい構わないよ。師匠も気にしないから」


いいの? 本当に? んじゃ、遠慮なく。よじよじよじっとな。


「リリも、胡桃やカシューナッツ食べるかい?」


「私はお腹がいっぱいなので、遠慮しておきます。戻ってきたのは、フェレルさんと話したいと思ったからです」


「私もリリと話したかったんだよ。戻ってきてくれると思っていたよ」


フェレルさんは、ウイスキーだと思われるお酒を口に含んだ。飲み慣れているのか、お酒が強いのか、美味しそうに味わっている。


「リリ。私から話すか、君から話すか。どちらがいいかな?」


え? すっごい嫌な聞き方なんだけど。私の話って「これ何?」っていう可愛い質問だよ。って、笑い出した。酔っ払ったの? 早くない?


「すまない。リリがあまりにも嫌そうな顔をするから面白くてね。白状すると、私の話は重たいよ。でも、君には知っていてほしいことなんだ」


えー、んー、仕方がない。私は、ルカくんとフェレルさんを癒すペットだ。お世話になる身だしね。受け入れてみせようじゃない。でも、ため息を吐くのは許して。


「はぁ、分かりました。フェレルさんの話からお願いします」


「ありがとう。君に出会えたことは、本当に幸運だったよ」


あっさり顔の男前め。爽やかに笑ってないで、覚悟が勘違いと気付く前に、ドドンと話しちゃっておくれ。


「さっき師匠の話をしたよね。あれは全部、表向きの話なんだよ」


ん? そこの表裏を分けないといけないって、何?


「順を追って話すね。入国時に、私とルカラウカが親子だと申請していたよね」


「そうですね。違うと思っていたのでビックリしました」


「うん、違うよ。ルカラウカは私の子供じゃない。あの子は、私の姉弟子マアラの子供でね。私と出会ってから、まだ2年と半年ほどしか経っていないよ」


んん? 師匠さんでもフェレルさんでもなくて、もしかしてルカくんの話? それが重たいの? やだ、すでに胸が痛いじゃない。


「3年前に、突然師匠の元にルカラウカが送られてきたそうだ。あの子が、まだ4歳の時だよ」


「送られてきた、ですか?」


「そう、見るからに貧しい身なりの男が、ドロドロに汚れた子供と一緒にやってきた。その男は子供に手紙を握らせ、何も話さず姿を消している。呼び止めたが、振り返ることすらしなかったそうだよ。師匠は困惑しながらも、子供が持っている手紙を読んだ。手紙には、子供の名前がルカラウカということ、マアラが命を狙われていること、ルカラウカを死なせたくないから預かってほしいことが書かれていたそうだよ」


「マアラさんはルカくんを手放さないといけないほど、誰に、どうして命を狙われていたんですか?」


フェレルさんが、小さく首を横に振った。


「マアラからの連絡は、ルカラウカが生まれた4年振りだったそうだよ。ただ出産のこともたった一行だけの報告で、その時の手紙には『狂花』の研究を始めたと長々と書かれていたそうだ」


「マアラさんは、その研究で何かを得たから、狙われたってことですか?」


「さあね。情報が少なすぎて、もしかしたらって頭を過ったのが『狂花』の研究だったってだけだよ。『狂花』については、師匠も私も一度は研究を試みた。しかし、花自体が本当に存在するのか、と疑いたくなるほど見つけられなくて断念している。狂花する動物がいるんだ。咲いていないはずはないのだけれどね」


見つけられないか……。私もまだ見たことがないけど、クークーさん達は見つけたら焼くか凍らせるかだってジオさんが言っていた。だから、咲いていないはずはない。森の深くに咲くことが多いのかな?


「ルカくんは、どうしてフェレルさんと旅に出ることになったんですか?」


「久しぶりに師匠と情報交換をしようと思って訪ねたら、『儂はマアラのことを調べる。弟子を放っておけん。この子はお前に任せる』って託されたんだよ。どうせ師匠が、すぐに突き止めるだろうと思っていたからね。本当に軽い気持ちで、師匠とマアラの帰りを待つことにした。しかし、待てど暮らせど便りがなくてね。1年待って、待ち続けることが正しいのかっていう不安が広がった。マアラを探すために、自分も師匠の後を追うべきではないかってね。それと同時に、もしかしてわざと連絡をしないのかという疑問を抱いた」


「どうしてですか?」


「師匠は、Sランクの冒険者でもあってね。私の1つ上のランクだね。その師匠が連絡ができないって、まず無いと思うんだよね。だから、できないのではなく、しないんじゃないかって思ったんだ。そして、しない理由も考えたよ」


「もしかして……ルカくんの居場所を隠すためですか?」


ゆっくりとフェレルさんに頷かれて、さっきから胸に落ちていた鉛が一層重くなった気がする。


「マアラの手紙に『ルカラウカを死なせたくない』と書いてあったと、私は聞いている。理由は分からないが、ルカラウカが狙われている可能性があるのなら、1つの所に留まることは正解じゃない。で、私は違う方向からマアラの事を調べようと、ルカラウカと一緒に旅に出たんだ。一石二鳥だと思わないかい」


私は目を閉じて、歯を食いしばった。何故なら暴言を吐きそうになったからだ。


あったまおかしいんじゃないの! はぁ? はぁ? はぁぁぁ? あんな小さな子供の命狙うとか、正気じゃないわ。どうしようもないクズだわ。てめぇが死ねよって話だわ。子供から母親を取り上げんじゃないわよ! 木からぶら下げてサンドバックにするぞ! ゴミがよぉ!






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