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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
サンリカ国 ウスリー・コモウェルの街
24/64

2.ウスリーの街

おおう! 出入り口がR型の建物が多い! 窓には花が飾られていて華やかー! 建物の角は下半分にレンガが埋め込まれていて、後、茶色の板で模様? アクセント? をしている壁が可愛い!


ググ先生の写真では、石積みの住宅や、瓦屋根と石畳の街並みがあったけど、ウスリーはフランスのアルザス地方の景色に似てる。素敵。


キョロキョロと必死に見回していると、ルカくんに両手で持ち上げられた。


ん? どした? 私の可愛さを、街の人にアピールしたいの? キュルルンって顔しようか?


「どう? こっちの方が見えやすい?」


ズッキューン! なんて優しい子! 可愛い子! お姉さんが守っちゃる!


心遣いが嬉しくて『プププ』と鳴こうとしたが、その前にフェレルさんから「ルカラウカ。危ないからダメだよ」と注意が入った。


「ごめんなさい」とシュンとしながら私を戻すルカくんに笑ってほしくて、帽子からルカくんの腕へ、腕から肩へと移動した。ルカくんは嬉しそうにクスクス笑っている。


すまん! フェレルさん! フェレルさんは正しい! 分かってる! ただ小さい子には笑っててほしいんです!


チラッとフェレルさんを窺うように見ると、肩をすくめられただけで注意されなかったので、肩にいるのはオッケーのようだ。


今後は、ルカくんの服装次第で肩にいることにしよう。服に穴を開けたくないからね。高そうな服の時は、絶対に登らないよ。


「ルカラウカ、何が食べたい?」


「師匠が美味しいって言ってた、ルトゥトが食べてみたい」


「あれは美味しいよ。じゃあ、今日はそれを買って、食材の買い出しは明日以降にしようか」


へー、どんな食べ物なんだろ? 食べられないけど、楽しみ。


フェレルさんはウスリーの街に詳しいのか、時間をかけることなく目的の屋台を見つけ、海鮮とお肉の2種類のルトゥトとカップ入りのバナナを買った。


そして、足取り確かに街中を進んでいき、立派な門の一軒家で歩を止めた。一軒家は、下半分にレンガ・上半分に鉄の柵という塀に囲まれていて、柵の間から木や草で庭は見えないようになっている。


え? まさかフェレルさん、ウスリー出身者でご実家とかなのかな? でも、実家ならご飯買わないかも。ってことは、家保持者?


屋台が並んでいた所に比べれば人通りは少なくなったが、歩いている人はチラホラいる。ここでは話すことができないので、家の中に入るまで大人しく……していようとしたのだが、門を開ける方法が入国時と同じ手のひら照合だったため、毛を逆立て、尻尾もピンと伸ばしてしまった。


はい、そうです。盛大に驚いたのです。


「リリ、どうし……リリ、いい匂いする」


私が驚きすぎたせいで、ルカくんが慌てて様子を確認しようと顔を横に向けたら、あら不思議。猫吸いや犬吸いならぬ、モモンガ吸いになっちゃった。


私はやったことないけど、モモンガ吸いってあるのかな? まぁ、ルカくんもスーハーしているっていうより、顔が私にぶつかっちゃっただけだけどね。臭くなくてよかったよ。今後も気を付けておくね。


「色々、珍しいのかもね。さぁ、中に入って休憩しよう」


「うん」


家の中に入ったら白状しますよ。というか、疑問に答えてください。知りたいことが、たくさんあるのよ。


道に等間隔であった街灯もだし、少し浮いて動いていたオープンカーやバイクもだし、お金のことも教えてほしい。


玄関も手のひら認証なんですね。鍵を持ち歩かなくていいって、素敵ですね。失くす心配ないもんね。


2階建てのアパートくらいの大きさの家の中に入ると、フェレルさんは玄関横にある黄色の丸いスイッチを押した。すると、見えている範囲が全て明るくなった。


目の前は大きな居間で、壁にはキッチンと冷蔵庫がある。ダイニングテーブルや食器棚もあり、奥の扉向こうにはソファが見えている。


私、毛を逆立てていませんよ。目を点にして固まっていますんでね。


「先に旅の埃を落としてから、ご飯にしようか」


「僕、リリと入りたい」


リクエストに応えてあげたい。でも、ごめんねぇ。モモンガは、体を濡らすと低体温になりやすいから、水は避けた方がいいのよ。私もチャメルを洗う時、めっちゃ気を付けてたんだよね。


え? 洗ってるじゃん! って?


そりゃ、あーた。チャメルってば、たまに自分の排泄物で汚れてたのよ。ビックリでしょ。見つけた時は「何やってるの」って大笑いしちゃってたよ。


「ルカくん、ごめんなさい。私、体を濡らせないんです」


「そうなの? お風呂はどうするの?」


毛繕いをしているから、大丈夫なんだけど……


「もしお手数じゃなかったら、固く絞った布で拭いてもらえますか?」


たまにね。本当に、たまにお願いすることにするね。


「うん! 任せて!」


「話は纏まったね。さぁ、ルカラウカ、お風呂場に行こう」


荷物を下ろしたフェレルさんに背中を軽く押されながら、ルカくんはソファが見えている部屋と違う部屋に入っていった。


机に移動済みの私は、「あそこが浴室なのね」と2人の背中を見送った後、部屋の中を観察した。


族長さんが言っていたように、キッチンも冷蔵庫も普通なんだな。ここにはオーブンぽいものもあるし。


隣の部屋は、どんな感じなんだろ? 見てみたいな。どっかに登らなければ、爪大丈夫だよね?


好奇心を抑えられず、机から隣の部屋に向かって滑空した。ソファの上か床に着地したかったのに、ドアの枠の所で一旦留まってしまい、爪で傷付けていないか心配になる。


しかし、傷が残ってしまったとしても後の祭りだ。謝って許してもらおうと心を強く持ち、今度こそソファの上に着地した。


さっきの部屋もだけど、部屋の中に緑が多いな。ケースに入れて飾られているものもあるし。やっぱりフェレルさんの家? 植物学者だって言ってたよね。


家電や部屋の感じが前世と似ているから、テレビもあるかもと思ったけど、テレビは無いのか。窓際にあるのはチェス? 私オセロならできるのに、残念。


本も数冊置かれている。学者さんの家なら、本棚だけの部屋とかありそうだな。


「あれ? リリー、どこー?」


さっきまで居た部屋から、ルカくんの声が聞こえてきた。シャワーだけだったのだろう。もう出てきたようだ。


「隣の部屋ですよー」


「どこどこ? あ、いた!」


ペットの私が癒し担当のはずなのに、私がルカくんに癒されっぱなしだわ。言動が全て可愛い。ありがとう。


「体拭くよ」


ルカくんに腕を差し出されたので、肩に乗ってほしいのだと分かり、腕を伝って肩に乗った。撫でてくる手が優しく、私も尻尾でルカくんの手を撫でる。


長い尻尾の有効活用を発見して、満足じゃ。






リアクション・ブックマーク登録・読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。


第二章もよろしくお願いします。

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