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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
19/64

19.子供を助けるよ

後1日もあれば、サンリカ国に到着する地点までやって来た。夜中の2時を回ろうとしていて、もう少し進むか眠って英気を養うかを考えていると、木々が揺れ、草が踏みつけられる音が聞こえてきた。


ん? エンさんと別れてからは、リスやうさぎ、アライグマと挨拶を交わすっていう平和しかなかったのに。ここにきて、また事件? こんな夜中に何が起こっているの?


平常心を保っているようだが、心臓が飛び出してしまうかもと思うほど、ガクガクブルブルしている。絶対に音を立てないぞと、身を縮め警戒レベルを最大まで上げた。


何個もの走る音が近付いてくる。「逃げろ!」「お前はこっちだ!」という焦っている声が耳に届くが、姿はまだ確認できない。


息を顰めていると、フードを被った子供が、転けるように視界の隅に現れた。呼吸音が激しく、少しフラついている。それでも、頑張って走ろうとしている。


そして、その子を飛び越えて、1匹の虎が進行方向を塞ぐように着地した。


子供は後ろに大きく倒れ、かすかに「ぁ……ぁ……」と恐怖に震えている声を漏らしている。


少し離れた所では、爆発音のような音が響いた。


は? え? あの虎、頭に花が咲いてる! あれって狂花してるってことだよね! え? え? 危ない! 助けなきゃ!


狂花した虎が、低く唸りながら地面を蹴った。


「モモン・ガー、グリーン! 護ってください!」


間一髪で透けた緑色の膜が、虎と子供の間に現れた。虎は緑色の膜で三角飛びをし、元いた場所に着地している。


咄嗟に両腕で顔を隠していた子供は、恐る恐る腕を下ろし、目の前で飛んでいるグリーンレンジャーに目を点にしている。


説明しよう。グリーンレンジャーは、ありとあらゆる攻撃から身を護れる、鉄壁の防御を作れるのだ。狂花していたとして、虎の牙や爪で壊せる訳がない。


グリーンさん、リボン似合ってますね。首に着けられている大きなリボン、めちゃカワです。それと、イエローさんと一緒でプラチナなんですね。ちょっとだけグリーンさんの方が濃いように感じますね。可愛いと思います。


「モモン・ガー、ゴールド! 即死をお願いします!」


音もなく隣に現れたゴールドレンジャーだったが、『ワンワン(悪い、俺にも無理だ)』と悲しそうに目を伏せた。


「え? あれ、銃じゃ倒せないんですか?」


『ああ、首を落とさないといけない』


「それは無知で、大変申し訳ありませんでした」


『気にするな。シルバーを呼んでやれ』


微笑みを残して消えるなんて、ゴールドってばカッコいい! 惚れてまうやろ!


って、今はバカをやっている場合ではない。早く倒さなきゃ。


「モモン・ガー、シルバー! お願いします!」


シュタッと虎の前に低姿勢で現れたシルバーレンジャーの腰には、長剣が2本、短剣が1本差さっている。たすき掛けをしているリボンの先に、剣が固定されているように見える。色見はゴールドさんと同じモザイクで、片目は切り傷で塞がっていて、片方の目で虎を鋭く見据えている。


そして、たぶん親指で鞘から剣を少し上げた瞬間、銀色の閃光が走った。シルバーレンジャーは虎の向こう側に瞬間移動していて、剣を一振りし、鞘に収めると同時に虎の首が落ちた。


な、な、な……何が……って、映画の一コマかーい! 強すぎでしょうが! 何度も言うよ! 私のせいだよ、私のせい! でもね、おかしくない!? しかも、シルバーさん、私を見上げて頷いて消えるなんて渋すぎない? 一言も発しなかったよ。みんな、個性豊かで可愛すぎる!


ザッザッという大きめの足音が聞こえて、悶えていた気持ちが落ち着いた。まだ狂花した動物がいるのかもと身構えたが、現れたのはメロンイエローの髪をポニーテールにしている線が細い男性だった。


「ルカラウカ! ぶ、じか……なんだい、これ?」


クセのない面持ちというか、あっさり系のものすんごい男前が、綺麗なモスグリーンの瞳を見開いている。


「し、ししょう」


尻餅をついた子供は腰が抜けて立てないのか、顔だけを男性に向け、縋るような声を出した。ハッと体を揺らした男性は「ルカラウカ!」と声を上げ、子供を抱きしめた。


ねぇ、グリーンさん。どうして男性と子供を見つめているんでしょうか?


『何をしているの? 早くホワイトを呼んで、治してあげなさい』


え? あ、はい、ホワイトさんを呼ぶんですね。分かりました。ですがね、グリーンさんが私に話しかけたから、木の上にいる私もバレてしまいましたよ。


『は? バレていないと思っているの?』


ああ、ごめんなさい。怒らないで。はい、大声で皆さんを呼んだから、すでに子供にはバレていますよね。本当にごめんなさい。


『そうそう、レッドが呼ばれなくて拗ねていたわよ。今度呼んであげてね』


え? あ、はい、今度呼びます。本当に色々とありがとうございます。


私のお礼を最後に、グリーンレンジャーはクルッと一回転しながら姿を消した。


ふう、笑顔で消えてくれてよかった。というか、声に出さなくても会話できるんですね。ううん、さっきゴールドさんは人語でも話してくれてましたね。何でも大丈夫なんですね。さすが、ハイパーモモン・ガーさんですね。






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