16.ん? もしや、変わらない?
クークーさんに運んでもらいながら、「建てるならここかもと言われていた……」と説明しながら案内をすると、すでに何人かの村人が興味津々に家屋を見ていた。
クークーさん達に気が付くと「もしやクークーの家なのか!?」と詰め寄ってきたが、クークーさん達は口を開けて呆けていて、答えられていない。
驚くよねぇ。本当に建っていたことにもだろうけど、この家だけログハウス風なんだよね。窓もガラスっぽい何かだしね。
ってか、さっきは気付かなかったけど、カーテンかかっているな。グレーさん達、もしや家具も全部造ってくれてる? 最高にカッコいい仕事をしてくれているのか?
「そうです。この家は、私からクークーさんとランランさんへ贈り物です」
周りの人達の大きなどよめきに、クークーさん達3人の意識が戻ってきた。おっかなびっくりというように唾を飲み込みながら見てくるクークーさんとランランさんに比べ、族長さんは私に向かって祈りだしてしまった。
あの人に頬擦りするの、やめようかな? 危険が気がする。
「クークーさん、ランランさん、中を確認してみてください。不便がありそうなら言ってくださいね」
グレーさん達の仕事は完璧だと思うけどね。どんな間取りにしているのか、私も気になっているのよ。ただ思うのは、やりすぎじゃなかったらいいなぁ、くらいかな。
クークーさんの左手に乗ったまま、緊張しているクークーさんとランランさんと家の中に入った。
いや、窓の外を見ちゃったよね。システムキッチン? どこから水を引いてきたの? 冷蔵庫? どうして電気無いのに冷やされているの? 調理器具や食器類は揃っていて、4人掛けのダイニングテーブルに……間接照明? え? だから、電源どこ? お風呂とお手洗いがあって……いや、お手洗い? 水洗トイレ? なんで? ……あ、寝室はダブルベッドなのね。でもさ、低反発マットレスって、どうやって作ったの? ねぇ、私の理解を遥かに超えているんだけど……グレーさん達、ねぇ、これどう説明しろと?
「これは……人間達が住む街と変わらない仕様ですな。まさか森で見ることができるとは……」
うん? 街並み可愛いなぁくらいしか思っていなかったけど、街ではこれが普通なの? よくなかったけど、よかったー。仕組みは分からないけど、使い方は説明できるからね。
「族長さんは、街に行ったことがあるんですか?」
「ありますよ。クークーも子供頃に一度ありますが、小さすぎて覚えてないでしょうな」
「ああ、なんかすごかった気がするのは覚えている……」
「では、使い方について、クークーさんランランさんのお二人共に説明しますね」
と、前世で馴染みある物達を説明した。使い方も変わらなかったので、堂々と話せたものだ。
小屋の方にも移動して、中を確認した。寝床や水飲み場が設置されていて、すぐにジオさん達には移ってきてもらっても問題なさそうだった。
新築に日用品も揃っており、洋服や下着、その他持って行きたい物を移動させるだけだったので、何人かの男衆に手伝ってもらったら、簡単に引っ越し作業は終わった。ジオさん達も移動してきて、十分な広さの小屋に喜んでいた。
私はその間に、人目が無いところでグレーレンジャーを呼び、「家具やキッチンは、ずっと使えるのか? メンテナンス等は必要ないのか?」を念の為、確認した。
『いらねぇよ。世界が終わるまで使える』と返され、「世界が終わるまで? そっか、なら問題ないね。あ、あの名曲歌った方がいい?」と深く考えないことにした。
私は、小さくて可愛いモモンガだ。理に沿っているのか反しているのかさえ分からないことを、悩むだけ無駄というものだ。
夜には広場で宴会が催され、私はりんごとぶどうと野菜類を頂いた。ささみが食べられるから焼かれた狐の肉にチャレンジしてもよかったが、今回は止めておいた。気持ち的に未知のお肉より、肉は鳥から始めたい。
そして、お腹がいっぱいになると、ダオちゃんの背中でぐっすりと眠りについたのだった。
ちなみに、ダオちゃんがアップーと呼んでいたのは、りんごのことだった。ググ先生で調べてみても林檎と表記されたから、正式名称はりんごでいいんだと思う。ただこの村の人達は、全員アップーと呼んでいた。
日本でも東と西で呼び方が違う物があったから、それと同じなのかも。
私の翻訳言語は立派で、みんなと問題なく会話できたから、本当に言葉の心配はしなくてよさそうだ。転生特典様々である。ありがとうございます。




