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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
15/64

15.どの世界にもあるよね、井戸端会議

ルンルンでクークーさんかランランさんに報告に行こうと、適当に屋根をつたって移動をしていたら、いい匂いが漂ってきた。


誘われるように方向転換して向かうと、10人程の女性が料理を作っていた。大きな葉の上に並べられている料理は、今夜の宴会用なんだろう。


「鼻垂れ小僧だったクークーが、結婚だなんてねぇ」


「本当にねぇ、しかもランランとって言うじゃない。びっくりよねぇ」


「リンリンと手を繋いでいた、抱き合っていたって嘘だったんでしょう。騙されたわー」


うむ。どこの世界だろうと、おばちゃん達の井戸端会議はあるんだな。


「ローローってば、小さい頃はクークーに勝てていたから、次の族長の座を狙ってたんだって」


「らしいねぇ。リンリンと恋人なんだろ? 本人は『違う』って言い張っているらしいじゃないか」


そうなんですよ。実は彼、リンリンさんじゃなくて、ランランさんが好きなんですよ。だから、余計にクークーさんの評価を落としたかったんだと思うんです。卑怯ですよねぇ、本当に。あ、これ、内緒でお願いしますね。


「ローローが色々吐いているんだから、リンリンも早く認めちまえばいいものを」


「あの子、まだ認めてないのかい? 強情だねぇ。聖獣様を嘘吐き呼ばわりして、罰が当たったらどうすんだろうねぇ」


「もう当たっているわよ。ジオ達を取り上げるらしいわ」


「ええ!? それは本当かい?」


さっきから40から50分くらいしか経ってないよ。もう話回ってるの? おばちゃん達、さすがだわ。


「ジオといえば、ピボノーアの長なのにねぇ」


「まぁ、巫女のランランが居たから世話を任されていたんだし、仕方ないわよ」


「私はざまーみろって思うわ。横柄だったもの」


なんと! ジオさん、長だったの!? 勝手にガオさんがそうなんだと思ってた。勘違いしててごめんなさい。


「それはそう。ローローとリンリンと一緒に、あの人達もピアアーノに引っ越せばいいのよ」


「ピアアーノねぇ。あの子達、本当に馬鹿なことをしたものだよ」


どうやらローローさんとリンリンさんの処罰は、もう決まっていたようだ。


おばちゃん達が悲壮感を漂わせるピアアーノとは何か検索したら、この村ボアアーノの兄弟村で、ここよりも外側に近いところにあるとのこと。ただこの村とは違い、【熊獣人の村】とだけ書かれているので、ピボノーアは住んでいないようだ。


「そういえば、この前ピアアーノから、食糧を分けてほしいって来た男がいただろ?」


「いたわねぇ。きちんと分けてあげたのに、盗みまでした男が」


「そいつがポロッと溢したらしいんだが、ピアアーノは咳風邪が蔓延していて数名死んだそうだよ。しかも虎獣人が来て、村の中の物を壊しまくったんだと。虎獣人が気に入った娘を差し出して、事なきを得たらしいよ」


「うわっ、最低ね」


なるほどねぇ、治安も悪ければ食糧不足でもあると。そんな村に移住させられるなんて、歓迎されないだろうな。食糧不足なのに、食い手が増えるんだもんね。


まぁ、森の中の生活って自給自足っぽいから、こことあんまり変わらないだろうけど、ローローさんはともかくリンリンさんは無理だろうなぁ。予想だけど、ずっとランランさんに押し付けてきたような気がするもんな。


私には、この罰が重いのか軽いのか妥当なのか、全く分からないけど、おばちゃん達が「可哀想」じゃなくて「馬鹿なことをした」って判断しているところを見ると、妥当なんだろうな。ランランさんを貶める嘘だけなら強制肉体労働くらいだったかもしれないけど、ダオちゃんの件は厳しめじゃないといけなかったんだろうな。


話が旦那の悪口に移りはじめたので興味が無くなり、また屋根をつたいながらクークーさんかランランさんを探しはじめる。


藁を小屋に運び込んでいるクークーさんを見つけ、小屋の屋根から声をかけた。


「クークーさん!」


クークーさんは、不思議そうに辺りを見回している。


「屋根です、屋根」


私の姿を確認したクークーさんは、わずかに微笑んできた。少しまだ固い気はするが、動物好きだろう彼の笑顔は可愛らしい。


「聖獣様、どうされました? 私に用事ですか?」


「はい。クークーさんとランランさん、そしてジオさん達の家が完成しました。私からの結婚祝いですので、どうか受け取ってください」


「はい?」


分かるよ、分かる。このモモンガ何言ってんだ? 聖獣だからって調子乗ってんなよ、だよね。分かるよー。でもね、本当に家建ってるから。モモンガ嘘吐かない。信じて。


「案内をしますので、ぜひランランさんと見に来てほしいんです。それで、引っ越しなんかも、ちゃっちゃっとできないものかと思いまして」


ん? 引っ越しだと家具が必要になるよね。グレーさん達は、どこまで造ってくれているんだろ? 窓から中を確認しとけばよかったな。私ったらツメが甘い。でも、可愛いから許す。


「えっと……ランランとですね。呼んできます」


狼狽えながら出入りしていた小屋の隣にある家屋に入って行き、すぐにランランさんと族長さんと一緒に出てきた。ランランさんは困惑気味だが、族長さんは胸が躍っているようで顔がペカーと輝いている。そこまで期待されると、私が動揺してしまいそうだ。


「で、では、皆様。案内しますね。屋根の上からで申し訳ありませんが、ついてきてください」


「聖獣様。よろしければ、私の肩に乗ってください」


クークーさんの親切な申し出に、なぜか族長さんが「なんと! クークーめ、羨ましいことを」と悶絶している。


「いえ、私の爪は引っ掛かりやすくなっている為、怪我させてしまったり、服を破いてしまうかもしれませんから。でも、ありがとうございます」


「問題ありません。怪我は治りますし、服も直せばいいだけですから」


そお? そこまで言うんだったら、私乗っちゃうよ。2回も断るのは失礼かもしれないし、クークーさん、あれでしょ。私を触りたいんでしょ。その理由が欲しいんでしょ。


「では、お願いします。あ、でも、肩ではなく手のひらの上でもよろしいでしょうか? 爪は立てないようにしますので」


「どこでも構いません」


クークーさんが両手を並べて、手のひらを上に向けてくれた。ぴょんとジャンプし、その手のひらに舞い降りるように着地する。


サービスで頬擦りしてあげよう。動物好き仲間だからね。ふふふ。顔が溶けちゃったかぁ。満たしてあげられたようで、私も満足じゃ、満足。


族長さんが隣で歯噛みしているから、機会があれば頬擦りしてあげようではないか。この人もきっと動物好きだろうからね。もちろんランランさんにもね。






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