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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
14/64

14.羞恥心を捨てようとして……

ジオさん達にお礼を言われ、クークーさん達とも別れ、私はクークーさん達が家を建てるなら? の土地にやってきた。


ちなみに、ジオさん達は、ジオさん達の寝床が完成次第、迎えに行ってもらえるようになっている。賢いから自分達で突撃しそうな気もするが、そこはご愛嬌ということで受け入れてもらおう。


ランランさんのご両親はピボノーアを取り上げられるという現実に、ようやく事の重大さを理解したようだった。ランランさんに「本当に何もしていないのか?」と震える声で確認をして、膝から崩れ落ちていた。猛省しろってんだ。


話は戻り、どうして私がこの空き地に来たのかと言うと、新婚さんの家を建ててあげようと思ったからである。


モモンガに建てられるの? と思った、そこのあなた。正解だ。


プリティすぎる私は、強く握られれば死んでしまう小動物にすぎない。無理だ。


でも、私にはレンジャー魔法という奇天烈な魔法があるのだよ。レンジャー魔法を設定する時に、「巣箱を素早く造れるって素敵だよね」と深く考えずに入力してしまったのだよ。


今となっては、毎夜ウロを見つけられないし、木の上で身を晒して眠るのも緊張の連続だよね、グッジョブなんだけどさ。なにせまだ使い方が分かっておらず、造ってもらったことがない。それでもぐっすりスヤスヤなんだけどね。


あ、神経が図太いんじゃないよ。モモンガだから睡眠に抗えないだけなの。たぶん、きっとね。そのはずのなの。


まぁ、ここいらで使えるようになって、大きな家も建てられるか検証しようって話なのだよ。分かったかね、諸君。


「ふっふっふっふっふ。って、馬鹿なナレーションを考えてないで、本当にどうにかしないとな。狂花した魔物とエンカウントしない保証はないんだから、戦える術は欲しいし」


レンジャーが変身する時、ライダーもだけど、媒体があるんだよね。でも、私にはその媒体がない。まぁ、私自身が変身するわけじゃないから当たり前なんだろうけどさ。


魔法の呪文は分からないし、「出でよ。レッド」とかでも現れてくれなかった。


事件に巻き込まれた人みたいに、強く願えばいいのかな? だけどなぁ、困っている所にタイミングよく現れるのがヒーローなわけで……でも、巻き込まれた人は周りに助けを求めている状態か……


うん、肉球を合わせて願ってみよう。


「レンジャー、お願い。家を建ててください」


うん、何も起こらないね。チラッと目を開けて見て、何も起こっていないって結構恥ずかしいね。


あれか? 両手合わせるんじゃなくて、変身ポーズがいるのか? いや、変身ポーズも多種多様だよ? どうせいって言うの?


「レンジャー……私はモモンガ……呼び寄せる……レンジャー……私はモモンガ……」


ま、ま、まさか! 呼び寄せと言えば、あれか? あれなのか? で、でも、あれはジャンルがちょっと違うんだけど……呼び寄せの装置もいるし、乗り込まないとだし……


ええい! それでも試してみるしかない!


両手を挙げて唾を飲み込み、大声で来てほしいレンジャーを叫ぶ。


「モモン・ガー、レェェッド、じゃなくて! モモン・ガー、グレー!サモ——


いや! 最後まで言わせて! あの名作は呼び寄せ言葉があったから、「召喚」を「サモン」にまでして叫ぼうとしたんだよ。羞恥心を捨ててまで言おうとしたんだよ。それなのに、音もなく現れないで。


しかも、どうしてグレーのマント着けてるの? レンジャーにマント着けているシリーズあったっけ? 羽とかあったけど……


ううん、ある! マントあったわ! それ、ライダーの方ってツッコまなくてよかった。ほっ。


ねじり鉢巻も気になるけどね。そこは個性としてスルーしとくよ。スタンダードグレイ(ノーマル)の毛並みも可愛いからね。


『嬢ちゃん、恥ずかしい呼び方をすんじゃねぇよ』


『えっと、ごめんなさい』


『仕方ねぇな。モモン・ガーは、「モモン・ガーなになに」って両前足を挙げるだけでいい』


『へ? それだけで来てくれるんですか?』


『あたぼうよ』


機嫌が治ってくれたのは嬉しいけど、駄洒落みたいなモモン・ガーって思い付かないじゃん! しかも、名前呼ぶだけでいいだなんて……あー、恥ずかしさで死ねる。無理。恥ずい。


『おい、嬢ちゃん。無視するな』


『あ、ごめんなさい。無視したわけじゃありません。来てくれてありがとうございます』


『そうなのか。俺も怒って悪かったな。でだな、獣人仕様の家は、俺1匹じゃ無理ってもんだ』


『それもそうですね。失礼しました。質問なんですが、何匹呼べばというか、何匹も呼べるんですか?』


『あたぼうよ。グレーを追加で5匹頼むわな』


『分かりました。モモン・ガー、グレーの皆様、お願いします』


先程の1匹同様、ねじり鉢巻をしたイカついモモンガ達が追加で5匹現れる。6匹で円陣を組むところまでは「かっわいいなぁ」とほっこりしていたが、マントの柄を見て目を剥いてしまった。「桃? 漢字で桃って何? なんで?」と。


そして、「ああ! 私があの時『桃レンジャーになれたよ』って思ったからかー」と、明後日の方向を見てしまったのである。


なぜ「モモレンジャー」と思わなかったのか……「最後に桃を食べたかった」と、どこかで残念がっていたのかもしれない……あの時の私はどうかしていた……


何はともあれ、無事にレンジャー魔法を使うことができた。呼び出した後はというと、私が何か言わなくてもレンジャーの皆様が自由に作業をしてくれている。


まぁ、意見を求められても、セット販売されていたお城を作ったことがあるだけなので、答えられることはない。私は家の建て方なんて知らないし、たぶん家より簡単だろう小屋もどうすればいいか分からない。


それにしてもさ、みんなで四方八方に消えたと思ったら、材料を運んできてさ。それ、どこから調達してきたの? ねぇ、どうしてガラスっぽい物まであるの? 他の皆さんの家はガラス窓じゃないのにさ。わっかんないわー! だけど、可愛いから許す!


てか、ググ先生が見せてくれた各国の家は、ガラスぽかったんだよね。だから、この世界にもガラスはあるんだよね。名前は違うかもしれないけどね。


「えっさほいさ可愛いなぁ。小さい体で大きな丸太を持っている意味は分からないけど、魔法なんだからそういうものなんだろうな」「わー、すごい。小屋まで造ってくれるのかー。もう頭あがんないわー」と眺めていたら、母家と小屋が30分程で出来上がってしまった。


全部受け止めようと思っているが、数秒目を閉じて現実逃避するのは許してほしい。


『プシュプシュ』


1番はじめに呼び出したレンジャーに『嬢ちゃん、終わったよ』と声をかけられ、にっこりと微笑んだ。


『はい、皆様、本当にありがとうございました。こんなに素晴らしい家を造ってくださるなんて感無量です。クークーさん達も喜んでくれると思います』


『よせやい。またいつでも呼んでくれな』


照れながら満足そうな笑みを浮かべて、モモン・ガー、グレー達はジャンプをして空中に消えていった。


オーケー。オーケー。最後まで粋だったグレーレンジャー達、カッコ可愛かったよ。私は、あなた達の全てを受け入れるわ。次からは悩まず気軽に呼べるしね。


さて、家も建ったし、もし族長さんに反対されても「家が無駄になっちゃう、しょぼん」で押し切ってみせる。大丈夫。






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