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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
13/64

13.交渉するぞ

時間ができたので、ググ先生に狂花について教えてもらったら、ジオさん達が話してくれた通りだった。


ただ花は、黒い花だけではなく何種類もあり、狂花するのは魔物や動物だけではなく、生きて動くモノ全てが対象らしい。ただし、祝福や加護があるモノは非対象とのこと。罹りやすい順番が、動物→魔物→人間→亜人→魔族になる。


ホワッッ? 魔族までいるの?


……オーケー、オーケー。大丈夫。私は受け入れられる。いてもおかしくない。ただ、怖いから会わないことを祈っておこう。


問題は、私が狂花してしまう対象かどうかだよね。祝福や加護は無い。というか、私は動物の括りなのか、それとも魔物の一種なのか。これも難しい。アカウントには書かれていなかったし、リリで検索しても載っていなかった。ってことは、危険な花には近付かない。これ一択だな。


「クークー、それは何かの間違いだ! ランランが嘘を言ったんだ! 可愛いリンリンが、そんなことをする訳ないだろう! 性悪はランランなんだ!」


うん? どした?


斜め下を見やると、中年の夫婦と思われる男女と、クークーさんとランランさんがいる。そして、ジオさん達が小屋から出てきたところだった。


「嘘じゃない。リンリンがランランを妬んで、ずっと周りを巻き込んできたんだ」


「ランランがリンリンを妬むことはあっても、自分よりも劣っているランランを、リンリンが妬む理由はありませんよ」


おおん? ここにもリンリンさん擁護派……って、わざわざ2人が来たってことは、ここはランランさんの家なのかも。だから、ジオさん達の小屋もあるんだわ。


夫婦に対して顔を吊り上げるクークーさんの腕を、ランランさんが触った。辛そうに微笑んでいる面持ちに、私も悲しくなる。それは、クークーさんも一緒だったようで、怒り顔を鎮めてランランさんを愛おしそうに見つめた。


「お父さん、お母さん。私は荷物を取りに来ただけですので、嘘か本当かはリンリンと話し合ってください。私が言えることは、私は今まで一度もリンリンを妬んだことはありませんし、意地悪したこともありません。それと、今までこの家に置いてくださって、ありがとうございました」


やだ……育ててくれてじゃなくて、置いてくれてだなんて……ランランさんの今までを想像すると、泣いちゃいそうだよ。


父親が怒鳴ろうとしたが、クークーさんの睨みに唇を噛んでいた。


クークーさんとランランさんは家の中に入っていき、すぐに風呂敷で包んだ荷物を1つ持って出てきた。


それだけがランランさんの持ち物なんだろう。森の深い場所に住んでいるとはいえ、少なすぎるような気がする。でも、これが現実だ。19年間住んでいるのに、ランランさんの物はほとんど無いということだ。


「ジオ、シオ。夜にまた来るわね」


私が感傷に浸っている場合じゃない。連れて行ってほしがっているって伝えなきゃ。


木から颯爽と滑空し、ランランさんに撫でられていたジオさんの背中に降り立った。


爪立てちゃった。大丈夫? 痛がっていないから大丈夫かな? よかった。


私が現れると思っていなかったようで、人間4人は目を皿にしている。


「突然すみません。ジオさんとシオさんからの伝言を預かっていまして、ランランさんにお伝えしたかったんです」


「わざわざありがとうございます。ジオとシオからの伝言を賜りたいと思います」


「ランランさんと一緒に引っ越したいそうです。連れて行ってあげることはできませんか?」


大きく頷いているジオさんとシオさんを見たランランさんは、困惑しながらクークーさんに視線を投げた。クークーさんの家には、小屋が無いのだろうか?


クークーさんが遠慮がちに口を開いて、村の現状を教えてくれる。


「聖獣様。私の家には、既にガオ・カオ・ミオというピボノーアが住んでおりまして、ピボノーアの世話は一家族ずつとなっています。これには、ピボノーア達の喧嘩を避けるためと、ピボノーアを育てている家は無病息災と言い伝えられているからです。ですので、私の家でというのは……」


言っている意味は分かるが、ピボノーアにそんな能力があるのかが不明で、盛大に体ごと首を傾げてしまった。決して、リンリンさんよりも私の方が可愛いでしょ。というムーブではない。本物のあざと可愛いを示した訳じゃない。


「では、この村で、ピボノーアと一緒に住んでいない家はあるんですか?」


「いいえ。ピボノーアは生涯で子供を3から7匹ほど生みますので、現時点では、どの家にも元気なピボノーアがいます。そのおかげで、この村は病気知らずなのです」


それってただ単に、熊獣人さん達の体が丈夫なだけなんじゃなくて?


『ジオさん、無病息災の力があるんですか?』


『分からん。でも、我らと住みはじめてから、病気に罹らなくなったらしいぞ』


『そうなんですね。ちなみに、ガオさん達と仲良くできそうですか?』


『ガオ達とは仲が良い。会えば、ぶつかり合って遊んでいる』


激しいな。たぶんそれが、仲が悪いと思われている原因だぞ。みんな、おっかなびっくりしているぞ。


「あの、クークーさん、ランランさん。ジオさんが言うには、『ぶつかり合って遊んでいる』だけで、ガオさんとは仲良しだそうです」


「……あれが遊びなんですか?」


「私は見たことがないので分かりませんが、遊びだそうです」


クークーさんとランランさんは、目配せで戸惑いを共有している。「それなら……」「でも……」と会話しているような気がする。


私としては、連れて行ってあげてほしい。さっきランランさんは「夜にまた来る」と言った。ってことは、基本的にランランさんしか、世話をしていないんじゃないかと推測できる。家族に世話を任せられないということじゃないだろうか。


ジオさん達もそうでなければ、すぐに「連れて行ってほしい」と願う訳がない。ランランさん以外の家族は、嫌だということなのだから。


それに、掟を破ってまでダオちゃんを外に出したリンリンさんには、それなりの罰が下ると思うけど、両親にまでは及ばないだろう。ダオちゃんの件は無関係な気がするし。


私は、リンリンさんだけを可愛がり続けた両親にも、罰が必要だと思っている。どっちが嘘を吐いているか見抜くのは難しいとは分かっている。でも、妹だけの話を鵜呑みにして、姉を虐待するのは犯罪と同じだと思う。だから、村で唯一ピボノーアを取り上げられた家と思われればいい。きっと後ろ指さされ、蔑まれ笑われることだろう。心の痛みを体験すればいいんだ。


答えを出せずにいるクークーさんとランランさんに声をかける。なお、さっきから静かなご両親は、「聖獣様だ」と何故か私に怯えている。こんなに可愛いのに失礼しちゃう。


「ダオさん達に我慢を強いるのは、その、ご利益的によろしくないと思うんです。無病息災のはずが、逆に病気が蔓延するかもしれないじゃないですか。後、クークーさん達はすぐに新婚さんになりますから、新しい家に住んだりしないんですか? 是非その家のピボノーアに、ジオさん達をと思うんです」


交渉するためとはいえ、不確かな意見で不安を煽って、本当にごめんなさい。優しいジオさん達のために私はズルくなりますが、人助け、もとい、ピボノーア助けですのでお許しください。


「家を建てる予定ではなかったが……場所はあるから建てる分には……しかし、建てるとなると時間が……その間、ガオ達と……」


ふふふ。クークーさんってば、2人の家というワードに心が揺れているな。人目を気にせず、イチャラブしたいよねぇ。家を建てちゃいな。


「ジオさんとガオさんには、小屋ではぶつかり合わないでほしいと、私からお願いします。それと、ぶつかり合うのは仲が良い証拠だと、皆さんに発表してください。微笑ましい行動ですから」


激しさが分からないのに微笑ましいとか言っちゃって、こちらも本当にごめんなさい。でもでも、今は怖いが先にくるような行動でも、今度からは戯れてるなぁって思えて、恐怖が薄れると思うの。みんなの心の負担が減るのは、良い事だと思うのよ。


「分かりました。おとう達は、俺が説得します」


「ありがとうございます。渋られたら助力しますので、声をかけてください」


「いえ、ジオ達のことですから、私がお願いします」


愛おしそうにジオさん達を撫でているランランさんを見て、クークーさんは気合いを入れたような強い瞳に変わった。好きな人を喜ばせたいのだろう。彼はきっと、ダオさん達の移住を認めさせてくれるはずだ。






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