12.ジオさん・シオさん
と、こんな感じで、着いて早々ちょっとした事件に巻き込まれた訳だけど、なぜか今ジオさんとシオさん(ダオちゃんのお母様)にキラキラお目目で見つめられています。
あの後、夜に宴会が行われることになって、その間にローローさんとリンリンさんは別々に事情聴取を受けることになり、男衆に2人は連行されていった。ローローさんは意気消沈していたけど、リンリンさんは逞しく「違う! 私はやってない!」と言い続けていた。
私は、ランランさんとクークーさんの間に割り込みたくなくて、族長さんと話をしようと思ったのに、ジオさんが『ダオ、来い』とダオちゃんを連れて行っちゃったのよ。もちろんダオちゃんから降り損ねた私も道連れさ。そして、ダオちゃんは家に着いた途端眠りました。鼻提灯作ってます。
『リリ殿と申したな?』
『まぁ、可愛らしい名前ね』
『ありがとうございます。あのですね、その、謝らないといけないことがありまして……』
ジオさんとシオさんが、不思議そうに顔を見合わせている。
『何だね?』
『先程は都合が良かったので訂正しませんでしたが、私は聖獣様ではありません。ただのモモンガです。騙すようなことをして、すみませんでした』
『そんなことはなかろう。リリ殿は、ダオともランラン達とも話した。聖獣様の証拠だ』
『でも、私は祝福の与え方なんて知りませんし』
『んー、聖獣様だと思うが……聖獣様でなければ、神の御使い様なのかもしれんな』
『そうねぇ、リリ様は人とも話せるのよね。もしかしたら精霊様と同じで、神の御使い様かもしれないわね』
ホワッツ? 御使い様? 私、チャメルのおかげで生きているだけなのに……アルパカさんや王様ライオンさんの従者って思われてるの?
いやいやいやいや! 全力で否定したい! ググ先生の記述にも、そんなことは書いてなかったし!
『ちなみに、神様の御使い様は、何ができるとかあるんですか?』
『我らもよくは知らないが、聖獣様と同じで、どの種族とも話せるらしいぞ。加護を与えられるんだったか』
『羨ましいわよねぇ。私もジオも、獣人が話している内容は分かるのだけれど、私達はあの言葉を話せないものね』
『ああ、何度も試してみたが無理だったな』
ってことは、ジオさん達が、ダオちゃんにランランさん達の名前を教えたのね。何を話しているのか分からないのに、どうして名前だけはきちんと分かっているんだろうって謎だったのよね。少しずつ教えている最中なんだろうな。
『ジオさん、シオさん。私、実はこの世界に来たばかりでして、右も左も分からないんです。教えてもらってよろしいでしょうか?』
『かまわんが、我らが知っていることなど少ないぞ』
『大丈夫です。よろしくお願いします』
顔を合わせて小さく頷き合っているジオさんとシオさんに、私は「動物を見かけない」ことから尋ねた。
答えはこうだ。
ラポシェーディブル大森林は、中心に行けば行くほど空気中に漂う魔素が強くなるらしい。魔力が強いモノでない限り、魔素が強い場所では生きていけないそうだ。
生き物は外側から中心に向かって、半分くらいの所に多く生息しているとのこと。ラポシェーディブル大森林は円なので、分布図は穴が空いてるドーナツを想像したら分かりやすいと思う。
ちなみに、強力な魔物も、そちら側に住んでいるとのこと。餌を得る必要があるからとのことだった。納得である。
この答えで得られた情報は、とても多い。
つまり、熊獣人もピボノーアも強いということ。ここはまだ森の深い場所だ。魔素は十分に濃いと思われる。
そして、たぶん、ヒーロー仕様になっている私も強いのだろう。
……本当に? 強いなら嬉しいけど、レンジャー魔法が使えるらしいだけで、私はヒーローじゃないよね? やっぱり、ただの可愛いモモンガなだけ?
話の流れで魔素についても聞いてみたが、こちらに関しては『魔素は魔素だな』としか返されなかったので、後でググ先生に教えてもらおうと思っている。
なお、ググ先生の回答はこちら → 魔素は、地表から湧き出ている魔力のこと。空気と類似する。無いと生きていけない。魔素を取り込むことで、失った魔力を補う。
あ、うん、地表から湧き出ている意味は分からないけど、『魔素は魔素だな』と言われた意味は分かりました。私もきっと、そう説明する。
次に、どうしてここに住んでいるのか? と質問してみた。周りは森しかない。特に熊獣人達は、街が遠すぎて不便だろう。
そう思ったが、人間と折り合いが悪いらしい。人間が一方的に見下してくるそうだ。だから、姿を隠して暮らす方が幸せなんだと。
ピボノーアに関しても、無闇矢鱈に討伐対象とされるので、外側近くでは平和に暮らせないとのことだった。
人間の方が弱そうなのに? と首を傾げると、人間は数が圧倒的に多いとのこと。しかも魔素が薄いと、本来の力を発揮しにくいらしい。その代わり、魔素に対応できる人間はほとんどいないため、弱い魔物でも耐えられる魔素部分まで逃げれば、追って来られないとのこと。
ただこれに関しては、ジオさんとシオさんの予想だそうだ。経験した事から考え、今暮らしている環境から導き出した答えとのことだった。
話しはじめてからずっと思っていたけど、やっぱりジオさんとシオさんは頭が良いと思う。
『あ! さっきの狐ですが、狂花って何ですか?』
『理由は分からんが、突然狂ったように暴れて、見境無しに殺戮を繰り返すんだ』
こわっ。
『防げないんですか?』
『黒い花には近づくな、とは言われているんだけれどねぇ。その話も、本当かどうかは分からないのよ』
『クークー達は、森に黒い花がないか見回りをしていてな。見つけたら、焼き払ったり凍らせたりしている。狂花した場合は殺してしまい、ランランが浄化をしてくれる。その肉は村人達の食事になり、基本宴会だな。肉は滅多に食べられないから、みな大騒ぎだ』
『狂花を止めた、狂花した魔物を倒したことを讃える意味もあるのよ』
なるほど。これも、後からググ先生にも教えてもらうことにして……
『どうやって狂花を見分けられるんですか?』
『頭から芽が出てくる。それが成長し、花を咲かせたら我を失うと言われている』
花が咲いたら狂うから、そこから狂花って名付けられたのかも。
この後は、この村での生活等を尋ね、『ランランが引っ越すなら、我達もついていきたい。伝えてほしい』と言われたので、承っている。
話が終わってもダオちゃんは眠っていたので、近くの木の上で休むことをジオさんとシオさんに伝えてから、私は秋になったら実が生るという木の上に移動した。
トゲトゲした細長い葉に、「栗の木? いいなぁ、栗食べたい」と甘栗を思い出して、涎が出そうだった。




