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モモンガ・リリの変なレンジャー魔法  作者: HILLA
ラポシューディブル大森林
10/64

10.聖獣様?誰が?

「すみません。お待たせしました」


凛とした綺麗な声が聞こえ、全員の視線がそちらに向いた。薄茶色の髪に焦茶色のキリッとした瞳の女性。手足が長く、スレンダー。どことなく神秘的な雰囲気を纏っている。


そして、ググ先生の画面で見た、ピボノーアの成体が1頭付き従っている。大きさは、女性の肩くらいまである。


『パパ! ランラン!』


ダオちゃんが、飛び跳ねるようにランランさんとパパさんに駆けていった。


もちろん私は、「パパ? 写真で大きいことは知っていたけど、こんなに大きいの? 私、踏まれただけで即死するよ。ってか、ダオちゃんもこれくらいになるってことだよね? マジかー」と仰天していた。


「ダオ、どこに隠れていたの? 探したのよ」


落ち着いたランランさんの声は、パパさんの怒鳴り声にかき消された。


『このバカ息子! どこに行っていた! ランランに心配をかけよって!』


『お外だよ。パパ、お外楽しいよ』


ダオちゃーん。君、めちゃくちゃ怒られてるんだよ。無邪気に答えたらダメ……いや、可愛いから許す! 私が許す!


『……外?』


ん? んん? パパさんの眉間にくっきりと皺が刻まれたってことは、ダオちゃんは外に出たらダメだったってことだよね。さっきから聞こえていた会話と、重たい空気からも察せられてたけどね。そっかー。もし約束を破ったとかなら、パパさんに謝らないとだね。


「皆さん、どうかされましたか? もしかして、この狐は狂花していたのですか?!」


ランランさんが焦ったように狐の側に行き、膝をついた。そして、狐の顔を覗き込んで、体から力を抜いている。


「狂花前ですね。これくらいなら、すぐに浄化作業が可能です」


ランランさんは安心したように言い、立ち上がった。全ての所作が綺麗で、やっぱりどこか神秘的だ。女神なのか? というか、「狂花?」「浄化?」。私は知らないことが多すぎる。


「ランラン」


クークーさんのお父さんの低い声に、ランランさんは不思議そうに「はい」と返事をしている。


「ダオを外に出したとは、本当か?」


「何のことですか?」


「しらばっくれないでください。俺、見たんですよ。ランラン様がダオを連れて、外に行くところを」


「待ってください。私は外に出ていませんし、ダオも外に出していません」


「俺が嘘を吐いているって言うんですか?」


「いえ……ですが、私は掟を破ることなんてしません」


「お姉様、もう止めて! 私、限界だわ。ダオを命の危険に晒したんだもの。もう隠していられないわ」


おん? おおん? リンリンさんが瞳に涙を溜めてて、ランランさんが辛そうに俯いたと。男性陣が混乱していて、クークーさんは無表情でランランさんを見ていると。


「さっきは否定しましたけど、お姉様がダオに命令をして、私の畑を荒らしたのは本当です。やっと栽培できた薬草だったんです。私は巫女ではありませんので、どうにかみんなの力になりたいと思って育てていたんです。でも、お姉様には、それが目障りだったみたいで……」


ずっと門の前で立ち話をしたままだからか、数人集まってきている。リンリンさんの話を耳にしてだろう。ヒソヒソ話も聞こえはじめた。


「私はしていません。妹を目障りだと思ったこともありません」


「どうして嘘ばっかり吐くの。私を押して転ばせたり、私のご飯に髪の毛を入れたり、私を閉じ込めたりしたじゃない。お父様とお母様だって見ているのよ」


周りから聞こえてくる「巫女だからって調子に乗っているんだよ」「リンリンさんの可愛さに嫉妬してじゃない」「クークーさんを取られそうで怖いのよ」という冷たい声が、容赦なくランランさんに刺さっている。


「して、いません。本当に何も、していません」


ランランさんの手が、小刻みに震えている。ダオちゃんが、心配気にランランさんの足に擦り寄った。


「まさか、そんなことまで……いくら巫女でもクークーには似合わない。リンリンの方が、よっぽど村のことを考えてくれている」


「クークー様もリンリンには優しいものねぇ」


「この間も2人で見回りしていたわ」


うーん。私はここの人達のことを全く知らないから、誰が嘘を吐いているとか、関係性がどうとか分かんないんだけど、こうも一方的にランランさんが責められるものなの? それにさ、ランランさんとダオちゃんが外に行ったところを見たって人、さっきからやたらリンリンさんの援護してない?


「ランラン」


クークーさんが、しっかりとした声でランランさんを呼んだ。


「ダオが村の外に居たのは本当だ。俺が保護したからな。ただ、俺は君がそんなことをしたとは思えない。君はダオを大切にしている。それに、もしダオと外に出たのだとしても、1人で戻ってくる理由はないだろうしな」


クークーさんの声には、蔑みや疑いの色を感じない。


「……クークー」


ん? もしや、クークーさんとランランさんが恋人なのか? 甘酸っぱい空気流れたよね?


「クークーまで、俺が嘘を吐いているとか言うのか?」


「そうじゃない。ただ行き違いというか、何か勘違いみたいなものがあったんじゃないかと思ったんだ」


「クークー。私は、ダオを連れ出していないとしか言えないの。朝ご飯の片付けをしている間に姿が見えなくなっていて、ジオと一緒に探していたから」


ランランさんが、ダオちゃんのパパさんの体を撫でた。


「……嘘よ。お姉様が外に連れ出したかは分からないけど、朝食後にダオと一緒に遊んでいたのは見たわ。どうして嘘ばっかり吐くの? 悪い事をしないと生きていけないの?」


また周りがかすかに聞こえる程度の声で、ランランさんを卑しめはじめた。関係ない人達が、ピーチクパーチク五月蝿い限りである。


何も分からない部外者の私が、でしゃばるのはどうかと思ってたけど、このままでは収拾がつかなさそうなので、ちょっとだけ介入してみよう。


『ダオちゃん、外に出してくれたのはランランさんなの?』


『ちがうよー。リンリンが出してくれたのー』


おおん? あのクソアマ。上等じゃねぇか。


『出してくれた時、何か言ってた?』


『分かんない。ぼくまだ分かんない』


ん? ものすっごくジオさんに見られているんだけど、なんで?


ま、まぁ、今はいっか。先にランランさんを助けてあげよう。


「あのー、皆様、少しよろしいでしょうか?」


注目してもらえるように、声を張り上げてみた。それなのに獣人達はキョロキョロとして、私に気付いてくれない。


「ここです! ここ! ダオちゃんの上です!」


ふぅ、やっと気付いてもらえた。かっわいいモモンガに、骨抜きにされていいんだよ。チャメル、可愛いでしょ。


「モモンガ?」


「何か乗っていると思ってたけど……」


「どうして胸を張ってるんだ?」


「お腹が空いたんじゃないか?」


「ってか、話してなかったか?」


あれ? みんなして顔面蒼白になるとか、おかしくない? 可愛い私を見て、目がハートになるならともなく、怯えるって、どした?


「せ、聖獣様!?」


ほへ?


「聖獣様だ! 皆の者、礼儀を弁えろ!」


えええええ? ちょ、ちょっと、土下座とか止めて! 「ははぁ」とかじゃないよ! 私はただの、めちゃくちゃ可愛いモモンガなだけなの! お願いだから頭を下げないで!


ふっ。


だがしかし、腹黒い私は、この状況を利用しちゃうよ。ふふふのふ。


って、こんなだから、人間の魂は穢れているとか言われるんだわ。どっかで善い行いするから許してもらおう。






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