表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編台本シリーズ

なまもの

猫を手に持っているつもりだった。ふわふわの。

だけど鏡越しにみた猫は、大きなイモムシで、僕の両の手を這い回っていた。


虫は苦手だったから、ゴミ箱に放り投げた。すると黄色い液体を出してその頭が潰れた。


どのくらい生きるのかと思って、死ぬまで見といてやろうと思ったら、なかなか死なない。

なんだか妙に愛着が湧いて、自由に這い回れなくなったイモムシをまた手に取った。

イモムシの首がフサフサしていて気持ちが悪かったから、毛を剃った。


命は大切だと誰かが言っていたけど、そうなのかもしれない。

潰れた頭に止血剤を塗って、ラップをまいて輪ゴムで固定した。


また愛せなくなったら、足をちぎろう。

愛は一定じゃない、補給がいる。


学生時代、友達の話を聞いて感動した。

小さい頃から大事にしていたぬいぐるみと、今も一緒に寝ているという話だった。

間違いなくそれは愛情だと感じた。自分も愛してみたいと思った。


まずはベッドの上にイモムシを置いてみた。

逆さまにしたからか、足がウゾウゾと動いている。

起き上がらせてやると、ベッドの上をウゾウゾと這い回って、縁に近づくと落ちないよう真ん中に戻る動作を何度も繰り返した。


なんでこんなもの、愛したいと思ったんだろう。


欲しいものと違うだけで愛さないのはちがうと、どこかで自分の良心が言った。

だけどそれは理性であって、本心じゃない。


イモムシを持ち上げると、ベビーパウダーのような匂いがした。


白くて、足がいっぱい生えていて、頭が潰れている。


どうせなら名前を付けようと思って、「ネコ」という名前をつけて床に下ろした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ