第92話 クリスマス1
〜幸晴side〜
11月が終わり、12月になった。日没が早くなり、外はすっかり寒くなっていた。
俺はクリスマス前の期末テストを乗り越えるために、学校の図書室で勉強することにした。
「おっ全然人がいないな...」
もう放課後だったので、他の生徒は全然いなかった。
「あっ前田先輩、久しぶりですね」
席について勉強を始めようとした時、細川さんが図書室に入ってきた。
「細川さんもテスト勉強しにきたのか?」
「まあそんなところですね」
そういいながら、細川さんは俺と向き合うように席に座った。
俺と細川さんは黙々とテスト勉強を進めていった。
〜数十分後〜
「...」
俺は暖房の効いた室内で、必死に眠気に抗っていた。
「前田先輩、大丈夫ですか?」
「ああちょっと疲れてきちゃって...」
「そうですか...では私がマッサージしてあげますね」
細川さんは俺の後ろに回ると、俺の肩を揉んでくれた。
「あの、細川さん?何で俺にこんなことを...?」
俺は細川さんに質問した。
「前田先輩がいつも頑張っているからですよ。先輩はなんだかんだ色々手伝ってくれましたし」
俺は黒髪美少女に肩揉みをされていることで、とてもドキドキしていた。
「俺、そんなに役に立ってたか?」
「立ってますよ。体育祭や文化祭の準備とか進んでやってくれていましたし...私が学校で迷っている時とか、初対面だったのにすぐに助けてくれたじゃないですか」
そういえば細川さんと最初に会った時ってそんな感じだったよな...
「それに、ここで私と中国史の勉強をした時も前田先輩は頑張ってついてきてくれていました」
「あれはマジで大変だったけどな...確か漢民族と異民族の話だったっけ?」
7ヶ月も経っているので思い出すのに少し時間がかかってしまった。
「よく覚えてますね...京極先輩が魏晋南北朝時代について話していて、内容がよくわからなかった前田先輩がここで調べていたんですよね。でも京極先輩は話に乗ってくれたことに対してとても喜んでいましたよ」
「そうか、それなら勉強した甲斐があったな」
「...そろそろいいですか?」
細川さんが手を止める。
「ありがとう細川さん、だいぶ楽になったよ」
俺は細川さんにお礼を言った。
「また困ったことがあったらいつでも話してくださいね。私が相談に乗りますよ」
細川さんは少しだけ笑っていた。
「あの...今相談してもいいかな?」
「いいですよ」
細川さんは俺の前の席に戻った。
「実は...今3人の女の子から好意を寄せられてて、どうすればいいのかわからなくなっているんだ...」
「それは贅沢な悩みですね」
細川さんも察しがついているみたいだった。
「好意を寄せられているのは嬉しいんだけど、俺が誰かを選んだことで、他の人が傷ついてしまうんじゃないかって考えちゃうんだ...」
俺は細川さんを見ながら話した。
「そこまで心配しなくていいと思いますけど...でもはっきりとした答えは出さなくてはいけませんね」
「うっ、やっぱりそうだよな」
「このまま先延ばしにするわけにはいかないと思うので、期限を設けましょう。テスト後のクリスマスまでに誰を選ぶか決めて、3人の前ではっきり言うんです」
細川さんのまっすぐな目線が俺に突き刺さる。
「...」
「きっと大丈夫ですよ。今までの関係が崩壊するわけじゃありませんし、これからも仲良くやっていけますよ」
「そう...だよな。俺、誰かを傷つけないようにすることばかり考えて、NTRを仕掛けた人よりも幸せになるってことを忘れてたよ」
「例え悲しいことがあっても、誰かにその私怨をぶつけないようにしてくださいね。そうしないと京極さんの先祖の京極高氏みたいになってしまいますからね」
「...ごめん、最後の部分だけよくわからなかったわ」
俺がこの歴史ネタを理解できるようになるのはまだまだ先の話になりそうだと思った。
その後、細川さんと別れて家に帰った俺はテスト勉強の続きに取り組むことにした。




