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第9話 校則騒動6

〜廊下〜


生徒会室までは少し距離があるので、2人で歩きながら雑談することにした。


「前田君は私に聞きたいこととかある?」


聞きたいことか...転校生という立場上質問されることは多くても、することは全然なかったな。俺は改めて足利さんを見つめた。ツインテールに黄色いパーカー、そして黒いタイツという特徴的な格好だ。タイツを履いていることで生脚を拝むことができない...って俺は何を考えているんだ。拓人に影響されてしまっているな。


「ちょっと見過ぎじゃない?」

「ああ悪い、じゃあ今更なんだけど足利さんって何でいつもツインテールにしてるんだ?」

「あーこれ?これはね、うちの家紋を表してるんだよ〜」


意味がわからなかった。


「...どういうことだ?」

「足利家の家紋は2本線になっていて、ツインテールで2本線を表現してるんだよ〜」

「なるほどな...」

「次は私から質問するけど前田君は今緊張してる?」

「まあ多少は緊張してるよ、相手が生徒会長だし」

「そっか〜、ならいい方法があるよ」


足利さんは俺の手を握ってきた。


「あのー足利さん?」

「前田君は手を繋ぐのが好きみたいだから、こうすれば喜ぶと思ったの〜ってあんまり変わってないね」


足利さんが不思議そうに俺を見る。


「そりゃもう2回目だからな、流石に慣れるって」

「...前田君って女の子と手を繋いでも平然としてるよね。」

「転校前に色々あったんだよ」

「色々ねぇ〜」

「まあ今度話すよ」


足利さんは、転校前の俺については聞いてこなかった。


そして、ようやく生徒会室に到着した。


「失礼します」


足利さんがドアを開けると、生徒会メンバー3人が揃っていた。

会長の月野先輩、副会長の早乙女先輩、そして書記の細川さんが座っている。


「今日は校則のことについて相談しに来ました」


足利さんが要件を伝えると、月野先輩が返事をした。


「前田君と足利さんですね。細川さんから話は聞いています。今の校則が厳しいから変えてほしいと」

「はい、間違いありません。特にスカート丈をもっと自由に決められるようにしてほしいです」


足利さんが姫川さん達の意見を伝えた。


「足利さん、名門であるあなたならわかると思いますが、ルールを守ってもらわないと来年以降入ってくる生徒達に示しがつかないじゃないですか。」


やはりそう簡単にはいかないか...


「月野先輩は私が名門だって知ってるんですね」

足利さんが話題を変えてきた。

「ええ、あなたのクラスメイトである京極さんが擁立してこの生徒会に挑むと細川さんから聞いたので、足利家について色々調べさせてもらいました」


マジかよ、用意周到だな。

俺は動揺が隠せなかった。そこへ隣にいた足利さんが囁いてきた。


「前田君、私の家柄のことは前にも話したよね?」

「ごめん、あんまり把握できてないんだ」


正直に言うと、大多数の人は足利家と聞いても金閣、銀閣を建てたことくらいしか出てこないと思う...


「では私から折衷案を出します。」


足利さんが次の手を打つ。


「スカート丈を決められた長さにしないといけないと示しがつかないと言いましたが、スカート丈を自由にすればもっと大きなメリットが期待できます。」

「それはどのような効果が出るのですか?」

「今から前田君が話します」

「え!?」


いきなりこっちに振ってくるのかよ。

足利さんがこちらに視線を向ける。ずっと手を握られているので逃げることもできない。これは答えるしかなさそうだ。


「えーっと、効果としては俺たち男子のモチベーションアップに繋がります」

「あの、もう少し具体的に言ってください」

「短いスカート丈から覗く太ももを拝むことができるので、男子たちの出席率も上がり校内での活気が溢れだしていくはずです」


俺は拓人が話していたことを真剣な顔で伝えた。


「そうですか...ですが校則は長年受け継がれてきたしきたりですのでそう簡単に変えるわけには...」


月野先輩はまだ渋っているようだ。

そこへ足利さんが口を挟んだ。


「月野先輩、前田君の主張も長年受け継がれてきたことなんですよ。700年前の古典『徒然草』に、『女子の太ももを見た瞬間心が動揺する』と書かれています。つまり男子は女子の太ももを求めているんです。太ももの魅力に抗うことはできないのです」

「...」


月野先輩は黙って聞いていた。


「ここで先輩が私たちの主張を拒否しても、京極さんがまた来ると思います。」

「...わかりました、あなた達の主張を受け入れます。」

「本当ですか!?」


俺は驚いた。まさか京極さんがこんなに効果を発揮するとは思っていなかったからだ。


「これからはスカート丈を個人の自由とします。これでいいですね?」

「あ、ありがとうございます!」


俺はみんなに礼を言った。


「失礼します」


足利さんと一緒に生徒会室から出ると、俺は緊張感からようやく解放された。


「やっと終わった」

「これで解決したね〜」


俺たちは教室へ向かって歩き出した。

教室に戻って、今回の結果をみんなに伝えた。


「マジ!?それで生徒会長を納得させたの!?」


玲那は驚いた様子で言った。


「足利さんウチらのためにそこまでしてくれるなんてマジ聖人君子じゃない?」

「...発端は私たちなのにね」


小林さんと川口さんも足利さんのところに集まっていた。

「いやいや〜私は困ってる人をほっけないだけだよ〜」


足利さんは照れながらいった。


「足利さんは本当にすごいんだよ!徳があって慈悲深いんだから」


京極さんが玲那たちに主張した。


「そうだ、ゆっきーにもお礼言わなきゃだよね。ゆっきー、今回は本当にありがとう」

「いや、そんな大したことしてないって」

「今度絶対お礼するから楽しみにしててね!」


玲那からの勢いに俺は押されてしまっていた。


「前田君、私からも今度恩賞を用意するからね〜」


後ろからは足利さんが声をかけてきた。もしかして、玲那に対抗しようとしているのだろうか?

この日はとても濃い1日となった。


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