第7話 校則騒動4
「えーと、まずは建武の乱の方から話すね。建武の乱っていうのは1333年から1336年までの動乱期を指すわ。」
京極さんは廊下を歩きながら話を進めた。
「1333年に鎌倉幕府が滅亡した後、後醍醐天皇が京へ戻ってきて、北条さんが擁立していた天皇である光厳天皇を廃して復帰したの。でも後醍醐天皇は総大将クラスの武士(足利尊氏、新田義貞、楠木正成)にしか恩賞を与えなかったの。そのせいで幕府の残党を率いる北条時行が反乱を起こしたことで、再び日本は混乱していくことになったの。北条時行はそのまま鎌倉を占領しちゃったから、足利尊氏はすぐに鎌倉を取り戻して時行を追い払うことに成功したの。でも後醍醐天皇は尊氏が新しい将軍となることを恐れて義貞を大将とした討伐軍を派遣したわ。私の先祖である京極高氏は足利軍が天皇に弓を引くことはできないと考えて義貞の軍勢に寝返ることを決めたの。でも尊氏がいきなり東海道を攻め上ってきたから、もう一度足利軍に入れてもらったわ。これが1回目の裏切りね。」
京極さんは時系列順に話を進めた。
「それで、2回目の裏切りは観応の擾乱で、これはちょっと複雑だからよく聞いてね。発端は1348年に発生した四條畷の戦いで、この合戦に勝利した尊氏の執事、高師直は一気に権勢を強めて幕府の政治に介入するようになったわ。そのことに対して不満を抱いたのが尊氏の弟である直義で、師直を解任させたの、そしたら師直が本気で怒って尊氏の家を包囲したの。尊氏はすぐに師直を執事に復帰させたんだけど、直義が南朝に寝返って挙兵してしまったの。この混乱の中京極高氏が南朝側に寝返って尊氏を追い詰めていったわ。そして最終的に再び尊氏が勝利して幕を下ろしたの。どう?伝わったかな?」
俺には京極さんの話が全然わからなかった。
「ごめん京極さん、これ1回聞いただけじゃわかんないと思う。」
「あーまあ難しいよね。」
京極さんの話のまとめ
1333年 鎌倉幕府滅亡
↓
1334年 建武の新政が始まる
↓
1335年 中先代の乱が発生する
↓
1336年 建武式目制定 室町幕府の成立
↓
1348年 四條畷の戦い
↓
1349年 観応の擾乱
そして話している間に京極さんと俺は教室に到着した。
「2人ともおかえり〜、交渉は進んだ〜?」
扉を開けると、足利さんが俺たちを出迎えてくれた。
「あーそれがね...」
京極さんはちょっと言いづらそうにしながら、今日のことを伝えた。
「そっか〜、それは残念だったね〜」
「今回は失敗したけど、次はもっと別の作戦を立てようと思ってるの。」
京極さんはまだ諦めていない様子だった。
「京極さん、やる気があるのはいいんだけど次は私が交渉に行くよ。」
「え?どうして?...私は学級委員だから次も私が行くべきだと思うんだけど。」
「細川さんを説得させるには、同じ一門衆である私が行くべきだと思うんだよね〜。それに...」
「それに?」
「京極さん、いざとなったら私を身代わりにすることだってできちゃうからね〜」
「いや、何で私が足利さんを身代わりにするの!?そんなことするわけないでしょ!」
「でも嘉吉の変の時は私の先祖助けてくれなかったよね〜?細川さんは犯人討伐してくれたのに」
「あれはしょうがないじゃない!あの時は私の先祖も暗殺されちゃったから...」
何やら物騒な話が続いている。
「だから今回も劣勢になったら私のことを生徒会に差し出すんじゃないかなって思ったの。まあ次私が行って失敗しても京極さんには危害を加えないようにはするけどね〜」
ここで俺は口を挟んだ。
「足利さん、嘉吉の変っていつの話だ?」
「え〜とね、1441年に発生した暗殺事件のことだよ。当時の将軍だった足利義教が宴会中にいきなり首はねられて即死しちゃったんだよね。犯人は赤松さんで、細川さんに討伐されたことでこの事件は終結したよ〜」
「そんな事件あったのか...京極さん仲間なのに何もしてないじゃないか」
「うっ...それはそうだけど...」
「ということで、京極さんは交渉役から解任するね。」
こうして、次の交渉は足利さんが行くことになった。