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第60話 文化祭1

〜休み時間〜


「前田君、ちょっといいかな?」


ホームルームの後、京極さんと足利さんが俺の席まで来て話しかけてきた。


「2人ともどうしたんだ?」

「文化祭のことで聞きたいことがあるんだけど、前田君もメイド服着るの?」


「!?」


京極さんからの予想外の質問に俺は驚きを隠せなかった。


「いや、俺にメイド服は似合わないって...」

「そうなの?逆にありかもしれないよ?それとも他に着たい衣装があるってこと?」

「別にそういうわけじゃ...」


俺が言葉を詰まらせていると、足利さんが会話に入ってきた。


「前田君は執事が似合うと思うよ〜」

「執事...?」


つまり執事服を着てほしいということか。


「足利さんそれいいね!高師直(こうの もろなお)の再来になるんじゃない?」


京極さんが俺の知らない人の名前を出してくる。


「高師直って何者だ?」


俺が質問すると、足利さんが答えてくれた。


「私が説明するね。高師直は足利家に支えていた執事で、南北朝時代に活躍した武将だよ。


足利家の執事であると同時に室町幕府の執事も兼任していて、政治だけでなく軍事にも優れていたすごい人だったんだよ〜」


足利さんが得意げに語ってくる。


「そ、それはすごい人だな...じゃあ今でもその高さんが足利さんの執事をやってるのか?」

「...」


しかし、俺が質問をした途端に足利さんから笑みが消えた。


「師直の一族はね、もう残ってないの...」


足利さんから衝撃的な発言が飛んできた。


「ええ!?そうだったのか!?」


俺が驚いてると京極さんが口を挟んできた。


「ここからは私が説明するよ。高師直は南朝方の楠木正成(くすのき まさしげ)北畠顕家(きたばたけ あきいえ)新田義貞(にった よしさだ)相手に互角に戦えるくらい強かったんだけど、それ故に周りの人たちとの軋轢を生み出しちゃったの。師直は恩賞対策として、足りない分は貴族や寺社の領地を奪ってたんだけど、それが原因で執事職を失ったの。罷免させたのは尊氏の弟の直義だったから、師直は直義を排除するために尊氏の家を大軍で包囲して、直義を失脚させたよ。その後直義が反撃を仕掛けてきたことで師直との合戦が勃発して、師直は敗北して最期は上杉さん(上杉謙信の先祖)によって一族皆殺しの憂き目にあったんだよね。この一連の流れを『観応の擾乱』って呼ぶよ」


俺は京極さんの長い語りにもすっかり慣れてしまっていた。


「そんなことが起こってたのか...」

「だから前田君、執事になってくれない?」


足利さんが俺にお願いをする。


「ええ...」

「前田君、私からもお願い!私も執事が必要だと思うの」


京極さんも便乗してきた。


「何で京極さんまで推してくるんだ?」

「実は私の家も昔は執事がいたんだけど、今はいないんだよね。だから、前田君がなってくれたらうれしいかなって思ったの」

「...わかった、そこまで言うならやってみるよ」


俺は2人の話を聞いて、ついに執事になることに決めた。...自分で言ってて思ったんだが、これって本当に文化祭の話なんだよな?


「一応聞くけど、京極さんの執事はどうしていなくなったんだ?...あっ今度はもっと簡潔に話してね」

「えっ、前田君が聞いてくるなんて珍しいね!まあ詳しいことは分かってないんだけど、いきなり暗殺されて存在抹消されたの」

「本当に何があったんだよ...」


色々気になるが、これ以上は聞かないことにした。



〜教室〜


数日後、ホームルームの時間を使って文化祭の出し物の役割が決まった。既に10月になっているが、まだ暑い日々が続いていた。

主な役割としては


衣装→玲那

接客→玲那、足利さん、京極さん

前日の準備、後片付け→俺

こんな感じになった。


そしてメニューはオムライスを出すことに決まった。


「それでは、あと2週間で文化祭なのでみんなで頑張っていきましょう!」


京極さんが元気よく言った。


「ゆっきー、あーしたちの衣装楽しみにしててね」


隣の席の玲那が小声で俺に話す。俺は美少女たちのメイド服姿が見られることに気分が高揚していた。


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