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第51話 2学期

〜自室〜


9月になり、夏休みが終わった。


「お兄ちゃん、起きて〜」


夏希が俺の部屋に来て起こしにくる。このやりとりも久しぶりだな。


「ああ、すぐ起きるよ」

「今日から2学期だね。またみんなと会えるよ」


玲那たちとは会ったばかりだけどな...あっ拓人とは久しぶりに会うな。

俺はすぐに支度して学校へ向かった。



〜教室〜


俺が教室に入ると、いきなり拓人が話しかけてきた。


「幸晴!!何なんだよあの写真は!?」


拓人が俺の肩を掴んだ。俺が毛沢東の写真を送ったことを問い詰めたいのだろう。


「いや、拓人が水着写真を送ってほしいって言ってたから毛沢東の水着写真を送ったんだぞ。特に指定とかされてなかったし...」

「あんなハゲてるおっさんの水着見たいなんて一言も言ってねぇよ!つか何で毛沢東の水着写真持ってるんだよ!」


珍しく大声で叫ぶ拓人。よっぽど俺が送った写真が嫌だったのだろう。これは反省しなくてはいけないな。

その時、京極さんが俺たちのやりとりに割り込んできた。


「ねえ、今毛沢東のことを『あんなハゲてるおっさん』って言ったよね...?」

「げっ京極さん...」


拓人が俺の肩から手を離した。そしてあからさまに嫌そうな顔をする。


「神崎君は毛沢東がどんなにすごい人なのか知らないんだね」


京極さんの表情が普段と違って「無」になっていた。そして一瞬間を置いてから一気に喋り出した。


「毛沢東はすごい人なんだよ!ソ連のスターリンを参考にしてパラダイス作ろうぜグループ(中国共産党)を結成させてるし、当時政権のトップにいた中国国民党の蒋介石と手を組んで大日本帝国とやりあってるし、第二次世界大戦後に発生した国共内戦で国民党を台湾へ追い払って、中華人民共和国を建国して初代国家主席になってるし、よく批判されている大躍進政策や文化大革命とかを見てもスケールの大きさは世界史の中でもトップクラスだと思うの。


だから二度と『あんなハゲてるおっさん』なんて言わないで!」

「...」


京極さんの剣幕に押されて、拓人は黙ってしまった。正直に言うと俺も怖い。


「京極さん、もうその辺にした方が...」

「おっといけない、私ったらついつい熱くなっちゃったわ」


俺は京極さんを止めることにした。


「それで、神崎君は毛沢東じゃなくて誰の水着写真が見たかったの?」


京極さんが話を戻して、拓人に質問した。


「それは...姫川さんや足利さんのが見たいんだけど...」


なるほど、拓人は胸が大きい子の方がいいのか。それとも京極さん本人が目の前にいるから、あえて京極さんの名前をあげないのか。


「わかった!今から姫川さん呼んでくるね!」

「えっ?ちょっと!?」


京極さんは教室内にいる玲那のもとへ向かった。



〜美紀side〜


私は姫川さんのところに行ってすぐに話しかけた。姫川さんの両隣には2人の取り巻きがいる。小林愛梨さんと川口瑠璃さんだ。


「姫川さん、今すぐ前田君のところへ来てほしいの!」

「京極さん?急にどうしたの?」


姫川さんはきょとんとしながらも歩き出した。


「ちょっと待てよ!玲那に一体何する気なんだ?」


取り巻きの1人である川口さんが私の動きを止める。私のことを敵意むき出しの目で見つめていた。


「大丈夫だよ、姫川さんには何もしないから」

「...瑠璃、ここは京極さんのことを信じてあげようよ」


そこへもう1人の取り巻きである小林さんが間に入ってくれた。


「こんなに思想強い奴のことを本当に信じていいのか?」

「この人と敵対したら、足利家も敵に回す可能性があるから...」

「わかったよ、愛梨が言うなら...」


小林さんの説得で川口さんは引き下がってくれた。

私は足利家の権威の強さを改めて実感したのだった。



〜幸晴side〜


しばらくして、京極さんが玲那を連れてきた。


「姫川さん連れてきたよー!」

「神崎君だっけ?あーしに何か用があるの?」


玲那は腕を組んで拓人を見つめている。玲那の胸がむにゅっと持ち上がっていた。


「いや...その...幸晴が持っている姫川さんたちの写真を俺にも見せてほしいんだ」


拓人は自身の思いを玲那に伝えた。


「あー...ごめんね、あれはゆっきー以外には見せられないから」


玲那は丁寧に断った。


「なん...だと...!?」


拓人はショックを受けていた。


「わかった、タダとは言わない。いくら積めばいいんだ?」


だが、拓人は諦めていなかった。俺に向かって金を出してまで写真をゲットする気でいるみたいだ。


「拓人、俺は別に金を求めてるわけじゃないんだけど...」

「前田君!そんな話に乗っちゃダメだよ!賄賂なんかで動かされているようじゃ、末期の明王朝みたいになっちゃうよ!」


再び京極さんが俺と拓人の間に割って入ってくる。


「み、明王朝?」

「そう、漢民族の朱元璋(しゅげんしょう)が建国した明王朝だよ!あの国は末期になると宦官(かんがん)による専横と、賄賂の横行によって政治が腐敗してたの。それが原因で明王朝は満州族の国である清王朝に滅ぼされちゃったのよ。


今の2人のやりとりが、私から見たら明王朝末期みたいな状況に見えたんだよね」


京極さんは一体何を見ているのだろうか。


「ゆっきー、あーしはそろそろ戻るね」


京極さんの長い話に巻き込まれたくないと思った玲那はすぐにこの場から去っていった。


「前田君、賄賂なんか受け取っちゃダメだからね!」


京極さんが改めて俺に伝えてきた。


「わかったよ、拓人との交渉は決裂させるから...」


拓人には悪いが、京極さんを敵に回すわけにはいかないからな。


「そんな...幸晴、お前はなんて薄情な奴なんだ...」


教室内は険悪な空気になっていた。


「おはよう〜」


その時、足利さんが教室に入ってきた。


「「足利さん...!」」


俺と京極さんが同時に足利さんの方へ駆け寄った。


「2人ともどうしたの〜?」


俺はすぐに足利さんに事情を説明した。


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