第45話 夏祭り4
俺たちは遠回りしながら移動した。アクシデントはあったが、なんとか花火までには間に合ったみたいだ。桟敷の倒壊で中止にならなくてよかった。
「ここまで来れば大丈夫でしょ。ゆっきー、もう大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ」
正直まだ腹は痛いが、さっきよりはだいぶマシになってきた。
「あそこで一旦休まない?前田君辛そうだし」
京極さんの案で俺たちはベンチに座った。その間も玲那がずっと介抱してくれていた。
そして、ついに最初の花火が打ち上がった。
「お〜やっぱり近くで見ると迫力があって綺麗だね〜」
足利さんが目を輝かせて言った。
「...足利さん、さっきはあんな目に合わせちゃって本当にごめん」
「私は大丈夫だから心配しなくていいよ。それよりも、前田君の方が痛かったでしょ?ただでさえ心が傷ついてるのに、身体までやられたら完全に折れちゃうと思うし...私を守ろうとしたのは十分伝わったよ」
「俺...本当に無力だったよな。楽しい思い出にしたかったのに、みんなに怖い思いさせて台無しにしちゃった...」
俺は花火の途中だというのに、どんどん気分が沈んでいった。
「前田君、あんまり自分を責めないで!前田君にはいいとこいっぱいあるじゃん!」
京極さんが鬱屈とした流れを変えてきた。
「まずは私と同じ北朝派っていうところ!今の学校の教科書は南朝を正統として扱ってるから、前田君は教科書に逆らう反骨精神を持っていることになるね。南朝の天皇は後醍醐、後村上、長慶、後亀山の4人がいて96〜99代目って書いてあるんだけど、北朝の天皇(光厳、光明、崇光、後光厳、後円融の5人)にはそれがないのよ。」
「いや、別に教科書に逆らうつもりで言った訳じゃないんだけど」
「それから魏晋南北朝時代だと南朝派なとこだね。南朝は漢民族王朝だから、前田君は漢民族のことを大事に思ってるってわかって嬉しかったの」
何だよ、漢民族を大事にするって。意味がわからん。
「あと、私が社会主義でスターリン、毛沢東、金日成を支持してるって知ってても否定してこなかったのもよかったし、私が風邪ひいた時にうつっちゃうのも気にせずに看病してくれたこともいいところだよね」
「そんなこともあったな」
「前田君って何だかんだで私の話にずっとついてきてくれてるよね。...私ってさ、思想が強すぎるから、いつも周りから人が遠のいていっちゃうことが多かったんだよね。でも前田君は知らないことでもわざわざ調べてきて、自分なりの答えを探し出していた。個人的にそこが一番嬉しかったなー」
「京極さん...」
俺は少しだけ勇気づけられた。京極さんの話が終わると、今度は玲那が話しかけてきた。
「ねえ、ゆっきーって色々辛い目に遭ってるけど...今でも女の子に興味ある?」
玲那が不安そうな顔をしている。
「そりゃあ俺だって男なんだからちゃんと興味あるよ。でも...次あんなことが起こったらもう立ち直れないかもしれない」
「うーん、あーしだったら絶対にそんな目に遭わせないけどなー...ちなみにあーしの彼女宣言はドキッとした?」
「...うん」
俺は静かに頷きながら言った。
「まさか京極さんが彼女宣言するなんて予想外だったけど、これであーしも同じラインに立てたってことだね」
どうやら玲那は京極さんの彼女宣言を本気で受け止めているみたいだった。
「前田君、私の宣言はどうだったかな?」
今度は足利さんが俺に聞いてきた。
「正直、すごく驚いてるよ。だって...NTRされてるような俺がこんないい思いしていいのかなって思っちゃったし」
「前田君、もう少し前向きになって考えてみて。NTRされたのは残念だったけど、それを仕組んだ人たちはきっと人を見る目が無かったんだよ〜」
「そうなのかな...」
俺は足利さんの主張に流されそうになっていた。
「前田君は心が傷ついてる状態だから、すぐには前向きになれないかもしれないけど...こうなったらNTRを仕掛けた人たちよりも、幸せになればいいんだよ!」
足利さんが、珍しく感情的になっていた。
「でも幸せになるって具体的にどうすれば...」
「とりあえず、あーしたちはみんなその場の雰囲気に流されたのもあったけど、ゆっきーに向かって彼女宣言をした訳でしょ?だからまずはそれに答えるべきだと思う」
玲那が俺にはっきりと聞こえるように話す。つまり、3人の好意に対して俺がはっきりとした答えを出さなければいけないということか...
俺は今後の人生を左右する選択を迫られることになった。




