第44話 夏祭り3
「何なんだこれは...」
俺はラベルを見て唖然としていた。
「カレーパンサイダーと迷ったんだけど、美味しかった?」
京極さんが俺に感想を聞いてくる。ていうかカレーパンサイダーもあるのかよ。
「何というか...独特な味だったよ」
やはり京極さんは普通じゃなかったようだ。
買ったものを食べ終えた俺たちは、花火を見るために移動することにした。
「そろそろ花火始まるから行こうか」
俺は玲那たちと並んで歩く。人混みを抜けた先で、俺はとある人物と遭遇することになった。
「あれ、幸晴じゃん。こんなとこで何してるの?」
「...!?なんでここにいるんだよ...」
そこには金髪の男がいた。
「誰?ゆっきーの知り合い?」
玲那が俺に聞いてくる。
「ああ、知り合いだけど...」
「そうそう、俺は幸晴の前の学校で一緒のクラスだった周防隆俊だよ」
俺の元クラスメイトだった隆俊が先に話してくる。この男が、NTRを仕掛けてきた張本人だ。
「幸晴も花火見たいんだったら、一緒にくるか?そこの3人も一緒にどう?」
隆俊が俺以外の3人に声をかける。
「いや、俺たちは4人で見る予定だから...」
「私はあなたと行きたくない」
俺が話そうとしたら、京極さんがいきなり前へ出て割り込んでくる。
「えー?幸晴の彼女さん冷たいね。そんなに拒絶しなくてもいいじゃん」
京極さんがはっきりと断っているのに、隆俊は全然動揺していなかった。
「彼女ってどういうこと...?」
玲那が『彼女』という言葉に反応する。
「舞から聞いたんだよ。そこのピンク髪の子が今の彼女なんだって」
マジかよ。京極さんの彼女宣言を舞が隆俊に伝えていたのか。これは非常にめんどくさいことになってきたぞ。
「他の2人はどうなの?来るの?来ないの?」
「あーしは行かないから!あーしも...ゆっきーの彼女だもん!」
「私も前田君の彼女だから行かないよ〜」
「!!??」
俺は2人の言葉に驚愕した。
「おいおいマジかよ。三股かけてるとかめちゃくちゃクズじゃねえか。ピンク髪の子さ、そんなクズ野郎よりこっち来た方がいいぞ」
「前田君はクズじゃないよ。これは...そう!コンカフェとかにあるハーレムプレイだから!」
京極さんが状況をさらにややこしくしてきた。
「...へぇー、まあこっちとしちゃそんなの関係ないけどな」
隆俊は平然とした様子で、足利さんに向かって手を伸ばしてきた。
「やめろ!足利家に手を出すな!」
俺は隆俊の手を掴んで阻止した。
「...邪魔」
すると、隆俊はもう片方の手で俺の腹を殴った。
「がっ...!?」
俺は痛みでうずくまってしまう。
「ゆっきー!?」
「何?俺にあれだけのことされてまだ逆らえると思っちゃってたの?」
「ううううっ...」
やばい、めっちゃ痛い。
「アンタ、なんてことするのよ!?」
玲那が隆俊に向かって叫ぶ。
「幸晴が俺に逆らうからこうなるんだよ。お前、転校しただけで逃げられると思うなよ?」
ああそうか、これは罰なんだ。俺が立ち向かわずに逃げたから、こんなことになったんだ。
「幸晴はもういいから、3人とも俺の後についてきな。聞けなかったら...わかってるよな?」
「聞かなかったらどうなるの?」
京極さんが隆俊に聞いた。
「こいつにもう一撃喰らわせる」
「なるほどね、やっぱり韓国好きはロクなのがいないのね」
「...は?」
京極さんはいつもの調子で喋っている。
「その韓流みたいな髪型を見ればわかるわ。愛国心を失った売国奴なんだって」
「...もういい、話にならねえ」
隆俊が京極さんに掴みかかろうとしたその時だった。
「逃げろー!!桟敷が倒壊するぞー!!!」
「...え?」
俺たちが声が出た方を見ると、祭りの中心地にあった桟敷がこちらに向かって倒れてきた。
「はあああああ!?」
ずどおおおおおおんっと大きな音を立てて桟敷が倒れた。
目を開けると、目の前には倒れた桟敷と地面に挟まっている隆俊の姿があった。
「いってえ、何なんだよこれ...」
「やったー!韓国好きが潰れたよ!」
京極さんがその姿を見て喜んだ。
「ゆっきー、今のうちに逃げるよ!」
玲那が俺の肩を持って立ち上がった。そして俺たちは逃げるようにしてその場から立ち去ろうとした。
「逃げんなよ!この...!」
隆俊が悪あがきをするかのように、落ちている石を俺に向かって投げつけてきた。
「危ない!」
足利さんが俺の後ろに回って俺の背中を守った。
代わりに足利さんの背中に石が当たってしまった。
「痛った...」
「ちょっと足利さん!?何で俺を庇って...」
「...前にも言ったでしょ?私が前田君の背中を守るって」
それってまさか5月にやった体育祭の時の話か?
「いや確かに言ってたけど...」
「それより早く行くよ〜」
足利さんが俺の背中を押しながら進んだ。




