第22話 海水浴1
〜教室〜
梅雨が明けて7月になった。気温が上がり、夏も本気を出してきているようだ。
「ゆっきーおはよー、今日も暑いね」
席に着くといつものように、玲那が挨拶をしてくれる。
「ああ、いかにも夏本番って感じだな」
「前田君おはよう、ちょっといいかな?」
足利さんが俺の席にくる。今回は京極さんも一緒だった。
「夏休みにみんなで海に行こうと思ってるんだけど、前田君も一緒に来てほしいの〜」
「え?俺が?」
「うん!前田君と楽しい思い出を作りたいの」
京極さんが笑顔で言ってくるが、この人が言うと何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。
「ちょっと待って!ゆっきーが行くならあーしも行きたい!」
隣の席の玲那がすぐに反応した。
「もちろんいいよ〜。4人もいれば絶対盛り上がるね〜」
「足利さんありがとー!」
すんなり受け入れる足利さん。俺は何も答えてないのに数に入っていた。
「俺まだ何も言ってないんだけど...」
「前田君も海行くでしょ?」
「前田君は私たちの水着姿見たくないの〜?」
京極さんと足利さんが上目遣いで言ってくる。それは反則だろ...絶対に断れないじゃないか。
「見たいです」
俺は即答していた。
「決まりだね、場所とか時間は後で伝えるよ〜」
足利さんは嬉しそうにしながら京極さんと一緒に席に戻っていった。
〜放課後〜
「幸晴、一緒に帰ろうぜ」
珍しく拓人が誘ってくる。何か話したいことがあるのだろうか。
「いいけど、急にどうした?」
「ちょっとお願いしたいことがあってな...」
俺たちは歩きながら話を進めた。
「幸晴は今日、足利さんたちから海に誘われたよな?」
「そうだけど、それがどうしたんだ?もしかして拓人も行きたいのか?」
「いやそういうことじゃないんだ。幸晴にみんなの写真を撮ってきてほしいんだ」
なるほど...恐らく拓人は京極さんと関わりたくないけど水着姿は見たいんだな。
「わかったよ、みんなが許可してくれるかわからないけどお願いはしてみる」
「ありがとう、流石俺の親友だ」
女子の水着姿を見たいという気持ちが抑えられないのは俺だけではなかったようだ。
「だけど、俺普段写真とか撮らないからあんまり上手く撮れないかもしれないぞ?」
「安心しろ、それも想定して参考書を用意したからな。これを貸すから読んで学ぶんだ」
拓人は俺に水着姿のキャラクターが描かれている画集を渡してきた。
「ありがとう拓人、これで画角とか勉強してみるよ」
俺は本を受け取ってカバンの中にしまった。
「でも幸晴ってよくあの3人と仲良くできるよな。海に誘われるくだりは見ててギャルゲーかよ!って思ったわ」
「...?普通に話しやすいと思ってるけど...」
どうやら拓人から見たら違うらしい。
「だって京極さんは偏った思想を主張してくるし、姫川さんは常に取り巻きと一緒で話しかけにくいし、足利さんは家柄が凄すぎるからな...」
「そっか...そういう見方もできるのか」
前に足利さんが『足利家』っていうだけで距離を置かれるって言う理由がわかった気がした。
〜自宅〜
「お兄ちゃんおかえりー」
家に着くと、夏希が出迎えてくれた。
「ねえ、もうすぐ夏休みだけどお兄ちゃんは何する予定なの?」
「ああ、玲那たちと海に行くことになった」
「ええ!?お兄ちゃんが海に行くの?大丈夫?迷子になったりしない?」
「しないって、もう高校生なんだから」
何で夏希は妹なのにこんなに過保護なんだ...
「でもお兄ちゃんにもついに春が来たんだね〜。去年だったらこんな青春イベントありえなかったもんね」
「去年の話はあんまりしないでくれ」
思い出したくない記憶が蘇ってしまうじゃないか。
「とにかく、せっかくのイベントなんだからちゃんと準備しておかなきゃね!」
「わかってるよ、みんなとやりとりしながら進めていくから」
俺は去年の分まで夏休みを満喫してやろうと思った。
〜玲那side〜
翌日、あーしは授業が始まる前の時間を使って足利さんに話しかけることにした。
「足利さん、今週末って空いてる?もしよかったら一緒に買い物行きたいって思ってるんだけどどうかな?」
「いいね〜、私も色々準備しておきたかったんだよね。それなら京極さんも誘ったほうがいいよね?」
あーしは一瞬迷った。京極さんとは体育祭の時に衝突しそうになったことがあるからだ。でも断ったら怪しまれるよね...
「もちろんいいよー!3人で行こう!」
「私はあんまりアウトドアなことは詳しくないから、店とかは姫川さんが決めちゃっていいよ〜」
「オッケー、また後で連絡するね!」
まあ足利さんがいれば大丈夫だよね。
あーしは席に戻って週末の予定を組むことにした。




