第21話 雨宿り
〜幸晴side〜
俺は京極さんの家を出て、自宅へ向かって歩き出した。
「ん...雨?」
だが、急に雨が降ってきてしまった。
急いで雨宿りできそうな場所を探す。
「あそこでいいか、普段は行かないけど」
俺は帰り道の途中にある書店に入った。
「さて、入ったはいいけど特にほしい本があるわけじゃないからどうやって時間をつぶすか...」
店内を歩き回っていると、ある人物に話しかけられた。
「前田先輩?何か探しているんですか?」
その正体は細川さんだった。
「細川さん!実は雨宿りしてるだけで探し物をしてるわけじゃないんだ...」
「そうですか、では少しお話ししませんか?前田先輩に聞きたいことがあるんです」
「いいけど...何か知りたいこととかあるのか?」
「はい、先輩は今気になる人とかいないのですか?」
細川さんは意外なことを聞いてきた。まさか細川さんが恋バナを振ってくるなんて...
「え?気になる人?」
俺は少し動揺してしまう。
「夏希さんが私に色々話しているのですが、先輩自身はどう思っているのか知りたいのです。先輩の周りはいつも綺麗な人たちがいるのに、あんまりデレデレしてないのが不思議に思ったので」
細川さんのまっすぐな目線が俺に向けられる。
「実は転校前に色々あってね...」
俺は細川さんに転校前の出来事を話すことにした。
「俺、前にいた学校でクラスの女子に告白されて付き合ったことがあったんだ。だけどある日突然告白そのものが罰ゲームだったことが判明して絶望にうちひしがれたんだ」
「...」
「しかも、告白してきた女子には既に彼氏がいてさ...その彼氏からNTRされたという演出を周りの人達が受け取ってしまったことで、俺は何も信じられなくなって...クラスの中で居場所を無くしてしまったんだ」
「...それは辛いですね」
「それが原因で東京からこの鎌倉まで引っ越してきたんだ...っていう感じかな」
「どうりで一歩引いた態度になってしまうことがあったのですね」
細川さんは最後まで静かに話を聞いてくれた。
「前田先輩、一旦外へ出ましょう。そろそろ日が沈みそうですし」
「えっ?でも外は雨で...」
「私の傘に一緒に入れば大丈夫です。先輩の家まで私が送ってあげますよ」
「...わかった」
俺は細川さんの提案を素直に受け入れた。
〜帰り道〜
俺は細川さんと相合傘をしていた。いつもより距離が近くて緊張する。
「細川さん、ここまでしてくれて本当にありがとう」
「いいんですよ。先輩はいつも頑張ってるんですから、たまにはお礼させてください」
「そんな...別にお礼されるほどのことはしてないと思うんだけど...」
細川さんにいつも世話になっているのは妹の夏希の方だと思う。
「先輩は私と最初に会ったときに、道案内してくれたじゃないですか。今回はそのお返しがしたかっただけです」
なんていい後輩なんだ。
「先輩も私と同じように学校に入ったばかりの時期だったのに、迷ってた私を助けてくれました。その調子で徳を積んでいけば、きっとその善行が自身に返ってくるときがきますよ」
「細川さん...俺、もう少し周りを信じられるように頑張ってみるよ」
「ええ、頑張ってくださいね」
そして、家に着いた俺は細川さんに挨拶をして帰った。
「さて、私も動きますか...」
〜由理side〜
「ん?細川さんからだ...」
私は細川さんからメッセージが来ていることに気づいた。
『前田先輩の重い過去を払拭させるくらいのことをしてあげてください』
『せっかく引っ越してきているので、この街のいいところを伝えるためにどこかへ連れて行ってあげたらどうですか?』
そういえば、前田君の家に行った時に夏希ちゃんから重い過去を聞いたことがあったって言ってたな〜。
う〜ん、行きたいところか...どうせなら京極さんにも聞いてみよう。
私は京極さんにメッセージを送った。
『京極さん、来月から始まる夏休みでみんなで遊びたいと思ってるんだけど、行きたいところある〜?』
すぐに返信がくる。
『私は海行きたい。海の開放感なら前田君の気分も晴れると思うよ。』
海か〜。よし、来月前田君にも提案してみよう。
...でも海へ行くってことは水着用意しなきゃいけないよね...まあ今度買いに行けばいいか。
私は来月を楽しみにしながら寝ることにした。




