第17話 体育祭4
〜グラウンド〜
俺は走って本部へ向かった。そこで借り物競走のルール説明を受けた。
・くじを引いて書かれているお題のものをスタート地点まで運んでくる。
・くじの引き直しは不可。
・「借り物」は人も可。
・借り物はスタッフの人が判断する。
まとめるとこんな感じだった。
「では、選手の皆さんはスタート地点に並んでください」
スタッフの細川さんが選手たちを誘導する。白線の後ろに立っているだけですごく緊張する。
「位置について、よーいどん!」
細川さんの合図とともに、選手全員が一斉に走り出した。くっ...みんな速いな...!
俺はテーブルに置かれているくじを引いてすぐに紙を開いてお題を見た。
『闇を照らす存在』
...!?何だこのお題は!?
俺はあまりにも抽象的なお題に困惑していた。書いた人は中二病を患っているのだろうか。周りを見ると他の選手も似たようなお題を引いて悩んでいるような感じだった。
俺は少し悩んでから、ある答えに辿り着いた。
確か先月生徒会へ交渉に行った時、京極さんが足利さんのことを『神と仏と皇帝と太陽のすべての力を持つ天皇を打ち破れる存在』と言っていた。
つまり答えは足利さんだな。
俺はすぐに自分のクラスの応援席へ向かった。
〜応援席〜
俺は応援席にいる足利さんに声をかけた。
「前田君、どうしたの〜?」
「足利さん、今すぐ俺と一緒に本部まで来てほしいんだ!」
「いいけど、私がお題なの?」
「そうなんだ、詳しいことは後で話すよ」
「ゆっきー、あーしじゃダメなの?」
玲那が名乗り出てくる。
「ごめん玲那、どうしても足利家の権威が必要なんだ」
俺は足利さんを連れて本部へ行こうとした。しかし、ここである問題に気づいた。ルールで『運んでくる』と言われていたことに。
俺は足利さんの前でしゃがんだ。
「前田君...?」
「足利さんをおんぶして行くから俺の背中に乗ってほしい」
「ええ!?大丈夫?私そんなに軽くないと思うけど...」
そう言いながらも、足利さんは俺の背中に乗ってくれた。
「ああー!前田君が足利さんを擁立してる!」
後ろから京極さんの叫び声が聞こえてくる。擁立にツッコミたいが今は急いでいるのでスルーした。
「足利さん!落ちないようにしっかり掴まってね!」
京極さんの声を聞きながら、俺は全力で走った。
「前田君、重くない?」
足利さんがおんぶされたまま聞いてくる。
「全然重くないよ」
俺は重さよりも、足利さんの柔らかい身体が密着していることにドキドキしていた。
「前田君ってあったかいんだね〜」
足利さんがくっついてくるせいで足利さんの豊満な胸がむぎゅっと押しつけられていた。
「あのー足利さん?ちょっとくっつきすぎなんじゃ...」
「さっき京極さんが落ちないようにって言ってたからね〜...それに」
「それに?」
「こうすることで前田君の背中を守ることができるよ〜」
「いや、何で俺の背中が狙われるんだよ」
一体いつの時代の話をしているんだ。
「勝つために私たちのクラスを邪魔しようとしてくる人がいるかもしれないでしょ?それで私の背中を犠牲にして前田君を勝たせる作戦だよ」
「それだと足利さんが大変なことになっちゃうだろ」
「大丈夫だよ〜私の一族結構タフだし、先祖の尊氏公は背中に矢が刺さっても生きてたからね」
「マジかよ、尊氏強すぎだろ。でも自分の身体は大事にするべきだよ」
「どうして?」
「そりゃ足利さんだって女の子なんだから...」
自分で言っててちょっと恥ずかしくなってきた。
「...!嬉しいこと言ってくれるね〜。前田君には今度恩賞あげるよ」
足利さんが俺を強く抱きしめる。大きな胸が体操服越しに俺の背中に密着する。
俺にとっては今の状況が既に恩賞のようなものだと思いながら走り続けた。
〜本部〜
俺はグラウンドを横断して本部に辿り着いた。
「赤組が無事に到着しました。お題を確認するので紙を渡してください」
足利さんを降ろして細川さんに紙を渡す。
「ちゃんとお題通りのものを持ってきていますね。赤組1等おめでとうございます」
俺はよくわからないお題をクリアしたのだった。審判が細川さんで助かった。
「おお〜よかったね〜」
「足利さんのおかげだよ」
「私はついていっただけだけどね〜、でも役に立ててよかったよ」
俺たちはすぐに応援席に戻った。
〜応援席〜
「あっ二人ともおかえりー」
京極さんが俺たちを出迎えてくれた。
「勝てたみたいでよかったね、でも何でお題が足利さんだったの?」
「いや、それは説明すると長くなるんだけど...」
「じゃあ昼休みに聞かせて!お昼はどこで食べてもいいみたいだから、午前中の部が終わったら一緒に食べよ!色々質問したいし」
京極さんが俺を誘ってくる。また思想詰め込んできそうだけど大丈夫なんだろうか?
俺が悩んでいると、後ろから玲那が割って入ってきた。
「ちょっと待って!ゆっきー、あーしと一緒にお昼食べない?京極さんと一緒じゃ落ち着かないでしょ?」
「姫川さんそれどう言うことかな?」
「昼休みは大切なリラックスの時間でしょ?その時間まで思想ネタ聞かされたらゆっきー疲れちゃうよ?」
「ふーん...姫川さん、私と敵対するつもりなんだ...」
玲那と京極さんが一触即発の状態となっている。
「まあまあ2人とも、ここはお互い妥協して3人で食べればいいんじゃない?」
後ろで見ていた足利さんが2人を宥めた。こういう時足利さんは頼りになる。
「まあ足利さんが言うなら...」
京極さんはすぐに納得してくれたようだ。
「ゆっきー、あーしが頑張って京極さんの偏った思想から守るからね」
「姫川さん!?その言い方だと私の思想ネタが全部悪いみたいじゃない!」
俺はこの調子じゃ落ち着くことはできないことを昼休みが始まる前から悟ってしまったのだった。




