第16話 体育祭3
〜翌日〜
今日は体育祭だ。体育祭はグラウンドで行うので、教室にあるイスを外へ運んでいった。
イスを運んでいる最中、横から拓人が話しかけてきた。
「いよいよ体育祭だな、幸晴は借り物競走に出るんだよな?」
「そうだよ、あんまり変なお題じゃなければいいんだけどな...」
「これは噂話なんだが、お題を作っているのは生徒会らしいぞ」
「マジかよ、俺生徒会とは嫌な思い出があるんだよな。また何か言われたらどうしよう...」
「流石にもう根に持たれてはいないと思うけどな」
不安が残る中、イスを運び終えた俺たちは宣誓を聞いて体育祭の始まりを迎えた。外は快晴といっていいくらい晴れていた。まるで夏の始まりを告げてきているようだった。
〜応援席〜
「みんな!今日は絶対に勝とうね!そろそろ最初の種目が始まるから鉢巻をつけてね」
すでに頭に鉢巻を巻いた京極さんがみんなに呼びかける。体操服姿の京極さんも素晴らしかった。特に太ももが輝いて見えた。
「やっぱり赤色っていいよね!まるでスターリン、毛沢東、金日成率いる共産主義者になった気分!保守派を一掃したいと思っている革新派の私たちにピッタリの色だよ!」
京極さんがまた危なっかしい発言をしている。
「誰を一掃するんだよ...」
俺は思わず呟いてしまった。
「えーっとね、ルーズベルト(アメリカ)、チャーチル(イギリス)、蒋介石(台湾)、李承晩(韓国)を支持している資本主義の人々かな?それからファシズムの人であるヒトラー(ドイツ)、ムッソリーニ(イタリア)を支持する人々も粛清の対象だよ」
「京極さん、それ以上言ったら各方面から反感買うことになるからほどほどにしようね〜」
「うっ...ごめんなさい」
足利さんが京極さんに忠告する。今更だけど足利さんってよく京極さんの繰り出してくるネタを理解できるよな...
俺たちが話している間に最初の種目の準備が進められていた。
「最初は障害物競走だから、色々なものが並べられてるね。この競技は私が出場するからみんな応援してね!」
京極さんがスタート地点へ走っていった。個人競技は出場者以外休めるからありがたい。
「前田君、京極さんのこと応援してあげてね」
足利さんから声をかけられる。
「俺が応援して何か変わるのか?」
「京極さんは前田君のことを同じ派閥に属している人だと認知していると思うから、きっと喜ぶと思うよ〜」
「そうか、京極さんってどんなことを言えば喜んでくれるんだ?」
俺は足利さんに質問する。
「造反有利とか言ってみたらどう?」
「何だそれは?」
「京極さんの好きな言葉だよ」
知らない言葉だが、もう競技が始まっているし意味を聞いてる暇はない。俺は足利さんの意見を採用することにした。ちょうど目の前に平均台があるので、京極さんがそこを渡っている時に言ってみるか。
京極さんと他の選手たちが平均台を渡り始める。俺は京極さんに聞こえるくらい大きな声で叫んだ。
「京極さん!造反有利ー!」
「前田君!?」
京極さんは俺の声に驚いていたが、すぐに平均台の上を走って他の選手を抜いていった。
『おおっと!?赤組が急に加速しました!』
本部の実況の人も驚いている。
そして、ハードルや網を乗り越えた京極さんは平均台でつけたリードを守りきってゴールした。
「京極さん、めっちゃ早かったね〜」
戻ってきた京極さんを足利さんが出迎えた。
「えへへ、ありがとう!まさか前田君があの言葉を言うなんて思わなかったよ!」
京極さんが俺に目線を向ける。
「実は...造反有利の意味を知らずに言っちゃったんだけど、これはどういうことだったんだ?」
「造反有利はね、左翼の人たちが暴動を正当化するためのスローガンとして使う言葉だよ!前田君もついにこっちの世界に来てくれたんだね!」
とんでもないパワーワードだった。
「ちょっと足利さん!?また誤解されてるんだけど!」
「いやぁ〜これしか方法が思いつかなくて...」
俺は京極さんの誤解を解きたかったが、目を輝かせる京極さん相手に何も言うことができなかった。
「前田君、次は借り物競走だから頑張ってきてね!」
京極さんが元気よく俺の背中を押した。




