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第14話 体育祭1

〜教室〜


ゴールデンウィークが終わり、またいつもの日常が戻ってきた。


「おはよう、幸晴!」


席に着くと、いきなり拓人が声をかけてくる。なんだかいつもより元気だな。


「どうしたんだよ拓人、いいことあったのか」

「幸晴よ、まずは周囲を見渡すんだ」


拓人に言われて俺は周りのクラスメイトたちを見る。


「みんな夏服になってるな」

「その通り!薄着になったことで、女子の胸の膨らみとかを堪能できるようになったんだ」

「それで上機嫌だったんだな」

「ブレザーによって押さえつけられていたものが解放されてちょっと大きく見えるのがいいんだよな」

「いわゆる着痩せというやつか...?」

「そうだ!幸晴もわかってきたじゃないか。俺が見た感じだと姫川さんと足利さんは大きいな。幸晴もよく見てみろ。目の保養になるぞ」


俺は2人の胸を観察した。...拓人の言う通り立派なものがあった。膨らみというよりたわわに実っていると言った方が正確な表現かもしれない。


「それと幸晴にもう一つ朗報がある。今月は体育祭があるぞ」


もうそんな時期なのか。


「なんで朗報なんだ?」

「まあよく聞け。体育祭ということは全員体操服を着るだろ?つまりその日は一日中女子の体操服姿を拝むことができるということだ。男子からしたら朗報だろ?」

「そりゃそうかもしれないけど...」


正直俺は準備とかしなくちゃいけないのが面倒くさいと思っている。


「このあと種目を決める時間があるから、どの種目に出るのか考えておけよ」

「マジか...」


俺、あんまり運動は得意じゃないんだよな...


そして、授業1コマ分の時間を使って俺たちのクラスは出場種目を決めることになった。


「では今から私たちのクラスの体育祭の出場種目を決めていきたいと思います。司会は宇多源氏佐々木流の学級委員、京極美紀が担当します」


京極さんが黒板に種目名を書いていく。そういえば京極さんって学級委員だったな。当然のことだが京極さんも夏服になっている。京極さんの胸は...普通くらいか、特に意外性は無いな...ってどこを見てるんだ俺は!


「じゃあまずは個人競技から決めます。この借り物競走に参加したい人はいますか?」


手を挙げる人はいなかった。まるで周りを牽制しているような雰囲気だった。


「いないですか...体育祭は全員がどれか1つは必ず参加する必要があるんですよ。共産主義国みたいに全員平等であることに意義があります」


京極さんがまたよくわからないことを言っている。


「あっ知らない人のために言うと、共産主義国っていうのは全ての国民が平等に暮らせるパラダイスみたいな国を作ることを目標とした考え方だよ。有名なとこだとソ連、中国、北朝鮮が採用してるの」


京極さんが語り始めると、後ろの席にいる拓人が囁いてきた。


「おい幸晴、京極さんの語りを止めるためにも手を挙げてくれ」

「何でだよ、拓人こそ止めてくれよ」

「俺は京極さんとは極力関わりたくないと思ってるんだ。思想を押しつけられそうだからな。だから団体競技の方に出るぞ」

「しょうがねぇな...」


俺は観念して手を上げることにした。まあ借り物競走ならそんなに体力も使わないだろう。


「おっ前田君出てくれるんだね!」


京極さんが嬉しそうに言うと、借り物競走の欄に俺の名前を記入した。


「きっと私の尊敬する共産主義の人たちの考え方に共感してくれたんだね」


何か誤解されてしまっているようだ。


「じゃあ次の種目を決めていきます...」


この後は思想を押しつけられたくないと思ったクラスのみんなが次々と手を上げてくれたおかげで時間以内に出場競技が決まったのだった。


「これで出場種目が決まったので、来週までに各自で練習していきましょう。私たちのクラスは赤組なので、共産主義者であるスターリン(ソ連)、毛沢東(もうたくとう)(中国)、金日成(キムイルソン)(北朝鮮)のように絆の力を大切にしていきましょう!」

「何で赤色が共産主義なの?」


玲那が質問する。


「それはね、共産主義国はみんな国旗が赤いからだよ。あと今日からグラウンドが使えるんだけど、団体の方は練習するのが難しいと思うから、個人競技の練習するときに自由に使ってね!鉢巻とかはあとで配るから」


どうやら来週までに練習できる時間があるらしい。あれ?借り物って練習できなくね?どうすればいいんだ...

俺は借り物競走の対策がわからないまま放課後を迎えた。


〜放課後〜


俺が帰る準備をしていると、教室に細川さんが入ってきた。


「前田先輩、ちょうどいいところに!ちょっとお願いがあるのですが...」

「どうしたんだ?」

「実は、体育祭の前日の準備があるんですけど人手が足りなくて、先輩に手伝ってほしいんです」

「ああ、それくらいなら全然いいよ。放課後暇だし」


面倒だけど、細川さんにはこの前図書室で中国史を教えてもらったから、少しでも貸しを返す必要がある。


「私も手伝うよ〜」


後ろから足利さんが声をかけてきた。


「本当ですか!?ありがとうございます!」

「細川さんは私の一門衆だからね〜」

「えっと...足利家と細川家はどういう関係だったっけ?」

「足利家初代当主の義康(よしやす)の曾孫が細川家初代当主の義季(よしすえ)になりますね」

「あれ?足利家の初代って尊氏じゃなかったのか?」

「尊氏は室町幕府の初代将軍だけど、足利家の当主としては8代目だよ〜」


足利さんが補足してくれた。


「え?ああ、そうなのか...」


俺はいまだに足利家とその周辺の関係性がよくわかっていなかった。


「では体育祭の前日の放課後になったら、倉庫まで来てください。よろしくお願いします」


細川さんは深くお辞儀をして、教室から出た。


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