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第11話 ゴールデンウィーク1

〜翌日〜


「お兄ちゃん、起きてー」


いつものように妹の夏希が俺を起こしにきた。今回は普通の起こし方で俺は少し安心した。


「わかったから離れてくれ。というか夏希はなんでいつも起こしに来るんだ?」

「今日はお兄ちゃんに用があってきたからね。来週からゴールデンウィークでしょ?お兄ちゃんは何して過ごすのか聞きにきたの」

「いや、特に何もないけど...」


1週間先の予定が綿密に練られている人なんてそんなにいないと思うのだが。


「えー?何それつまんないの。お兄ちゃんもしかしてぼっち?」

「そんなわけないだろ!」


少なくともクラスのみんなは好意的に接してくれていると思いたい。


「だったらゴールデンウィークに家に呼んでよ。私、お兄ちゃんの友達がどんな人たちなのか知りたいし」

「マジかよ...」

「細川さんから聞いたんだけど、お兄ちゃんは姫川先輩と足利先輩と京極先輩と仲が良いらしいね」


細川さんは夏希に何を吹き込んでいるのだろうか。


「3人の誰かがお兄ちゃんのこと狙ってるのかどうか確かめたいから、連休中に家に呼べるか聞いてみてー」


そう言って夏希は部屋から出ていった。とんでもないことを頼まれてしまったな...3人とも俺の家知らないはずなんだけど...まあ連絡先交換してあるし、メッセージ送ればいいか。

俺は3人に送るメッセージを考えながら身支度をして家を出た。


〜教室〜


「あっ前田君おはよー!昨日のメッセージ読んだ?」


教室に入った途端いきなり京極さんが押しかけてくる。


「ああ、ちゃんと最後まで読んだよ」

「それで前田君は南朝と北朝どっち派なの?」

「その話なんだけど、実はすぐには決められなかったんだ。来週の休みまでに色々調べてから伝えたいと思ってるんだけど、連休中に空いてる日ってあるかな?」


俺は誘う口実を作って京極さんを呼ぶ作戦を実行した。


「連休中だと...憲法記念日なら空いてるよ!」


憲法記念日ってことは...5月3日か。


「わかった。場所は俺の家で、時間とか住所は後で伝えるから」

「いいよー、前田君の選択を楽しみにしてるね」


よし、これで京極さんが来てくれることが決まった。次は足利さんを誘おう。

俺は足利さんの席へ向かった。


「足利さん、ちょっとお願いがあるんだけど」

「前田君からお願いって珍しいね〜、どうしたの?」


俺は足利さんには夏希とのやりとりを話すことにした。


「そういうことがあったんだね〜、私もその日空いてるから大丈夫だよ。京極さんと一緒に行けばいいんだね?」

「ありがとう足利さん、それでお願いします」


俺は席に着くと、隣の席の玲那に話しかけた。


「玲那、おはよう」

「ゆっきーおはよう」

「突然なんだけど玲那って5月3日の祝日空いてるかな?」

「本当に突然だね。あーしはその日空いてるけど、何かあるの?」


ちょうどよかった、このまま玲那も誘ってみよう。


「玲那って2週間前に俺にお礼したいって言ってたよな?」

「あーそうそう、何にしようか悩んじゃってるんだよねー」

「それで俺からの頼みなんだけど、3日に俺の家に来て妹に会ってほしいんだ。時間とかは後で伝えるよ」

「ゆっきーって妹いたんだね。いいよ、会ってあげる。妹ちゃんとも話したいし。」

「ありがとう、玲那がいればきっと盛り上がるよ」

「他にも誰か誘ってるの?」

「京極さんと足利さんもくる予定だよ」

「オッケー、楽しみにしてるね」


これで夏希からの要望に応えることができる。あとは京極さんへの返答を考えなくては...


〜昼休み〜


俺は中国のことを調べるために、校内にある図書館に入った。この前みたいに適当に答えて墓穴を掘らないようにするためだ。


「えーっと、歴史コーナーはここだな。」


俺は中国史の本を取って席に座った。そして中国4000年の歴史の世界へ飛び込んでいった。


(中国の王朝は殷、周、春秋戦国、秦、前漢、新、後漢、三国、晋、五胡十六国、南北朝、隋、唐、五代十国、宋、元、明、清、中華民国、中華人民共和国の順番で入れ替わっていった...)


もうわからん、国名が漢字一文字だらけで混乱してくる。南朝と北朝ってどう違うんだよ...

俺が悩んでいると、同じテーブルに座っていた人から声をかけられた。


「前田先輩、世界史の勉強してるんですか?」


座っていたのは細川さんだった。


「実は、京極さんから魏晋南北朝時代で南朝派か北朝派か聞かれて困ってたんだよ」

「そうですか、中国史は漢民族と異民族の戦いだと思えば整理することができますよ」

「漢民族と異民族?」

「中国には漢民族が建てた王朝と北方に住んでいる異民族(現在のモンゴルに住んでる人々)による征服王朝に分けることができます。」


細川さんは読んでいた本を閉じて俺に説明してくれた。


「まず漢民族は文字通り漢王朝(前漢、後漢)が由来で基本的に名前が漢字三文字の人たちが多いです。そして異民族は色んな種類がありますが、万里の長城より北に住んでる人たちだと思ってください。前田先輩が見てる南北朝時代は北から攻めてきた異民族による北朝と、南へ避難してきた漢民族による南朝に分かれています。最終的に北朝である隋が勝利しますが、漢民族による反発を防ぐために、統治方法や国名は漢民族と合わせるようにしていました。その結果中国王朝は統治する民族が変わっても国名がずっと漢字一文字なのです」


細川さんの説明のおかげでようやく理解が進んだ。


「ありがとう細川さん、これで京極さんの質問に答えることができそうだよ」

「別に大したことはしていないのですが、うまくいくといいですね」

「そうだ、細川さんにもう一つ聞きたいことがあったんだ」

「私にですか?」

「妹の夏希に俺のことを何て話したか知りたいんだ」

「私は前田先輩が普段誰と仲良くしているのかを

知りたいと聞かれたので、私から見て仲の良さそうな人たちを挙げました」


なるほど、細川さんから見て俺は玲那たちと仲良くしていると思われているのか...

俺は細川さんにもう一度礼を言ってから、本を戻して図書室から出た。


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