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6/10

ゲーム自体やったことない人間なので、色々おかしいかと思いますがすみません、サラッとそのへんは流してください。


「大帝国第十八代皇太子アルベルトは、父バルトルト皇帝を斃し、帝位を簒奪することを決意した!」

「殿下……ッ」


護衛二人がヒュッと息を飲み、そのまま片膝をつき剣を掲げた。騎士達が主に永遠の忠誠を誓う時の、特別な仕草だ。そして私も金縛りにあったように、まっすぐ棒立ちになったまま、この目の前の男の言葉に聞き入ってしまった。


「親殺しの悪名など知ったことか!悪戯に国を疲弊させ、民を苦しめる男が帝位にある方が、よほど神の意に反するであろうよ!」


問答無用で人に話を聞かせてしまう。それはカリスマ性と言うべき彼の素質なのかもしれない、と後になって私は思った。


「このままあの男に権力を持たせてはならぬ!今すぐ国にとって返し、目にものを見せてくれるわ!」

「殿下、よくご決心なさいましたッ!」

「我らはこの命尽きるまで、殿下について参ります!」


まるで映画のワンシーンのような感動の名場面が繰り広げられている横で、私はみっともなく口を開閉しながら、目を白黒させていた。


「……え?皇太子?簒奪?皇帝?」


さっきまでの情けなさはどこへやら、雄々しく高らかに言い放たれた宣言に、私は思考が停止した。


「ちょ、ま、え?アナタまさか隣の国の皇太」

「と言うわけだ」

「は???」


ガシッと肩を抱かれ、目に力強い光を浮かべた男が、ニヤリと笑って私に告げた。


「聞いてしまったのだ。もちろんお前もついてきてくれるな?天才聖女殿?」

「うげっ!?」


なんていう面倒な!という私の内心を察したのか、イケメン改めアルベルトは、跡が残るほどの強さで私の肩を掴む。そして目を爛々と輝かせて言い放ったのだ。


「逃げるなよ?散々煽ったからには、お前にも協力してもらうぞ?」

「そんな勝手に決められても困りますけど!?」


いや本当にやめて!?私は十八禁乙女ゲームと、ひとから褒められることが好きなだけの、軟弱な現代人なので!対岸の火事の燃えっぷりを眺める性根の腐った雑魚女なんです!散々ヤンヤと囃し立てましたけど、火中の栗は拾いたくないです!


なんて内心でワーワー反論していたのだが、ギリギリと食い込む指が恐ろしくて言葉にならない。私は光魔法全振り系ヒロイン、攻撃力はゼロに等しいのだ。普通に怖い。


「お前、一生聖女でいる気はないんだろ?じゃあこの機会に抜けておけばいいじゃないか。神殿にも皇太子の名で協力要請して還俗申請してやる」

「あー、くぅ、それはありがたい……っ!」


一定期間ご奉公して十分に貢献したと認められないと、本人からの申し出で神殿から出ることは不可能だ。しかも私は処罰的な意味合いで髪を切られて聖女になってるから、このショートカットヘアが成人女性として適切な長さ、つまりあと三十センチメートルほど伸びるまで、基本的には還俗出来ない。少なくともあと三年は神の庭で奉公する予定だったのだ。今の暮らしもやりがいがあって悪くないが、このツヤツヤなお肌とピチピチのボディを見せつける相手もなく、女盛りを棒に振るのも残念だと思っていた。ついでに私はヒロインチートで処女を失ってもバリバリ聖なる魔法が使えるはずなので、純潔に対する未練もない。早く素敵なかれぴが欲しい。


「……よし!わかったわ、アナタに協力してあげる!」


私が熟考の末に頷くと、アルベルトはパッと表情を明るくして、私の肩を抱き直した。掴まれていたところが普通に痛い。指の跡、絶対ついてる。


「おぉ、生臭聖女!お前にも良心はあったんだな!」

「完全に打算だからそのへんは期待しないで」


またもや聖女に夢見る発言をしている単純イケメンを切って捨て、私は顔を上げると浮かれている面々を見渡した。


「とりあえず治癒魔法かけ損ねた人たちのために一度戻らせてよ。あと、次の聖女が来るまではムリ」

「なっ!そんな暇は」

「あのねぇ!」


腕を組んで堂々と宣言すると、三名は困惑するように互いに顔を見合わせた。アルベルトの宣言でテンションマックスな彼らは、このまま隣国に殴り込みに行く気だったようだ。しかし。


「アンタ達の頭脳(ブレーン)がここで寝てるのよ!?脳筋三人で突っ込んでも瞬殺されるに決まってるでしょ!とりあえずこの魔狼(ワンちゃん)にやられた弱っちぃ騎士が起きるまで待ちなさい!」

「ぐうっ」


痛いところを突かれたと言わんばかりに胸を押さえてアルベルトが呻く。そして気まずそうに足元で寝る男を見下ろした。自分を庇って死にかけた騎士を担いで行くつもりだったのか?それとも治ったと分かったらすっかり忘れていたのか。どちらにせよ足りない。配慮と思慮が。


「第一、今日アンタが順番を無視して横入りしてきたせいで、治癒を待ってる子もいるのよ?アンタの無茶振りのせいで、午後に行くはずだった孤児院の訪問も待たせてるんだから」

「うっ、それはすまなかった」


私には聖女のお役目があり、それをきちんと日々果たしているのである。そこを忘れてもらっては困る。


「確かにアナタ、一人でも国燃やせそうなくらい魔力高そうだけれど、……なぁんか詰めが甘そうだから一緒に行ってあげるわよ。でも今すぐじゃない。とりあえず味方に連絡出したり、手を回しておきなさいよ」

「そ、そうだな」


私が適当に口にした助言に大人しく頷くアルベルトは、傲慢な言動のわりに妙に素直で可愛げがある。こういうところがギャップ萌えに繋がるのかしらね。


「命からがら逃げ出してきたくせに、何勢いで殺されに帰ろうとしてるのよ。馬鹿なの?」

「ぐっ、血気盛んなのは国民性だ!」

「へぇー、アナタの喜怒哀楽が激しいのも国民性?」

「そうだ!」

「直情径行で猪突猛進なのも?」

「……国民性だよ!」

「あははっ、認めるのね」


ギリギリと歯噛みしながら、なんでも国民性で押し切ろうとするアルベルトを半笑いで眺めて、私はニヤリと笑った。


「大人しく聖女様のいうこと聞きなさいな、アルベルトサマ」

「あーーっ、くそ!言い方が腹立つな!馬鹿聖女!」

「あはははっ、低レベルな罵倒が育ちの良さを表してるわぁ〜、感情昂るとおめめウルウルするのね?可愛い〜」

「してないだろ!?どこまでも腹が立つ女だな!?」

「あはははっ、光栄だわ」


そうそう、思い出したわ。

この悔しそうな潤んだ目に歯軋りせんばかりの顔、記憶にあるもの。


アルベルトは、続編の隠しルートの攻略対象だ。


なんてこったい、私としたことが!

髭が生えてるし、全然気づかなかった。

ワイルド系は興味なかったから、すっかり顔を忘れてたわ。


「お前、なんでそんなに偉そうなんだよ!?馬鹿にするのも大概にしろ、この小娘が!」

「アンタとそう年齢変わらないでしょ」


というか、設定通りなら私の一個下でしょう。


褐色肌ワイルド系、しかし年下のドS皇太子。刺さる人には刺さる設定だったのよねぇ〜!


まぁ、前世の私には刺さらなかったんだけど。


「えー、このルートって、どんなイベントあったっけなぁ?忘れちゃったや」


続編の主人公と違って、私は知力じゃなくて聖なる光魔法全振り系ヒロインなんだからね。

神様、そのへんうまくやってほしいわ。


私はせっかく転生したからには、やりたいことしかやりたくないんだから!

かれぴはひらがなかカタカナか……(調べたけど分からなかった)

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