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「アンタこそどこの何様よ」

「…………」


じっと目に力を込めてイケメンを見つめる。しかし不精髭面のワイルドボーイのくせに優柔不断なのか、目の前の男は視線を彷徨わせて口を開こうとはしない。


「あら、ダンマリなの?」

「……お前に名乗る必要はないだろう」

「え?命の恩人にその態度?」


ハンッと鼻で笑ってやれば、イケメンはイラッとしたようで眉間に皺を刻んで私を睨みつけてきた。あらぁ、深い縦皺。お肌にハリがある今は良いけど、早めから気をつけないとその皺取れなくなるわよ。


「礼ならばするっ、人の事情を詮索するな!」

「ふーん、まぁいいわ。で、礼ってどんな?美形な俺様のキス♡とかじゃ誤魔化されないわよ?」


()()とやらを深追いせず、前半の話題について茶化しつつ聞き返せば、男は眉間の皺をさらに深くした。


「くっ、馬鹿にしやがって……金か?宝石か?何が欲しいんだ!?」

「なんで喧嘩腰なのよ。べつに追い剥ぎしようってんじゃないんだから。治療に対する正当な対価として請求してるつもりなんだけど?」

「チッ、……では希望を言え、聖女」

「シンプルに言い方が偉そう」


何度言い直してもどこまでも偉そうな男に、私も次第に苛立ってきた。なんでコイツこんなに態度デカいの。マジで何様よ。


「心底疑問なんだけど、なんでアナタ、そんなに偉そうなの?私がいなかったら地面で寝てるこの人は死んでたよ?ついでにアナタとそこの護衛くん達、なんか頭が足りなさそうだし、このオネンネ騎士が死んでたら全滅の危機だったんじゃない?」


我ながらペラペラと口がよく回る。心の底から馬鹿にしているからだろうね。半笑いで吐き捨てれば、男はあまりの暴言に目を白黒させた後、真っ赤になって唾を飛ばさんばかりに切れた。


「なっ!?お前、良い加減にしろよ!?さすがに無礼にも程があるだろうが!」

「でも当たりでしょ、この人がアンタたちの頭脳(ブレーン)なんでしょ?この人、騎士の格好してるくせに、なんか一番弱そうだし」

「どうやっても全員に対して失礼な女だな!?侮辱を挟まなければ話せないのか!?」

「ごめんなさいね、本音しか言えない病気なの」


真心からの嘲弄を込めて、ニコッと美少女スマイルをお送りする。無邪気な笑顔って煽り効果高めよね。


「まぁ、宝石と金、アナタ達が今回の治療に適正だと思うだけくれれば良いわよ。アナタ達の()()を楽しみにしてるわ」

「どこまでも腹の立つ女だな!」

「で、それで良いとして、いつお支払いしてくれるの?旅中みたいだけど、今払えるの?」


そう問えば、案の定激怒していた男は気まずそうに口籠もってから、苦々しげに言葉を絞り出した。


「い、いや、たしかに今は無理だ、が……後で必ず」

「えー?今は払えないくせに『払う』って大口叩いてたのぉー?やだやだー今すぐ払ってほしいー信用できなぁい」


内心「やっぱりね」と思いつつ、ムカついたので、ぶりっ子かつ駄々っ子モードで両手をフリフリ、足をバタバタした。煽る気しかない。イケメンの眉間のシワがどんどん深くなる。逆鱗撫で撫でするの楽しい。癖になりそう。


「貴様ッ、聖女のくせに金の亡者か!?」

「いや、聖女にどこまで夢見てんのよ。神殿勤めの勤め人なのよ私は。慈善事業じゃないんだから、()()には対価を貰うのが当たり前でしょ」


金払いの悪さを詰られたと思ったイケメンが、案の定激怒したが、逆ギレの仕方が聖女に夢見すぎでキモイ。処女信仰も強めだし、顔が良いくせに女嫌いを拗らせてんのかしら。


「第一、普通なら治せない傷を、必死になって己の魔力を費やして完璧に治してあげたのに、その態度はどうなのよ」


本当は魔力は三パーセントくらいしか消耗していないけれど、私は敢えて恩着せがましく言ってやった。


「それなのに、今は払えないけどいつか払う〜って、ソレ、確実に食い逃げする奴の台詞じゃない」

「なっ、無礼だぞ!」

「いやそっちこそ無礼千万でしょ」


無礼とか失礼とか騒いでいるけれど、根本的に礼儀がなってないのはどちらなのか。


「そもそもアナタ、私にお礼言った?」

「は?」


思いもかけないことを言われたようで、男は目を丸くして、ぽかんと口を開けた。わざとでもなく、本気で気がついていなかったのか。呆れて言葉もない。


「あのね、助けてもらったら『ありがとうございます』でしょうが」

「あっ……」


私の言葉に声を失い、イケメンは恥いるように口に手を当てて、そわそわと私から目を逸らした。


「すまん……助かった、ありがとう」


口籠もりつつも、素直に礼を述べたので、私も溜飲を下げる。私は謝れば許してあげる寛大な女なのだ。


「最初にそう言えば、私もこんなに虐めなかったわよ。魔力消耗しながら助けたのに感謝どころか非難されて、良い気分になるわけないでしょ?つまりアナタの態度が悪すぎたからいけないのよ」

「う、ううっ」


思い当たる節はあったのか、言い返すことも出来ず、イケメンは恥辱に頬を染めているようだ。なかなか眼福だな。


「で?ごめんなさいは?」

「す、すまなかった……」


萎れて小さくなっているイケメンは、己こそ礼儀知らずだったことを深く恥じているらしい。なかなか可愛いところもあるじゃないか。うーん、ワイルド系傲慢イケメンにゴメンナサイさせるのキモチイイ。わりとハマりそう。


「はぁ〜っ、あなた、顔は良いくせに中身がダメダメねぇ」


そんな我ながらキモチワルイことを考えつつ、私はつい調子に乗って言葉を続けてしまった。

このへんでやめておけば良かったのに、と後から少し悔やんだのだが、その時はつい興が乗って、舌が回ってしまったのだ。


「まったくもう。そこで寝てる彼が命懸けで護る価値のある人だったの?アナタ」

「……黙れ女!貴様、剣の錆にしてやろうか!?」

「うぉっと!?」


思いっきり喉元に剣を突きつけられて、余計なことを言う悪癖って死んでも治らないんだなぁと、私はやっと我が身を振り返った。

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