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ヒロインのやらかしはお約束!

「あー、しまった。せっかくぬるま湯暮らししてたのにぃー」


私はしゃがみ込んだまま、頭を抱えて呻く。せっかく日々用心に用心を重ねて手抜きしていたのに、これまでの努力が水の泡よ。やっぱり人助けなんかするもんじゃないわ!


「……あ、でも」


ふと思い当たった事実に、私はハッと顔をあげ、目の前の傲慢イケメンを見上げる。まだ希望はあった。


「さっき()()()()()()()()()しましたもんね!人には言わないでくださいよ!」


そうだ、用心深い私はさっきコイツらに誓約魔法をかけたのだ。ちょっと魔力干渉されてやりにくかったが、さくっと力押しして全員まとめてガッチガチに誓約させた。だから今見たことは()()()()()()()()()()()()()はずだ。なにせヒロインチート持ちな、私の本気だからな。


「そ、そういえば、俺へも問答無用で誓約魔法をかけていたな……俺が動揺していたせいかと思ったが、まさかこの俺よりお前の方が魔力量が多いのか!?」

「うぉ、自信家発言キター」


絶対このイケメン面倒なタイプのお貴族様じゃん。

でもまぁその通り、魔力量だけなら多分この自信家男より私の方が強い。


「否定はしませんけど、私の魔力は聖の方面特化なのであんまり気にしないでください」


ちなみにさっきのも全力ではない、ちょっと加減し損ねた〜と言うくらいだ。

なにせヒロインなので、魔力量はこの世で最強ランクですからね!

正直、自分より魔力が多い人間は、私を神殿送りにしたあの妖怪女しか知らない。多分あの子続編の主人公の脳筋魔法オタクだから、元から凄かった魔力量を日々鍛錬して増やしたんだろう。変態の所業だが。


だが私の台詞に何を思ったのか、イケメンは顔色を変えて口に手を当てる。


「聖の魔法特化の……俺を凌ぐ魔力量の持ち主……ま、まさか!」


なにそのアニメの次回予告みたいな振り台詞。私が世界のヒロインだってバレちゃう感じ?


「お前、もしかしてそんな間抜けな顔して、実は大神殿の大聖女なのか!?」

「え、違う違う!全然違う!」


私は大慌てで首を振った。

神官長と並んで信仰の頂点であり、聖女一同の最高位に立つようなお方と間違われては堪らない。

いや私が大聖女になって、イケメン神官長とプラトニックラブ貫く全年齢エンドももちろんあったけどね!?あんな堅苦しくて面倒なところ行きたくない。大聖女になったら死ぬまで退位できないから永遠に処女だし。


「大聖女とか私には無理ですし!私、本当は聖女自体向いてないんで!」


自信満々に否定したら、イケメンはサッと顔を朱色に染めて、私を指差す。そしてすごい剣幕で非難してきた。


「なっ、まさかお前、聖女の指輪をしておきながら処女(おとめ)じゃないのか!?」

「なっ!?人前でなんてこと聞くのよアンタ!素晴らしく無神経ね!?」


流石の私もびっくりして叫んだ。そんなこと外で聞くか!?


「私は未婚で未開通の生娘(おとめ)ですぅ〜!でも素敵なカレピとイヤン♡アハン♡なことを毎晩だってしたいし、触れない神様に生涯の純潔を捧げる覚悟なんかないから大聖女なんて無理って意味よ!わかった!?」

「〜〜〜〜っ!?わからん!言ってる意味が何一つ分からん!全くわからん分かりたくない!だが異性の前でお前は大声で何を言ってるんた!お前の国のマナー教育はどうなってるんだ!」

「アンタが人が開通済みか未開通かみたいなデリケートなことを、大声で聞いてくるからでしょ!このデリカシー皆無の顔だけイケメンめ!」

「くぅああああ!!ああ言えばこう言うじゃじゃ馬娘め!お前こそ顔だけ見れば可憐な乙女のくせに口を開けば気のふれた痴女じゃないか!黙れ!」


あら、可憐な乙女?

初めて言われた!照れちゃうじゃない!

庶民は普通に「君可愛いね!」くらいしか言わないからなぁ。


「うふふー、私の顔に惚れちゃったの?うーん、私色黒はストライクゾーンからは外れてるのよねぇ、でもまぁ射程範囲内ではあるけど」


ジロジロと褐色肌のイケメンを眺めながら言うと、なぜか真っ赤になって怒鳴られた。


「俺だってお前みたいな頭の軽そうな女は好みじゃないわ!図に乗りやがって!」

「図に乗りやがって!?うわぁ、初めて生で聞いたわその表現!偉そうな奴が言うと流石に様になるわねぇ!」


ヒューヒューと囃し立てると、案の定イケメンはキレてぐわっと私を睨み下ろしてきた。若干魔力漏れまでしている。子供じゃあるまいに、エモーショナルお漏らしである。


「貴様馬鹿にしてるだろ!?」

「当たり前じゃない、確認しなくても理解して?」

「くぁあああああ腹立つ女だな!!」

「あーもー、軽いジョークじゃん?」

「ふざけたことばっかり抜かしよって!お前は何様だ!」


煽り耐性低くない?面倒な男だな。

褐色の逞しい肉体を誇示する割に、器の小さそうなやつだ。絶対良い家で可愛い可愛いと甘やかされてみんなに傅かれて育ったボンボンだわ、こりゃ。


「はぁ、うるさいなぁ」


ギャンギャン喚く大声に耳を塞ぎながら、私は堂々とため息をつく。私はあからさまに侮蔑を含む眼差しで目の前の男を見上げた。


「私は天才聖女様よ、今アンタたちもその恩恵にあずかったところでしょうが」


ぐっと言葉に詰まった素直な男を鼻で笑って、私は首を傾げてにっこりと目を細めた。


「で?アンタこそどこの何様よ」

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