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第1話 リリーベル念写館

新連載はじめました。

連作短編形式のお話です。

今日はもう一話、1時間後に投稿します。

よろしくお願いします。

「いらっしゃいませ。ようこそ、リリーベル念写館へ。お客様のかけがえのないその瞬間を、カタチにして残します」


 念写館って?

 ええ、皆様からよく聞かれますわ。

 初めて耳にされる方も多いですよね。まあ、確かに少々胡散臭いことも否めませんが、これは私リリーベル・ノルトハイムの「祝福」を最大限利用した、れっきとした写真館なんですの。

 私の「祝福」は、「念写」。

 目で見たものや脳内に浮かべたモノを念写して、写真のように描出することが出来るのです。


 ですから、高級魔道具である写真機を使うこと無く、お客様の希望する瞬間を、写真のように残すことが出来ます。

 ほら、写真機で撮る写真は、じっとしてなくてはいけませんし、目をつぶっちゃっても現像してみるまでわかりませんし、撮影者もそこそこ魔力を使いますでしょ? 写真機もそれなりの大きさで、持ち運びも大変ですしね。

 でも、私が念写すれば、そんな煩わしさも一切ありませんの。幸い魔力もたっぷり持っておりますし。


 ここ、ベルンダーク王国の王都ネーデルでは結構有名なんですのよ。

 ご結婚、ご成人、社交界デビュー、家族写真、記念日、お誕生日など、人生の記念や節目に心に残る1枚をいかがでしょう?



 なんて、口上を述べてみたけど、営業から受付、念写、仕上げ、引き渡しまでワンオペでこなしているから、ついつい営業モードになってしまったわ。


 私の名は、リリーベル・ノルトハイム。

 24歳独身=行き遅れの、元・子爵令嬢で、現在は平民。

 この国の成人は18歳。女性の結婚適齢期は、18歳から22歳、男性は、20歳から27歳位までだからね。私は、もう立派な行き遅れだ。

 6年前の18歳までは、子爵令嬢だったしちゃんと婚約者もいたんだけどね。


 そう、6年前。

 両親が視察先で突然事故に巻き込まれ帰らぬ人となり、新規事業のために貸し出していた資金が回収出来なくなりそうだからと、銀行に借金の返済を迫られ……

 まあ、私ではどうしようもなくて。

 蓄えだけでは不足で、屋敷や家財を処分して借金を返済し、4歳下の弟ともよく話し合って、王家に爵位を返上して、平民となった。

 この国は男性優位社会で、爵位を継げるのは成人男性のみ。領地経営なんて、上手くいかなきゃ領民が苦しい思いをしてしまうし、領地や王都にある屋敷や使用人も維持するにはお金がかかる。いくら弟が成人するまでの中継ぎとはいえ、18歳の小娘には、そんな能力は当然、度胸も覚悟もなかった。

 これ以上借金も出来ないし。

 父に兄弟はおらず、母は父と恋愛結婚で、伯爵家から家族に反対されながらも嫁いできたので、つまり頼りになる親戚もいなかったのだ。


 婚約者? まあ、なんていうか政略?というか、子爵家が上手く行っていること前提で、整った婚約で。

 あちら様、伯爵家嫡男ながら資金繰りには大変苦労していたようで、さっさと次に行くために、婚約は速やかに解消されました。

 人間は良い人だったんだけどね。これまで子爵家は割と裕福でしたし、伯爵家への持参金や援助も出来なくなったので、仕方ありません。


 ま、恋愛感情はなかったので。

 その時の私からすれば、それは些細なこと。

 何せ、両親をいっぺんに亡くしたのに悲しむ間もなく、葬儀を執り行い、借金返済、爵位返上、使用人へ紹介状を用意して手当を支払って解雇など、元執事のカールと共に必死で駆けずり回っていたので。

 一通り終えた後で、初めて実感として、両親がもういないことを理解した。


「お嬢様、ご立派でした。きっとリヒト様もクラウディア様もお嬢様のことを誇りに思っていらっしゃいます。どうかこれからローランド様とお力を合わせ、強く生きていかれませ。私はお嬢様とお坊ちゃんの幸せを願っております」


 そう言ってカールが去った後、屋敷からの退去まで後3日というその日。

 私と弟のローランドは、二人っきりでワンワンと声を上げて泣いて、両親の寝室で久しぶりに二人で寝落ちしたのだった。


 翌朝、すっかり腫れてしまった瞼に、二人して顔を見合わせて笑い合った。

 大丈夫。私達はまだちゃんと笑えている。


「ねえ、ローランド。私のかわいいロー。お父様もお母様もきっと私達が、幸せに前向きに生きていくことを望んでいると思うの。だから、たくさん笑って、二人で力を合わせて生きていきましょう!」


「姉上、いいえ姉さん。僕達一人ぼっちじゃない。どこに行こうが何になろうが、僕には姉さんが、姉さんには僕がいる」


「そうね、でも……ちょっとまってて」


 私は自室に行って、新しいスケッチブックを持って両親の寝室に戻る。


「今日はたくさん家族の思い出を話して、残しましょう? 過去を振り返るのは今日でおしまい。そして、明日からはこれを持って、新しい生活を始めるの」


 そう言って、二人で家族の思い出を語り合う。

 懐かしかったり、楽しかったり、ちょっと恥ずかしかったり、鮮明に思い出せる幸せの記憶。

 私はそれを白紙のスケッチブックに念写していく。

 たくさんの思い出がスケッチブックいっぱいに溢れていた。


 人が生まれつき神様から与えられる「祝福」。


 通常は一人に一つだけなのだけど、本来一卵性の双子で生まれる筈だった私と妹それぞれに宿った「祝福」を、母親のお腹の中でその生命を亡くしてしまった妹の分まで引き受けて生まれてきた私。

 そんな訳で私が持つ「祝福」は二つ。「念写」と「絶対記憶」。

「絶対記憶」のことは、家族だけの秘密なんだけどね。

 二つあることもすごく稀なことらしい。


「絶対記憶」では、目にした景色や人物などを鮮明に覚えているから、こうして「念写」と一緒に使うと、まるで写真のように再現出来る。


「姉さん、でもここには姉さんがいない」


 ローランドが寂しそうに言った。

 そっか。私が見たものだから、私はいないんだ。


「そうね。ああ!これは?」


 私の社交界デビュー時に、お母様にネックレスをつけてもらって、二人で鏡を見て笑い合ったときの記憶。

 白いデビュタントのドレスを着て、お母様にパールのネックレスをつけて貰い、


「よく似合っているわ。おめでとう、リリーベル」


 と言ってもらった。


 お母様と私の念写を見たローランドが、真剣な顔で宣言した。


「姉さん、新しい家には鏡をたくさん置こうよ!そして、今度は姉さんと僕が一緒に写ろう。ね?」


 本当に優しい子だわ。

 嬉しくなって思わず弟を抱きしめる。背も伸びて子供っぽさも減ってきて、父親譲りの黒髪と蒼い瞳のちょっと冷たい感じもする美少年だけど、中身はとても優しくて姉想いのかわいい弟だ。

 姉の私は、ローランドと同じ色の髪や瞳だけど、顔立ちが母に似てどちらかと言うと童顔。4歳違いだけど、周りからはあまり変わらないように見えると言われていた。


 新しい家。

 私達は翌日このノルトハイム領を出て、王都に引っ越すことになっていた。

 街なかの比較的治安が良いところに建つ、店舗と一緒になった一軒家で、カールの親戚の伝手で貸して貰うことが出来たのだ。

 一等地ではないため家賃はそこそこお得だし、周りには服飾店や雑貨屋、アクセサリー店など、いくつかお店も並んでいて賑やかな場所らしい。

 ローランドはそれまで王都の学校に通うために寮に入っていたけど、そこからなら寮を出て通学が可能だった。

 彼の学校は、下位貴族や比較的裕福な平民が通う学校だったから、転校しなくていいか尋ねてみたけれど、学費がなんとかなるならそのまま卒業したいと言っていた。


 両親のお陰で、これまでの貯蓄や、領地と王都にあった屋敷や家財などを処分した中から、お葬式を出し、借金を返済し、使用人達への給料や手当を支払った後でも、贅沢しなければ当面の生活を整えるだけの金額は残すことが出来た。ローランドの学費も16歳の卒業までならなんとかなるだろう。

 その後の2年ほどの高等教育の学費のあては無いけれど、それはこれからどうにか作れば良い。ローランドの社交界デビューや、私の結婚も無くなったのだから、大きな出費もないしね。

 本当に爵位返上して良かった。



 そんなわけで、王都ネーデルで心機一転、私達姉弟は暮らし始めた。

 私は自分の「祝福」を使って、念写館を開業したのだ。


 幸い、貴族時代の伝手やそこからの紹介でお客様にも恵まれて、順調に売上も伸ばして、ローランドが王都の中等教育の学校を卒業した後、無事に士官学校にもやれた。

 今や、可愛かったローランドも、20歳!

 すっかり成長して、士官学校卒業後に軍属となり、今は、王都の治安部隊に所属している。

 もうね、姉バカ承知で言わせてもらえば、背も高い細マッチョで、怜悧な美貌(士官学校を首席で卒業しましたから!)、家族以外にはちょっと無愛想なところもあるけれど、女性には優しくと言い続けてきただけあって、なかなか紳士だと思う。一人称は僕から、いつの間にか俺になってしまって、ちょっと寂しい気もするけど。

 そんな立派な弟に、早くかわいいお嫁さんが来てくれるといいなあ、なんて思っている今日このごろ。




「あの、ごめんくださいませ」


 カランとドアベルが鳴って、女性のお客様が侍女を連れて入店してきた。


「いらっしゃいませ。リリーベル念写館へようこそ」


 上品なデイドレスを着た、若奥様。見覚えのある面影に、私は思わず立ち上がった。


「カレン様?」


 中・高等教育の学生時代の同級生だった子爵家のご令嬢で、確か男爵家のコリーナ様と仲が良かった。カレン様は3年ほど前にご結婚されて、今はご自身の子爵家に婿養子で入ったご主人と仲睦まじく暮らしているという噂は聞いていた。

 私はにこやかに笑って膝を折る。


「お久しぶりです、マイヤー子爵夫人」


「リリーベル様、やめて。昔のようにカレンと呼んでちょうだい」


 カレン様は慌てたように言って、私の前にやってくると、手を取って私を覗き込んだ。


「ね? 今日は、お願いがあって来たの。話を聞いてくれない?」


 侍女の方には入口近くにある椅子に掛けてもらい、小さなテーブルにお茶を用意して、カレン様を奥の応接間に案内する。

 ソファーに腰を下ろしたカレン様の前に、お茶とお菓子を置いた。


「お口汚しかもしれませんがどうぞ。カレン様、6年ぶりになりますか? お元気そうで良かったです」


「貴女こそ。あのとき、突然のご不幸に何も出来なくてごめんなさい……今更ですけど。お元気そうで良かった」


 そう言って申し訳なさそうに微笑んだカレン様に、私は首を横に振る。成人したての小娘だった私には、当時自分と家族のことしか見えてなかった。お気遣いいただいても、きっと何も返せなかったと思う。だから、カレン様が気にすることは一つもないのだ。


「もう、昔のことですわ。どうかお気になさらず。今日は、念写のご依頼でしょうか?」


 話を変えた私に、カレン様も切り替えて頷いた。


「ええ。覚えていらっしゃるかしら? コリーナのことなのですけれど……」


 カレン様はそこで言葉を切って、窓の外に視線をやる。そして、昔を思い出すように語り始めた。



 ◇


 コリーナは、学園に入学して初めて出来たお友達でした。

 12歳で入学して18歳で卒業するまで、ずっと仲良しで、喧嘩なんかしたこともなかったわ。

 でも、私達は何も知らない子供で。

 そう、そのままずっと、親友でいられると思っていたの。


 7年ほど前、ホフマン男爵領で起こった冷害での不作と投資の失敗で、男爵家が困窮したのをご存知でしたかしら?

 私、辛そうなコリーナを見ていられなくて、お父様に、なんとか助けてあげられないかと、お願いしましたの。


 お父様は私に一つ条件をつけて、男爵家に融資してくれることになりました。

 子爵家は子供が私一人なので将来は婿養子を迎え、子爵家を維持していかなければなりません。ですから私の勉強のために、返済分の収益が揚げられるよう、男爵家と合同で事業展開をしてみろと、お父様の部下を一人付けてくれたのです。

 男爵家もそれを受け入れてくれて、私、コリーナと一緒にお仕事が出来ると思っていました。

 でも、男爵家側から送られてきたのは、エルンスト様という男爵家家令の長男だったのです。コリーナからは、「私にはとても事業なんて無理だから、他のことで頑張るわ」と。

 私達は、男爵家の返済が滞り無く済むよう、それはそれは寝る間も惜しんで努力して、事業を成功させました。お陰様で3年ほどで男爵家に融資した資金も回収でき、お父様にも褒めていただけて、エルンスト様とは心通わせることが出来、婚約することになりました。


 時期を同じくして、コリーナもベルガー男爵家の当主と婚約が決まり、結婚式の前に二人で会ったんです。


「いろいろ本当にありがとう、カレン。そして、婚約おめでとう。うちもなんとか立て直して、お兄様も両親も本当に感謝しているわ」


「よかったわ。コリーナもおめでとう。ベルガー男爵様はどんな方?」


「歳は離れていて、再婚だけど、優しい方よ」


 穏やかに婚約者を語るコリーナに、私はほっとしたのです。でも、


「エルンストはね、私の初恋の方だったの。だから、どうか彼と幸せにね」


 そう言って目を伏せたコリーナに、私はどうしようもなく苛立ってしまったの。


 どうして? どうして今、そんなことを言うの?

 エルンスト様は確かに今、私を愛していると言ってくれるけど、あの時彼が私と事業をやることになったのは、コリーナの為だったのに。今になってそんなふうにエルンスト様のことを言うなんて!


「だったら、何故! あの時、貴女が私のところへ来なかったの? 貴女が来ていれば、今頃婚約していたのは、貴女とエルンスト様だったんじゃないの? 貴女はあの時、一体何をしていたの?」


 コリーナがハッとして顔を上げ、傷ついたように私を見たけど、出てしまった言葉はもう取り消しなんて出来ませんでした。


 私はそのまま彼女に何も言わせず、コリーナをその場に残して家に帰り、情けないことにエルンスト様に大泣きして八つ当たりまでして。


 私本当は、コリーナあなたと一緒に頑張って事業を成功させたかったの!

 エルンスト様は素敵な方で、大好きになってしまったけど、出会わなければ好きになったりしなかった!

 今更そんなことを言うなんて、ひどい!

 多分、ぐちゃぐちゃになりながら、そんなことを言ったのだと思います。


「カレン。僕は君と一緒に3年間努力して事業を成功させていく過程で、君を好きになったんだよ。だから、この出会いに感謝している。僕があの時君と事業をすることになったのは、男爵家の跡継ぎであった親友とその妹のコリーナの為だったけど、愛とか恋とかではなかったよ。僕が好きなのは君だけだからね? それに、コリーナは僕達が事業に集中できるように、冷害被害の大きかった男爵家の領民の生活を整えるべく、親友と領地を走り回っていた。今回の彼女の婚約も、後妻になるからと、持参金も不要で優しいコリーナを迎えたいというベルガー男爵の意向で、彼女は男爵をちゃんと想っているよ」


 そう彼に優しく諭されて、私は自分の愚かさを知りました。私はコリーナの努力を知ろうとせず、エルンスト様の幼馴染であったコリーナに嫉妬して、自分やエルンスト様だけが頑張ったなんて、烏滸がましくも思っていたんです。あの初恋という言葉も、彼女にとってはきっともう終わっていたことで。

 勝手な私の思い込みで、一方的にコリーナを傷つけてしまったの。

 自分が恥ずかしくて、コリーナに合わせる顔がなくて……


 今でも、最後に会った彼女の顔が忘れられなくて、あんなに傷つけてしまって、もう、私のことをきっと許してくれないって。

 そう思うと謝りに行く勇気もなくて。


 でもね、私子供が出来たんです。

 まだ、初期だけど。お腹に命が宿って、すごく愛おしくて。夫もとても喜んでくれて、すごく幸せなのだけど、どうしてもコリーナに会いたくなって。

 コリーナも、先月男の子を産んだんですって。ベルガー男爵は前の奥様との間に女の子お一人だけだったから、とてもお喜びになって、コリーナも幸せにやっているって、夫がコリーナのお兄様から聞いてきたの。


 私、嬉しかったんです。コリーナが幸せで。本当に嬉しかった。

 だから、夫にお願いしましたの。

 一緒にコリーナに会いに行って下さいって。


「喜んで、カレン。コリーナに会いに行こう。君たちは一番の親友同士なのだから、きっと彼女も喜んでくれるよ」


 夫はきっと、私がそう言い出すのをずっと待っていてくれたんだと思います。

 ですから……リリーベル様、お願いがありますの。


 私とコリーナの学園時代のお写真を2枚、念写していただけますか?


 ◇



 カレン様の話を聞き終えた私は、物置部屋に行き、綺麗な光沢紙が貼られた真っ白のキャンパスを2枚持って応接間に戻ってきた。


 思い出すのは、もう8年以上前の学園時代。

 少女時代のカレン様とコリーナ様。


 ただただ純粋にお互いを想い合い、無意識の笑顔を交わす二人の様子を、私は何度見たことだろう。

 その中でも印象に残っているのは……


 図書室で一冊の本を挟んでページを捲りながら、楽しそうに微笑み合うお二人。


 頭に浮かんだその瞬間を、魔力を込めて2枚のキャンパスに写し取っていく。薄っすらと光を放って、描かれたその写真。


「ああ!ありがとうございます!リリーベル様」


 キャンパスを手に取って大事そうに胸に抱き、泣き崩れたカレン様が落ち着くのを待って、そっと声をかける。


「コリーナ様にもよろしくお伝え下さいませ。私が覚えているお二人は、いつもこんな顔で笑い合っていましたよ?」


 カレン様はそれから何度も頭を下げて、子爵家に帰って行った。

 料金の倍額を置いて。




「姉さん、ただいま。うわあ、今日はずいぶん豪華だねえ!」


 夜、帰宅したローランドが、テーブルに並べた夕食を見て歓声を上げる。彼の大好きなステーキは特大だ。


「おかえりなさい、ローランド。お疲れ様。今日はね、とってもいい仕事したの!皆がハッピーになれて、たくさん儲かっちゃった!」


「へえ!それは良かった。でも、姉さんがいい仕事をするのは、いつものことだけどね。今日もありがとう」


 そうやって、ローランドはいつも私をねぎらってくれるけど、今や軍で働く彼は、結構なお給料をそのまま全部家に入れてくれる。自分で管理して好きに使えばいいのにと言うのだけれど、結局一部を小遣いにして受け取るだけで、後は家計になんて言うから、結局彼の給料はそのまま貯蓄に回している。

 だって、私これでも結構稼いでいるのよ?


 ローランドはワイングラスを持ち上げて、私を見る。


「でもさ、こうして二人で今日も美味しい夕食が食べれて、俺も幸せ」


「そうね」


 私もグラスを持ち上げて、彼のそれに合わせる。

 思わず浮かんだ笑みに、ローランドも幸せそうに笑って、壁に掛けてある鏡を指差す。


「ほら、鏡を見てよ。姉さん」


 食卓が映るようにと壁に掛けられた鏡には、今日も仲良く夕食を取る私達が、幸せそうに笑っていた。


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