FOURTYTH:打算的デート(?)
「じゃあまた明日〜最後まで見てくれてありがとね〜」
配信を終えたらしい。
「さて、そろそろ落ちますね。」
「まだ11時ですよ?配信にしては終わるの早くない?」
「それは…僕今日はゲーム3時からやってましたし」
「8時間も!?」
「いえ。15:00じゃなくて03:00」
「20時間!?」
「最近だと3〜7はFPS配信、7〜19は次の大会の練習、19〜20が休憩、20〜23がAWOって感じですかね。配信休みのときはメンバーで合同で動画撮ったり、普通に休暇とったりですね。
まあ休暇中もゲームしてるか動画見るくらいしか無いんですけど」
そういえば、(24話の最後でも言ったけど)リアルの恋くんは病室で寝たきりなんだっけ。
あんまり触れないでおこう。
「そういえば、出演料払わなきゃですね。何が良いです?」
待ってましたそのセリフ。
さて、計画実行。
「じゃあ、また一緒に来てほしいところがあるんだよね」
「え?また鬼畜戦闘ですか?遊狼王とかもう絶対御免ですよ?」
「いや次は戦闘じゃないよ。あと、これから見るものは誰にも内緒ね」
「……え?」
◆◇◆◇
配信切り忘れはしてない…よな?
よし、OK。
信長さんは…まだ配信中か。
あ、野良猫くんとやってる。
さっきコメント欄に信長さんいたけど…ああ、晩飯休憩で来たのか。
位置情報を非公開っと。
「…はい。準備できました」
「おっけー。じゃあもうちょっと近くに来て」
言われるままに近くに寄る。
なんか良い匂いするんだけど。
さっきはあんなだったけど…今度こそデーt…いやいやまさか。
「じゃあ行くよ」
柊さんがインベントリから、何処かで見たことある気がする一枚の赤いチケットを取り出す。
【柊 がアイテム《地獄へ》を使用】
【恋する少年 の資格を確認:オールクリア】
【非正規通行による制限として、強制称号《地獄への招客》取得】
【地獄先行招待枠 を一つ使用 残り:壱】
【恋する少年 は非正規通行のため、称号《TO THE UNDER WORLD》は獲得不可】
何?これ。
【転移を開始】
足元が「ヒュッ」と、落ちる感覚。
思わず目を瞑る。
……何も起こらない。
いや、なんか暑い。
周りから街の中のような人の賑わいの声。
パッシブスキル《狼王耳》のおかげか、以前よりよく聞こえる。
「なんで目ぇ瞑ってるの?」
耳元で囁かれ、ビクッと目を開ける。
…
……
………
…………なんですかここ。
「なんですかここ」
「地獄だよ」
なるほど。どうやら僕は死んだらしい。
そっかぁ。命に別状は無いハズだったと思うけどなあ。
事故から1年たったのに今更死ぬとは、不思議なこともあるもんだ。
…冗談はこのくらいにして。
「なんですかここ」
「だから地獄だって」
「説明になってないですよ。なんかマップが二倍にふえてるんですけど!」
「多分ケルベロス倒したら来れるようになるとこだと思う。私は別の方法で来たけど」
「どんな!?」
「正直どのイベントを踏めば来れるのかわかんないんだよね…
狼王巡りか、自然のなかまか、森神之獣か…多分森神だと思うけど」
「ほぼ初耳なんですけど」
「どれであれまず『なかま』シリーズ三つ集めなきゃだから狙ってやるなら相当むずかしいと思うよ」
「とりあえず、なんで僕をここに?」
「いやぁ、さっき手伝ってくれたお礼的な?」
「え?いやお礼をするのは僕の方だと…」
「いいから!おもしろいものとかモンスターとかいるから、ちょっと一緒に巡ろ!」
そう言って彼女は僕の手を引く。
これって…もしやとは思ってたけど…確実に…もしかしなくても
デーt…
………やっぱり今日、僕死ぬのかな…?
―――――――――
その後、他のプレイヤーが居ない秘密のエリアで食事をし、おみやげ交換し、軽く探検し、武器防具を見て回った。
彼女へのおみやげはクソ高かったけど、今日全体でみれば圧倒的に黒字である。
あとあの喜んでた顔…かわい…いやなんでもない。
―――――――――
「それじゃあ、また明日ね」
「はい。また明日」
夢中で3時間もやってしまった。
彼女も一緒に落ちるようなので、同じタイミングでログアウトを押す。
ああ、今日は楽しかった。
視界が、暗転する。
◆◇◆◇
「ふぅ」
23時間ぶりに、目を開ける。
まっくらだ。
ちらりと自分の身体の左側を見る。
いつもは見るだけで最悪な気分になる「姿」を見ても。今日は不思議と落ち着いていた。
ベッド横のボタンを押し、車椅子に乗る。
トイレに行って、体を拭き、牛乳を飲み、歯を磨く。
今日は薬は飲まずに、眠る。
僕は久しぶりに、良い夢をみた気がした。
◆◇◆◇
遊狼王とのデスペナでさらにお金が減った。
今度は大半金庫に預けたおかげであまり減っていないが、恐ろしいことにあの金庫、使用量として一割取られる。
このままでは恋くんからお金を受け取っても足りない。
しかし、だからといって報酬を増やしてほしいというのは図々しすぎる。
私はこの優秀な頭脳で、一つの計画を思いついた。
まず、恋くんを地獄に連れてくる。
↓
そこで地獄観光をしつつ、さりげなく装飾品店へ連れてくる。
↓
ここで、さりげなく例の首飾りがほしいとほのめかす。
結果、GET!
ふっふっふ。我ながら最低な計画だ。
「百万Gください」より「首飾り買ってください」のほうが要求として通りやすいに決まっている。
実際は後者のほうが圧倒的に高いにも関わらずだ。
ただ、「おみやげ交換」という名目で受け取ったため、タダではない。こちらからあげたのは70万ほどのもの。もちろんこちらの方が安いが…まあそこそこ良いものだし、喜んでたから…罪悪感は感じる必要はないだろう。
ないで良いよね?
まあこの”地獄”の情報と交換にはなるが。
でもまあここを知られても困ることはあまりないからいいけど。
秘密にしているのは、ただただみんなの驚いた反応がみたいというだけだし。
その後はカモフラも兼ねて地獄を観光。
恋くんとのプレイはけっこう楽しく、モンスター討伐もさくさく進んで、気づけば3時間も経っていた。
恋くんが落ちるようなので、私も落ちる。
明日は朝から大学か…でもこの首飾りを試したいなぁ。
ちらりと明日の予定のメモを見る。
余裕はある。特に明日は影響少ないかな。
よし。サボろ。
補足:
恋くんが感じた良い匂い → 髪飾りの効果。
恋くんの制限 → 地獄でのクエスト等受注不可。
柊 → デートの自覚無し。椿と遊びに行く感覚で観光していた。




